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手塚治虫漫画全集のブログ 複眼魔人

2013-07-15 13:59:15 | 手塚治虫
"Multiple-Eyed Devil"【ライオンブックス⑦】
昭和32年 おもしろブック付録より


 ライオンブックス収録の短編はこれで最後です。今回は中学生3人組と不思議な超能力を身につけた少年・アー坊が友情を通じて社会を救う? 敵は特高だったり代議士だったりと、そこは手塚マンガの真骨頂。中学3人組の一人は佐々木小二郎君はやっぱり剣道の名手なわけで・・・。


The year is 1945. The stage is Tokyo. The boy Abo injures his eye in a U.S. airraid and an artificial cornea is implanted in the injured eye. It was a secretly developed cornea and any one who had it implanted was able to discern true from fales. Abo is utilized by the Japanese military intelligence and makes great contributions. After the war, Abo is utilized underworld bosses and he becomes a man who cannot believe in the human beings. Abo, in order to retalizate against society, calls himself the "Multi-Eyed Devil" and works many evils. But three of his former classmates succeed in making Abo repent and Abo decides to use his power for the sake of society. (Work of 1957)


 昭和20年。東京大空襲の最中、幼い子供をかばいながら逃げ惑う父親の姿があった。しかしか爆風ではじき飛んだ破片が子供の目に当たり負傷してしまう。近くに崩れかけた病院を見つけた父親はそこで瀕死の重傷を負った老医師に出会い、彼の最後となった治療によって子供の目は再び光を取り戻すのだった。そしてまた、蘇った子供の目は人の虚言を見抜く不思議な力を宿していた。

 やがてその不思議な力に気づいた軍は奇跡の眼力を宿したアー坊をスパイ狩りに利用するも終戦を迎え証拠隠滅とばかりにアー坊を殺そうと企むが、混乱の最中、アー坊はただ一人いずこかへ逃げ延びるのだった。

 そして10年後、足柄山の山中へハイキングでやってきた中学生3人組はそこで野生児のように暮らすアー坊と出会い、彼を拾い育てた"おばあ"の願いもあって東京へと戻っていく。しかし、アー坊の目は戦後も変わらぬ人々のエゴを見抜き続け、そんな社会のありように辟易した彼は複眼魔人を名乗り世間を混乱させることとなってしまうのだった。



 戦争・言論統制への批判を込めつつ綴られていくこの物語は『複眼魔人』なんてタイトルだから怪人二十面相ばりのミステリー風にとられそうですが、一筋縄ではいかない複雑な人間模様が絡み合って終焉を迎えるというドラマ性を持ち合わせていて、後々に発表される傑作『アドルフに告ぐ』にも似たドラマを展開します。

 


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