竹村英明の「あきらめない!」

人生たくさんの失敗をしてきた私ですが、そこから得た教訓は「あせらず、あわてず、あきらめず」でした。

「脱原発の大合流」と「未来の党」そして参議院選挙に期すこと

2012年12月29日 | 自然エネルギー
12月16日に投票が行われた総選挙は自民党の圧勝という結果で終わった。そうならぬように脱原発勢力が大連合する「脱原発の大合流」を訴えたものとして、訴えがほとんど機能しなかったことに、きちんと向きあわなければならない。私たちの訴えに呼応するかのようにできた「日本未来の党(以下「未来」と略す。)」は、「生活の党」と「みどりの風」と「未来」に分かれた。事実上の分裂とも報道されている。大変残念なことではあるが、「オリーブの木」という考え方からすれば当然ともいえる。選挙のための合流なのだから、選挙が終われば分かれる方が、意思決定に手間取ることはない。そういうドライな考えは、日本の有権者には奇異に映るのだろうが、小選挙区制という民意を反映しない選挙制度を押し付けられている国にあっては、今後も「大合流」がカギとなることは間違いない。

「未来」の登場はあまりに遅すぎた

「未来」が立ちあがったのは、衆議院の総選挙公示の1週間前。あまりに遅いタイミングの上に、中央道の笹子トンネル天井崩落事故や北朝鮮の「人工衛星」発射などのニュースにまぎれて、「未来」の名前は有権者には行き届かなかったように思われる。
しかも「未来」は「脱原発の大合流」としては不十分だった。実質は「国民の生活が第一」と「みどりの風」、「減税日本(山田、亀井両議員と河村名古屋市長のチーム)」の合流で、その異質なものの合体を嘉田滋賀県知事のカリスマパワーで実現と印象づけたかったのだろう。しかし、「共産党」や「みんなの党」は難しいとしても、「社民党」や「新党日本」、「新党大地」などすら結集させることができなかった。
小選挙区比例並立という選挙制度の下で議席を確保するには、比例区での得票がカギだが比例選挙の戦略はまるでたっておらず、基本的には少ない手勢で小選挙区での局地戦を戦う力しかなかった。財界から100億円の寄付を受けたと伝えられる自民党や、離党した数十人の議員の政党助成金を全部自分のものにした民主党とは、なによりも資金力に圧倒的な差があったし、早くから国政進出をアピールしてきた「維新の党」とは知名度での開きがあった。
肝心の脱原発では、「みんなの党」も「民主党」も「原発ゼロ」を掲げていたし、「社民党」「共産党」などに加え「公明党」も・・と、唯一無二の突破力にはなっていなかった。脱原発だけなら「他党も訴えているよ」という受け止め方しかされなかった可能性もある。

脱原発市民の中に分裂があった

しかも「未来」には、肝心の脱原発の有権者側から全面の支持が得られなかった。10年で原発全面停止を実現するという「未来」のシナリオは、いまでも十分に評価に値するものだと思うが、「即時原発ゼロ」を主張する脱原発有権者からは生温いとされた。それは「再稼働」を認める主張ではなかったが、公開討論での嘉田代表の答え方のマズさもあり、まずは再稼働を認めるものと印象づけられてしまったきらいもある。原発全面停止は「法的に止める」という、未来永劫にわたる手続を決めることが必要で、これは今日明日にはできないことは明らかだ。再稼動は原子力規制委員会が行っている活断層の調査や、新基準などに則って「運転は認められない」という判断を下すかどうかという問題で、原子力規制委員会がかつての原子力安全・保安院のように「おざなり」判断をするのならそれを批判し正すということである。脱原発政権ができていれば、それは十分にできることだったのではないだろうか。
この選挙後に、メールやツイッター、フェイスブックなどで数多くの人とやり取りをしてきたが、私が「脱原発政権」をつくる必要があるといえば、「要するに権力が欲しいんだ」と返してくるような脱原発有権者もいた。私は、この人が本当に「脱原発」をめざしているのか疑う。単なるファッションなのではないか。100万人がデモをしようと、1000万人が署名をしようと、「法的に止める」手立てを作らなければ、原発はなくならないと私は思う。
ファッションとして「脱原発」を楽しむことは重要である。歯を食いしばって、寝食を忘れて頑張るのは一握りの人でも良い。「楽しむ」や「素敵」や「ストレス発散」がなければ、広く多くの人が参加できない。でも同時にそれはファッションのレベルであって、原発を止めるにはそれなりの手続が必要なのだということも理解してほしい。一緒に考えてほしいし、それを担わなくても良いから、せめて協力をしてほしい。投票行動は小一時間もあればできることで、最も簡単な「協力方法」だと思うのだが。
しかし確かに、投票を受ける政党側がまとまってくれなければ有権者も動けない(動いても無駄が多い)ということがある。だから、「大合流」の必要性なのだが。

