道楽人日乗

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漫画「あおざくら 防衛大学校物語」4巻迄

2017-08-21 17:16:07 | 漫画感想

二階堂 ヒカル著

勉強大好きな高校生、近藤勇美は家業の不振から進学を諦めようとしていたが、学費無料で給料まで出るという防衛大学の存在を知り、受験、合格。寮生活に入る。そこで連帯責任、4年生は神様。規律に厳しいことは予期していたものの、想像を超える理不尽な世界が待っていた。

例によって、アマゾン様のお勧めに素直に従って読んでみた。どうしてこの漫画が僕に薦められたのかよくわからない。邦画好きなので、昔の戦争映画や、旧制高校を描いた作品などを思い出しつつ現代にもこういう文化が残っているのかと、知らない世界を垣間見せてもらい、それなりに面白く読んだ。読み終えてちょっと考えてみるとちょっと不満がある。

各巻末にはOBの座談会、偉い人へのインタビュウが掲載。座談会では「漫画的演出」と理解したうえで、先輩の女子寮への覗き行為の同行を近藤が強制される場面を「現実だったら言語道断」と語られる。こんな感じの漫画的演出は、結構随所にあり、もちろん知らない世界のことなのでどれが本当でどれが虚構とは言い切れないが、いかにも型どおりの少年漫画的演出であり、新味や機知が感じられない。子供向けの漫画という印象を受ける。ヘルウィークなんていう妙な行事?の妙な名前も、(いくら連帯責任と言っても)学年全体の学業を停滞させているだけのようにしか思えない。アマゾンの読者評価をみるとおおむね好評なので、届く人には届いているのだろう。リアリズムとマンガ的演出のバランスをどのあたりにとるかが作品の要だと思う。

厳しい規律、寮生活は大変で、部活も大変です。先輩は厳しいです。というお話だが、3巻迄の寮生活での日常のしごきや、銃の分解以外にも、彼等が普段どのような勉強をしているのか、彼等が直面する国防とは何なのかなどが、もうすこし描かれてもいいのではないかと思う。以上がちょっと不満に思ったところ。

「理不尽」さは主人公が2巻あたりまででぶち当たる大きなテーマだ。先輩は憤る近藤にこう語る。「理不尽を知らなければならない。有事の際に立ち向かわなければならない様々な理不尽に慣れるために」
なるほど、これは明快な答えにして、強力な答えであると感心した。日本軍を描いた映画の様々な理不尽な場面が頭をよぎる。
…いや、そんな筈はない。この理屈は方便だ。理不尽は理不尽にすぎない。この漫画で初めて語られた理屈とは思えないが、どのあたりから生まれてきたものなんだろう。

近藤達が2年生に上がったとき、後輩達にどんな態度をとるのかが気になるが、いまのところ次巻にあまり興味がつながらない感じだ。