竹村英明の「あきらめない!」

人生たくさんの失敗をしてきた私ですが、そこから得た教訓は「あせらず、あわてず、あきらめず」でした。

反貧困・市場価格高騰・緊急増資・地球温暖化・SDGs

2022年01月26日 | 経済
2022年最初のブログになります。
昨日の夜、反貧困ネットワークの瀬戸大作さんをお招きして、グリーンピープルズパワー(GPP)のオンラインセミナーを実施しました。2022年最初のGPPセミナーであると同時に、初めてエネルギー問題以外のテーマでのセミナーでした。
瀬戸さんはもともと反原発、青森県六ヶ所村の再処理工場に反対する活動をされていて、その頃からの知り合いです。2011年の東日本大震災・福島第一原発事故の後、福島からの避難者の皆さんに徹底して寄り添ってきました。その延長線上で、反貧困の取り組みが始まりました。テレビや新聞などで、その活動を見聞きするようになり、一度しっかりお話を聞きたいと思っていたのです。
昨日お話をうかがって、改めて日本の福祉がブラックボックスであることを知りました。そのブラックボックスに、ともかくも突入しているのが瀬戸さん・・と。日本の電気のブラックボックスに果敢に突入しているのが私であり、グリーンピープルズパワー(GPP)です。ぜんぜんやっていることは違うのですが、何か共鳴するところがあると思っていたのですが、多分ここだったのかなと。

電気のブラックボックスで起こっていること

昨年2021年の1月、卸電力取引所(JEPX)の市場価格(システムプライス)が暴騰し、kWh あたり250円に達しました。通常の市場価格は10円/kWh を下回る程度だったので25倍です。1ヶ月の平均価格では60円/kWh くらいでした。
電気の販売価格(消費者が払う電気代)は、一般家庭で30円/kWh くらいです。発電した電気の価格が10円、送電線を使うお金が10円、新電力の経費が5円、そして利益が5円と、ざっくりと分解します。実際は、消費者の契約メニュー、使用量、使い方(時間)・・などで、細かく違います。
市場価格が上がるというのは、「発電した電気の価格」が上がることを意味します。2016年に電力全面自由化が行われ、消費者は誰でも、好きな電力会社が選べるようになりました。裏返すと、誰でも電力会社を作り、電気を売って良いことのなったのです。2016年から700社ほどの新しい電力会社が名乗りをあげました。それらのことを「新電力」と言います。それまで電気を売っていた東京電力や関西電力は、これと区別するために「旧一般電気事業者」(旧一電)と呼ばれます。
新電力の多くは卸電力取引所の電気を仕入れて消費者に販売するという事業形態でした。それが「電力自由化」のあるべき姿と思われていましたし、自前発電所を持っている方が「特殊な形態」だったのです。しかし、日本の発電所の8割以上は、今でも旧一電が所有しています。旧一電発電と旧一電小売は、いわば一体で直接電気をやりとりし、20%から30%の電力市場(卸電力取引所)で、新電力が電気を売ったり買ったりするというのが、ここ4、5年の日本の電気の仕組みでした。
この市場が大きくなるということは、80%の発電所を持っている旧一電のシェアが減るということです。3割も減ると、経営的には大変でしょう。だから奪われまいと「安売り」をしたりして、新電力と競争するのです。しかし8割も発電所を持っているから市場が大きくなると、そこに電気を売りに出す「責任」も旧一電にはあるのです。
いや、出さなくても良いのですが、日本の3割の市場に電気がなくなり、新電力ユーザーが停電することになったら、送電線はつながっていますので、旧一電のユーザーも停電するのです。だから、日本全体の需給バランスを考えて、電気は出さなければなりません・・ということです。
安く出せば、それを仕入れた新電力が自分たちのシェアを奪う。かといって高く出すと経産省から「内外価格差」を出してはいけないと咎められる。そこで、昨年は「燃料が足りないです・・」と言って、市場にいれる電気を減らしたところ、市場価格が25倍となり、発電側は大儲けをしました。実は、電気が売り切れて買えなかった新電力は、送配電会社から不足分を埋めてもらうインバランス供給を受け、その価格は500円つまり50倍にもなりましたから、送配電部門もぼろ儲けをしました。
そして今年は、同じ手は使えないので、今度は化石燃料価格の高騰を理由にした「ブロック入札」という手法で、やはり市場に電気を売るのを減らしているのです。ブロック入札とは、電気の需給調整の単位である30分づつ売入札するのではなく、8時間とか10時間をまとめて入札し、一コマの30分でも約定(契約成立のこと)しなければ、ブロック全体を約定せず電気を売らないというやり方です。
この結果、電力市場では毎日電気が足りない「売り切れ状態」になり、高いときには80円/kWh になりました。この価格は、昨年の暴騰を受けて、新たに設定されたインバランス上限の価格です。昨年ほどではないですが、市場価格の平均は20円を超え、これがじわじわと新電力の経営を圧迫しています。昨年を耐えた新電力の中でも、今度は耐えきれず廃業、身売り・・という会社が続出しています。