自民党が勝ったわけではない

今回の自民党の大勝利について、多くのマスコミや専門家から「決して自民党は勝っていない」との分析が示されている。全国の比例得票数を集計したところ、自民党は1662万票で、05年の2588万票を大きく下回り、09年の1881万票にも及ばなかった。得票率も27.6%で09年の26.7%とほぼ変わらなかった。投票率が09年より約10ポイント低かったことも影響しているが、全国的に自民党支持が広がったとは言い難い。
小選挙区では自民党の得票数は2564万票で、小選挙区投票総数の43%を占めるが、全有権者数に対しては24.67%にすぎない。それなのに衆議院小選挙区の300議席中237議席(79%)を獲得した。これは明らかに小選挙区制度という選挙制度の弊害であろう。
この制度はかつて、小沢一郎氏や菅直人氏らが、あえてわざわざ「政権交代がしやすいように」とつくった制度なのだ。しかし現実に起こっていることは、国民の意志とは全く違う政治が出現するということである。小沢氏も菅氏も誤りを認め、この仕組みを変えるための努力をしてほしいものだ。
もし比例選挙だけで議席配分が決まっていたらという分析が、あるウェブページに載っていた。それによれば、自民党は294議席から132議席に激減。民主党は77議席と微増だが、維新の党が民主党を上回る98議席に。みんなの党は41議席に倍増、共産党にいたっては8議席から29議席に3倍増以上となる。「未来」も共産党と同等の27議席で、2議席しかとれなかった社民党も12議席に。
これが日本の有権者の「正しい意思表示」ではないか。民主、維新、みんな、未来で243となり、とうてい自民党政権にはならなかった。

出展はWhat_a_dudeの日記 
http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20121217/p1

自民党の経済政策で日本は再び混乱と低迷に
自民党は有権者に支持されたわけではない。しかし間違いなく「勝った」のである。官僚にとって、国民の声とは「選挙結果のみ」であるというのは、環境省の地球環境審議官までつとめた小島俊郎さんの口癖。だから選挙結果に従えという意味ではなく、選挙結果を出さないと官僚を動かすことも政治を変えることもできないよという意味。
どんなに不当な選挙制度でも、どんな不法選挙をやっても、とにかく多数をとればその政党の勝ち。その政党が掲げる方針が「政治の方針」になる。そのことをもっともよく知っているのが自民党なのだろう。
私は選挙を「地上戦=ドブイタ」と「空中戦=ムードづくり」に分けて考えてみたい。「ドブイタ」はもともと自民党のもっとも得意とするところだ。地域後援会をつくり、地方財界や農業団体、PTAまでもまとめ束ねて行く。しかし今回、自民党がもっとも成功したのは「ムードづくり」だったのではないだろうか。それが「経済政策」というキーワードだ。その実体は、日本を財政悪化に追い込んだ公共投資ばらまき政策にほかならない。
それは一時的に景気を押し上げるかもしれないが、日本経済低迷の根本的な解決方法にはならない。すでに国際競争力を失った自動車や鉄鋼、電気という従来型産業や、民主党政権時代に干上がった土木建築業界にむけた対策だからだ。新たな産業振興や雇用の創出は期待できない。
一時的な景気浮揚は単なる増税の理由づけで、財政赤字は確実に増大し、負債は未来に「つけ」おくりされ、かつて小泉構造改革が押し広げた日本国内の格差はさらに拡大される。
ところが、貧しい人、困窮した人ほど、「経済の自民党」というスローガンに惑わされて自民党に投票していると言うのである。物価を上げ、増税し、そしてセーフティネットの予算は切って行くという「政策」が彼らを助けるとはとうてい思えないのだが。

