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紀伊半島を南北に貫く五條新宮道路の整備状況(その2)

その1はこちら

1.五條市内北部

五條新宮道路ですが、整備計画のある区間の最北端は新天辻工区(紀ノ川水系と熊野川水系の分水嶺に相当する山地をトンネルで貫く区間)であり、元からの五條市区間は含まれていません。

しかし、奈良県が五條市南部のゴルフ場跡地に建設予定の「大規模広域防災拠点」(紀伊半島一円やその周辺で災害が発生した際の救助や医療、支援の拠点として整備するもので、最終的には2000m級滑走路も設置する計画)へのアクセスルートとして、京奈和自動車道の五條西IC付近から拠点計画地の東南にあたる五條市生子(おぶす)町までの区間の国道168号バイパスを奈良県が2019年11月に調査路線と決定しており、事業化に向けて検討中です。

https://www.pref.nara.jp/secure/250542/daikibo-plan-summary.pdf (7ページ)

大規模広域防災拠点は2022年10月に現地で事業開始式が行われましたが、

https://www.yomiuri.co.jp/local/nara/feature/CO065836/20230527-OYTAT50065/

2023年春に就任した新知事による事業見直しの対象となり、2023年度予算(防災拠点全体で約25億円、国道168号バイパスで約1億円)の執行は凍結となりました。

https://www.pref.nara.jp/secure/295577/0612.pdf

新知事も大規模広域防災拠点の必要性は否定していませんが、防災目的での整備内容を多角的に再検討するとのことで、当分は五條市内でのバイパス整備事業の始動はお預けのようです。

 

2.新天辻工区

現在の国道168号新天辻トンネル(全長1174m)は1959年に開通したもので、トンネル内は狭く大型車同士のすれ違いができないほか、トンネルの南側には急勾配(五條市中心部方面からだと下り坂)や急カーブがあり、災害にも脆弱です。

これを踏まえ、現道よりずっと低い個所をより長大トンネルで貫くバイパスが計画され、2018年度の国庫補助採択により新規事業化されました。事業主体は奈良県です。

https://www.pref.nara.jp/secure/194444/%EF%BC%90%EF%BC%8E%E5%A0%B1%E9%81%93%E8%B3%87%E6%96%99%E4%B8%80%E5%BC%8F.pdf

2022年12月に開催された「令和4年度 第3回 奈良県公共事業評価監視委員会」の資料によれば・・・

https://www.pref.nara.jp/secure/282956/r0403no11.pdf

総事業費は、新規事業化された段階の見積もりの約221億円から約315億円と大幅に増額になっています。地質調査結果による増額幅が約82億円と巨額で、工法見直しによるコスト削減で約16億円を捻出しても焼け石に水状態です。

そして、国土交通省のサイトに掲載されている再評価結果(令和5年度事業継続箇所)によれば、用地買収の着手が2020年度、工事着手が2022年度となっており、事業進捗率は約6%だそうです。

https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-hyouka/r4sai/2_r4_138.pdf

確かに現地付近で工事が行われている様子はありませんでした。

この区間で最長の1号トンネル(全長4970m)はまだ設計段階で未着工ですが、建設途上で中止となった国鉄阪本線(五新線)の全長約5kmのトンネル<1972年に完成済>に並行して掘削されます。単線鉄道用のトンネルを拡張して高規格道路用に改築することはできなくはないですが(北海道などで実例あり)、ここでは採用されませんでした。ただ、道路トンネル掘削時のズリ捨て用に活用する構想はあるようですが。

なお、鉄道トンネルの南口付近は大学の研究施設として活用されており、五條市大塔町阪本地区の国道168号沿いに坑口があります(道路拡張で削られていますが・・・ストリートビューはこちら

(つづく)

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