FIT電気の仕入れ価格


GPPは緊急増資で乗り切りたい・・・

私のグリーンピープルズパワー(GPP)も直撃されています。市場から仕入れて電力販売という事業形態ではないのですが、再生可能エネルギーを中心に供給しているため、FIT制度を使った発電所の比率が高いからです。FIT再エネの発電所は、市場調達ではないのですが、発電所が一度送配電事業者にFIT価格で販売し、送配電事業者が新電力引き渡すという「特定卸供給」という手法になっています。その卸供給価格が「市場価格連動」と決められており、市場価格が高騰するとFIT電気の仕入れ価格も高騰するからです。
そこで昨年の暴騰を受けて、非FIT発電所の比率を増やそうとしてきましたが、まだ1割で、今回の高騰の影響を受けてしまったのです。今年の秋には、目標の非FIT50%を達成できるレベルの発電所開発を進めてはいますので、今をとにかく乗り切れば・・と思います。
そこで、1月からは発電原価調整費という名目で割引していたものを0円として、2円の割引を無くしました。2円/kWh の実質値上げです。さらにホームページで「ユーザーDR」を始めました。卸電力取引所の価格は前日に決まるので、そのグラフをそのまま掲載し、ユーザーが価格高騰時にはあまり電気を使わないようにお願いするというものです。この成果は、2月に入ってからでないとわかりません。
そこでもう一つ、緊急増資です。昨年も2100万円を集め、なんとか市場価格高騰の損失をカバーしたのですが、今年もやることにしました。2月、3月の支払いに対する備えで、目標2000万円です。一株は5万円、目標株数は400株です。募集期間が短いので、ちょっと集まるかなあ・・と心配しています。広報期間がほとんどないので。それで、このブログにもあえて書きます。お金に余裕のある人は、1株で良いので応援してください!

【株式の募集内容】
・目標株式数:400株
・発行価格 :1株 5万円
・目標総額 :2000 万円
・お申込期間:2022年1月15⽇〜1月30⽇
・お振込期間:2022年1月31⽇〜2月17⽇
・発行期日 :2022年2月18日