脱原発と経済再生は対立しない

この「経済政策=日本再生」という「ムードづくり」は、脱原発政策との対比で打ち出されていた。民意の軸は「脱原発=原発ゼロ政策」にあり、と敵も踏んでいたのである。それを崩すには、「原発ゼロ=景気低迷」というフレームアップを行うこと。それをまず経済界に刷り込み、マスコミに刷り込み、各界のオピニオンリーダーに刷り込んで行ったのである。
今年(2012年)はじめにはまだ、マスコミでグリーンニューディール=自然エネルギー等による経済成長のモデルが紹介されていた。自然エネルギーへの投資は、国内の関連産業の内需を呼び起こし、確実に経済を再生させる力がある。自然エネルギー普及のためには送電系統など国内インフラの整備も必要で、それへの投資も国内需要を喚起する。投資の規模は政府が目標をどう設定するかによるが、ざっと100兆円から120兆円、それによる雇用効果は100万人以上である。
しかしグリーンニューディール政策への注目は2010年から2011年にかけてのほうが大きく、2011年には少なくなったように感じる。皮肉なことだが、東日本大震災と福島原発事故の報道が大半を占めるようになり、経済政策そのものの報道回数が減り、グリーンニューディールへの関心も薄れたのではないだろうか。
そして2020年までに温室効果ガス25%削減をぶち上げた鳩山総理のあとを受けた菅内閣の退陣、消費増税をわざわざ中心政策に据えた野田内閣の誕生で、政策議論の中心は財政再建へと移って行く。原発問題はエネルギー基本計画の見直しというテーマの中で議論されるが、巧妙な経産省官僚によって、原発ゼロ=経済の停滞、原発維持=景気回復という論理に誘導されて行く。
今年(2012年)夏のエネルギー基本計画へのパブリックコメント募集には、この経産省論理に多くの国民が反対意見を出し、政府の意図に反して意見提出者は9万名、そのうちの9割近くが「原発ゼロ」を選択した。しかし原発は是か否かの意見としては受け止められたが、それが経済成長の戦略の議論としては世の中に発信されなかった。
そして秋、野田おろしを仕掛けた多くのマスコミ(裏には自民党=経済界)の論理は「脱原発か経済成長か」にすり替わっていた。

官邸前抗議の高揚を総選挙につなげなかった

つまり脱原発派は「空中戦=ムードづくり」において負けたのだと思う。脱原発1000万人署名をはじめとするアクションは、2011年秋には16万人のデモを実現し、署名数は800万人を数える。毎週金曜日夜の官邸前抗議は大飯原発の再稼働反対のアクションとして盛り上がり、6月には空前の20万人行動になる。これらも「空中戦=ムードづくり」の一つと言え、総選挙に結びつけるなら脱原発派は圧倒的に勝っていた。
しかし、その活動と総選挙を結びつけることができなかった。唯一それを果敢にめざしたのが「脱原発基本法制定全国ネットワーク」だろう。法制定のためには提出議員を募る必要があり、そのために国会ロビー活動をし100人以上の賛同議員を確保した。それは民主党、国民の生活が第一、みんなの党、社民党などなどにおよび、脱原発議員の一大結集軸となっていた。
ただ、このムードに水を差したのが共産党である。脱原発基本法案は原発ゼロ達成時期を2020年から2025年に置いている。法制定の実現や諸制度の整備まで時間を要するからだ。ところが共産党は、それは「再稼働容認する法律だ」と批判にまわったのである。「わが党だけは、あくまで即時原発ゼロだ!」と。それにより、多くの市民の中で分裂と混乱が生じた。まさにムードが壊されたわけで、この共産党の責任は大きい。同様の批判は「未来」にも行われ、結局惨敗という結果を招く。
もちろん共産党だけが戦犯というわけではない。共産党の論理は、結構多くの「脱原発派市民」の中にあり、共産党はそれを代表しただけともいえる。むしろ、この「論理の混乱」に解決策を提示し、一つの結集軸に持って行くという、もう一つの空中戦が必要だった。じつはそれが「脱原発の大合流」という運動であったと思う。しかし、想定よりも解散が早すぎた。少なくともあと1ヶ月以上はあるという想定で準備をしていたために、候補者アンケートである「脱原発つうしんぼ」も不完全なものになったし、情報発信も不十分だった。

