今日からは辰巳の解説実況中継シリーズの紹介を致します。
第1回は憲法、棟居(むねすえ)教授です。
以前先生の判例スピードマスター講義のことをお話ししましたが、その講義に触発されてこの本を購入しました。この本は司法試験に留まらず、憲法を初めとする法律科目の思考パターンを随所に呈示してくれています。
例えば・・・
「エベレストに登るのは大変だが、先人が作った階段をつかえば何も絶壁を登る必要はない。難しい問題も使える知識は判例でも何でも利用して結論を出せばいい。最初から最後まで自力で道を切り開こうとするようなことはしなくていいし、誰も要求していない。」
「法律解釈学はアナロジーの学問である」
「司法試験は法律家たちにとって自己増殖の作業に他ならない。自分たちと波長が合う者をテストで見つけ出すことを目的としていて、法律家に仕立て上げるプロセスについては試験の主催者側は何の責任をも感じていない」
「(憲法答案は)一個のことしか聞いていない。あれこれどうでもいいことを書かずに一番大事な論点に全力投球すべきだ」など。
先生は司法試験合格者ではない(だろう)し、試験委員経験者でもないので、こういう発言については訝しげに思う方も当然いらっしゃると思います。
しかし、5回この試験を受けてきた私の個人的な感想からすれば、前2者だけでなく後2者の過激な意見もおおむね正しいと感じています。
本試験の研究対策を進めるにつれ、典型的な教科書・問題から離れたところにある採点ポイントが明らかになってきましたし、統治に関しては「単一論点だ」との先入観を持っても本試験の評価は悪くならないことも個人的には実証されました。
この本を読んで、司法試験の答案全体について考えさせられることが多々ありました。
また、先生独特のくだけた表現で、わかりやすく卑近な例で高度な問題を解説してくださるので、憲法に親しみがもてました。
もっとも、本試験の合格答案作成という観点からすれば、やや割り引いて理解すべきではないか、と思われる箇所もありました。
例えば、平成6年1問を3項プロパーの問題と捉えたり、2重の基準を踏まえた議論を「念仏」と一蹴したり。 先生は学者のタイプで言うと、少数派の意見を汲むパンクロッカーですので「落ちにくい答案」を目指す観点からは危険極まりない判断をされることがしばしばあります。
さらに、法律的議論の部分は充実していますが、学者らしくあてはめにはあまり意識がいっていません。これは一般的な合格答案のイメージからは欠落するところです。
とはいえ、完全な教科書・問題集など、この世には存在しません。私が指摘した不足点に注意しながら読み進めれば、必ず憲法的素養が培われることでしょう(即効性はあまりないと思います)。
第1回は憲法、棟居(むねすえ)教授です。
以前先生の判例スピードマスター講義のことをお話ししましたが、その講義に触発されてこの本を購入しました。この本は司法試験に留まらず、憲法を初めとする法律科目の思考パターンを随所に呈示してくれています。
例えば・・・
「エベレストに登るのは大変だが、先人が作った階段をつかえば何も絶壁を登る必要はない。難しい問題も使える知識は判例でも何でも利用して結論を出せばいい。最初から最後まで自力で道を切り開こうとするようなことはしなくていいし、誰も要求していない。」
「法律解釈学はアナロジーの学問である」
「司法試験は法律家たちにとって自己増殖の作業に他ならない。自分たちと波長が合う者をテストで見つけ出すことを目的としていて、法律家に仕立て上げるプロセスについては試験の主催者側は何の責任をも感じていない」
「(憲法答案は)一個のことしか聞いていない。あれこれどうでもいいことを書かずに一番大事な論点に全力投球すべきだ」など。
先生は司法試験合格者ではない(だろう)し、試験委員経験者でもないので、こういう発言については訝しげに思う方も当然いらっしゃると思います。
しかし、5回この試験を受けてきた私の個人的な感想からすれば、前2者だけでなく後2者の過激な意見もおおむね正しいと感じています。
本試験の研究対策を進めるにつれ、典型的な教科書・問題から離れたところにある採点ポイントが明らかになってきましたし、統治に関しては「単一論点だ」との先入観を持っても本試験の評価は悪くならないことも個人的には実証されました。
この本を読んで、司法試験の答案全体について考えさせられることが多々ありました。
また、先生独特のくだけた表現で、わかりやすく卑近な例で高度な問題を解説してくださるので、憲法に親しみがもてました。
もっとも、本試験の合格答案作成という観点からすれば、やや割り引いて理解すべきではないか、と思われる箇所もありました。
例えば、平成6年1問を3項プロパーの問題と捉えたり、2重の基準を踏まえた議論を「念仏」と一蹴したり。 先生は学者のタイプで言うと、少数派の意見を汲むパンクロッカーですので「落ちにくい答案」を目指す観点からは危険極まりない判断をされることがしばしばあります。
さらに、法律的議論の部分は充実していますが、学者らしくあてはめにはあまり意識がいっていません。これは一般的な合格答案のイメージからは欠落するところです。
とはいえ、完全な教科書・問題集など、この世には存在しません。私が指摘した不足点に注意しながら読み進めれば、必ず憲法的素養が培われることでしょう(即効性はあまりないと思います)。
「採点ポイントがちがう」・・・予備校答練(典型的な問題)で採点ポイントになるのは、論点の数、問題提起の巧拙、条文及び論証の丁寧さにあり、総じて加点形式で、よっぽどおかしくないと文章そのものに対しては減点されません。
これに対して、本試験の場合、内容の巧拙より先に「何か変なことを書いていないか」という目で見られます。その上で問題提起の巧拙やあてはめの丁寧さなど、加点すべきポイントをチェックしているのではないかと考えられます。この点で、解りにくい文章を書いていれば、それだけでもうC以下をつけられる可能性があるようです。
「法律家に仕立て上げるプロセスには責任を持っていない」・・・事例問題を典型例に挙げると、(1)問題文から問題となる条文・論点などを抽出する(2)論証する(3)あてはめする という作業を経て答案が完成するわけです。
このうち、教科書に掲載されているのは(2)の部分だけです。典型問題なら、問題集をこなせば(1)や(3)についても会得出来る場合もあります。しかし、本試験でよく出題される非典型問題では、(1)も(3)も未知数です。(3)あてはめについては、あまり高い配点は無いようだし、文章の最後なので、ごまかしが効きます。ところが、(1)事案からの条文・論点抽出については詳しく言及した教科書はありません。しかも、この(1)がわからなければその後の答案が滅茶苦茶になってしまうのです。
つまり、応用問題を毎年出しておきながら、その対策についてはなんら訓練法を教授しないという、教育者側の無責任があります。「センスのある奴はそんなの教えなくても勝手にできるようになる」ということなのかもしれません。しかし、司法試験レベルの法律はセンスで会得するものでは無いと思うのですが。