以下に公募増資の説明YouTube
https://youtu.be/b2XMwqvtavw

目論見書などはこちら
https://www.greenpeople.co.jp/information/6992/

福祉のブラックボックスで起こっていること

そして瀬戸大作さんの話です。福島からの避難者の人たちのケアをしているうち、日本には最低限の緊急セーフティネットがないことに気づきます。それはコロナウィルスの感染拡大で、もっと激しく多くの人々を「生きることができない」状況にまき込んでいます。所持金があと50円しかない、1円しかない・・という状況で、相談者は反貧困ネットワークに連絡してくると言います。ギリギリのところまで追い込まれるのは、本来の福祉の窓口が対応しないからです。
本来の窓口とは福祉事務所です。中には真剣に対応するところもあるのですが(少数)、ほとんどが門前払いをします。最後の手段として生活保護申請をしようとしているのに、若いから働けだの、負債があると受けられない(これは嘘)だのと追い返しています。「福祉が人を殺す」というショッキングな状態になっているのです。
また生活保護を受給するには脱法シェアハウスや無料低額宿泊所などの「劣悪な環境」の宿泊施設に入所することを、わざわざ条件にしている福祉事務所もたくさんあるようです。これは宿泊代や光熱費として生活保護費を巻き上げる悪質な「貧困ビジネス」です。本当はアパートを借りたりできるように居住支援をするべきなのにです。
厚労省は困窮者のために、1)自立相談支援と2)居住確保支援を必須としています。3)就労支援、4)緊急的支援、5)家計再建支援、6)子ども支援を任意としていますが、いま1円しかないという人には、緊急の生活費を渡すことも必要だと思います。
そういうことを福祉事務所がやらないので、結局、反貧困ネットワークのような民間団体が、居住できるシェルターを作り、緊急のお金を渡し、就労支援をし、生活再建と子どもの支援までやるという状態になっています。
生活を保証する法律を作り、最低限の生活(生存?)保証の制度を政府が作るべきなのです。民間の活動だけでは限界があり、政府の制度的な仕組みがないと、根本的な解決にはならないと瀬戸さんは指摘しています。
困窮者の多くは女性、最近は子どもを連れたお母さんも多い。そして外国人。外国人は就労ビザが切れていたりすると、就労支援もできません。働いてお金を払うと違法になるからです。いつまでも生活再建ができません。「働くな、だけど保証はしないよ!」というのが日本の現状なのです。コロナウィルスの蔓延後は20代や30代も増えてきたと言います。
たくさんの「可能性」が、この日本では踏み潰されているのです。

住民連帯経済へ、私たちに何ができるのか

政府が最低限のことを用意するのは基本です。しかし、それを放棄した政府の前で、「政府がやれ!」と叫んでいるだけでは、多くの人が死んでしまいます。民間がシェルターを作り、緊急支援をやり、自立のための仕事を作ることは必要です。反貧困ネットワークは多くの人の寄付で成り立っています。しかし、寄付で支援を行い続けるのには限界があります。困窮者が自立し、より多くの困窮者をサポートするというような仕組み、それを住民連帯型経済と呼ぶのかもしれません。
グリーンピープルズパワーは再生可能エネルギーの電気で、日本をいっぱいにしようとしています。そのためには無数の再エネ発電所を作り、管理し、また電気を売り歩かなければなりません。実はそれなりの人手が必要で、その仕事は何十年も、何百年も続きます。私がこの世にいるのは、あとせいぜい20年か30年。つまりこの事業を継続して担ってくれる人たちがいなければ続きません。気候危機を食い止めるために頑張っている若者たちが、その第一の候補ですが、生活困窮者の人たちの中から、それなりのスキルを持った人が育ってくれると良いな・・とも思いました。
ソーラーシェアリングという農業と一体となった太陽光発電方法もあります。電気も作りますが、農業は作物を作ります。それを使ったレストラン、カフェ、あるいは加工食品・・。発電所を作るための土木、建築事業。さらには発電所の材料(発電パネルや架台など)を作る産業・・と最終の規模が大きくなるほど可能性は広がっていきます。
それは一方で、日本の電気を再エネに置き換え、地球温暖化を防止していくための過程とつながっているのではないでしょうか。大資本の会社が、土地を買い大規模投資で、大きな発電所を作ってもその電気の利益は、その地域にはほとんど何ももたらしません。わずかな固定資産税だけでしょうか。しかし「住民連帯経済」は、小さな投資で地域の雇用と、福祉関連産業を活性化させるのではないでしょうか。子供食堂、大人食堂、各地に自立支援センターを作って、その運営をできる人材を育てる。最前線で困窮者を支援する支援者の支援もまた必要。福祉、医療、介護・・に止まらない仕事が広がっていくのではないでしょうか。

ということで、今年最初のブログを終わります。

農業と共存、ソーラーシェアリング発電所














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