お手本としたい神奈川勝手連

そして「地上戦=ドブイタ」では、そもそも脱原発派には分が悪い。そもそも選挙の経験などなく「何をやったら良いのかわからない」人たちばかり。今回も多くの人たちが、いろいろな候補者の応援にかけつけたはずだが、どこでも力およばずして・・という結果になった。唯一、当選を勝ち取ったのは、あべとも子(未来)を比例復活当選に持ちこんだ神奈川勝手連だ。
あべとも子は神奈川12区。社民党を離党し今回「未来」で挑戦した。小選挙区では当選は難しい。比例復活をめざすには、小選挙区での惜敗率を高めるべく小選挙区で戦うと同時に、南関東ブロックという比例区で「未来」に1人以上の枠を確保しなければならない。しかし「未来」にはまるで比例区戦術がなかった。おそらく人員も資金もなかったのだと思う。
神奈川勝手連メンバーは当初は選挙事務所に行って、公選チラシへの証紙貼り、公選はがきの宛名書き、そして電話などを手伝っていたが、それだけでは比例票が取れないと判断、神奈川県内のメインの駅で政党ビラ(マニュフェスト)を配りはじめた。勝手にやっては選挙違反になるので、政党の票旗を持ち、勝手連の範囲を超えた選挙チームになった。
候補者がいれば拡声器で音が出せるのだそうだが、候補者はみんな小選挙区に張り付き。勝手連メンバーは、すべて肉声で「脱原発の未来の党」と訴えながら政党ビラを配った。そして南関東ブロックで「未来」は47万票を獲得。1人どころか、あと数万票で2人という数字にせまった。これはいわば市民板「ドブイタ」で、今後の脱原発派市民の「選挙戦略」としてお手本になるだろう。
もう一つ、この総選挙で特筆したいのは山本太郎の示した結集力だ。立候補を発表したのは公示の2日前。それでも8万票を集め、石原伸晃に肉薄した。多くの若者ボランティアを集め、これぞ「脱原発選挙」という形を示した。
「未来」で出ていれば、惜敗率は青木愛の49.5%を上回り東京ブロックで当選していたが、「いまのところ一人」などと気取った無所属立候補だった。「未来」で出馬していれば、それ自体が「空中戦=ムードづくり」となり、全国の未来票を押し上げていただろう。東京ブロックでも南関東ブロックでも、あと一人の議席獲得も実現で来たかもしれない。
山本太郎の一人立候補の理由は定かにはわからないが、「未来」での立候補もギリギリまで模索されていたことを知っているだけに残念である。それが上に述べたような「あくまで即時原発ゼロ!」という論理の混乱にあったとすれば、さらに輪をかけて残念としか言いようがない。

もう参議院選挙は、はじまっている

さて、ちょっと考えを整理しようとして長い「論文」を書いてしまった。いまでも私の提案した「脱原発の大合流」の方針は間違っているとは思えない。むしろ、31の1人区がある参議院選挙でも「大合流」をしなければ脱原発派候補者が当選することは難しい。
参議院は選挙区定数146人、比例区定数96人で合計242人。現在の議席数は民主党87、自民党83、公明党19、みんな11、未来8、共産6、社民4、国民新党3、維新3、新党改革2、新党大地1、無所属4、欠員6。来年夏には、この半分が改選になる。選挙区で73人、比例区で48人。
選挙区で生活の党が3、みどりの風が4、この二つが「未来」だ。比例では生活が3、みどりが1。比例では他に社民2、共産3。脱原発勢力は合計16だ。もちろん民主党の中にも数人の脱原発派がいるし、「みんな」の川田龍平もいる。それでもせいぜい20人前後。改選議席121人に対して2割にもならないが、今回の総選挙のような戦い方だと、それすら維持できないだろう。
すでに参議院選挙ははじまっているともいえる。脱原発派市民の皆さんには、まず選挙区で脱原発派候補者を応援する勝手連を各地で立ち上げてほしい。そして2月くらいまでには候補者を決めてほしい。生活やみどりの候補者がいる選挙区もあれば、自民党の牙城みたいなところもあるだろう。どちらにしても、候補者を1人に絞る「大合流」にチャレンジしてほしい。
そして資金づくり。「脱原発政治連盟」みたいなものを真剣に模索すべきときかもしれない。今回の総選挙の経験は、苦かったけれども、確実に次に活かすことができる。落胆せず、あきらめず、続けていこう!


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