米島勉のセカンドオピニオン

ここでは,広い意味で健康に関するセカンドオピニオンを考えてみたいと思います。

ヒアルロン酸は飲んでも効かない―なぜこんなものが横行するのか

2008年06月10日 | Weblog

 ヒアルロン酸は,サプリメントとしては最近のヒット商品でしょう。湿潤剤・保湿剤としての美容分野,医薬品分野などでの利用はかなり古い歴史を持っていますが,最近では関節の潤滑剤の補給に有効と銘打って「飲むヒアルロン酸」なるものがもてはやされています。
 しかし,不思議に思うのは,いったいヒアルロン酸は飲んでも有効なのでしょうか。この問題を考えてみます。
 ヒアルロン酸は,ムコ多糖類と総称されるヘテロ多糖類の一種で,これも古くから知られているコンドロイチン硫酸などと同様な粘稠高分子物質です。植物で云えば粘りけのあるトロロイモのようなものと考えていいでしょう。直感的にいかにも潤滑油かグリースのような滑りが期待できるわけで,実際に関節部分の潤滑液として存在しています。また湿潤性が高く眼の水晶体,皮下にも存在します。
 薬用などに利用されてきたヒアルロン酸は,これまで鶏のトサカが主原料で高価でした。鶏のトサカを集めて煮込んでヒアルロン酸を集めるのです。しかし,鶏のトサカだけでは足りなくなり,現在では乳酸発酵法や遺伝子組み換え細菌による合成法などが導入されています。
 それではこんな方法で製造されたヒアルロン酸をカプセルや錠剤に加工し,経口摂取してどんな効果があるのでしょうか。
 テレビのCMなどでは,ヒアルロン酸のカプセルを飲み続けると関節痛が治り,つらい階段の上り下りも楽になるように見えます。しかし冷静に考えてみて下さい。テレビでは映像の切り貼りでいかようにも編集できるのです。とくに最近のCMの加工度は行き過ぎで,CG技術の向上も悪用されて目に余るものがあります。
 口から飲む(経口摂取)ものは食料も含めてすべて胃内で強い塩酸の洗礼を受け,さらに様々な酵素の作用を受けて分解してしまいます。この分解は,小腸内で吸収可能な大きさまで分子鎖を切断するのが目的です。こうしなければ体内には吸収されないのです。分解されなかった高分子物質はすべて大腸を通じて排出されてしまいます。ですから,高分子であったムコ多糖類も,そのままでは吸収されず,分解されてはじめて体内に取り入れられるようになります。そして体内では,こうして分解された低分子量の物質が,改めて再構築されて筋肉になったり,脂肪になったりするのです。この理屈を逆用して,高分子のヒアルロン酸を何らかの方法であらかじめ分解して比較的低分子量化して,いかにも吸収しやすくしたかのような見せかけも,ヒアルロン酸の宣伝には現れています。
 しかし,残念ながら,いちど分解されてしまったヒアルロン酸の残骸が再構築されてテレビCMで見られるようないかにもねばねばした滑りやすそうな粘液になることはあり得ないのです。これについては,ウィキペディアでヒアルロン酸の項目をごらんになれば,「ヒアルロン酸の経口摂取に関する、科学的実証結果はこれまでのところ存在しない。 ......ヒアルロン酸の基本構造はヘキスロン酸(GlcUA)とヘキソサミン(GlcNAc)の連続であり それぞれのグリコシド結合はα1→3結合が大半であり、アミラーゼで分解されると思われる。 それゆえ経口摂取によって軟骨やマトリックス組織に補充されるという考えは生化学的マジョリティにおいて否定されている。」と書かれています。
 これが現実なのです。量産化された安価なヒアルロン酸製剤を,有名な俳優を何人も起用したテレビCMでいかにも効果があるように見せかけ,高値で売りつける商法は良心的とは思えません。



7 コメント

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健康食品の危険性 (takesi)
2008-08-15 01:07:57
[消費者保護]T07.708 名古屋地裁平19・11・30判決:健康食品に製造物責任法を適用

母娘が安全性が確保されていないのに「アマメシバ」を原材料とする健康食品を販売した等として、健康食品を販売した会社、特集雑誌を発行した出版社、雑誌で効能を強調していた医学博士らに損害賠償を求めた訴訟で、通常有すべき安全性を欠いていたと欠陥を認定し、製造過程等から販売会社も製造物責任法上の製造業者に該当すると判断し製造物責任法の責任を認め、また台湾での症例が医学誌などに掲載され、危険性を予見できたのに有効な調査も雑誌での警告もしなかったとして雑誌で効能のみを強調した医学博士の不法行為責任を認め、計約7620万円の賠償を命じる判決を言い渡した。雑誌を発行した出版社については、結果の予見可能性はなかったとして請求を棄却した。(毎日新聞2007.11.30)

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ヒアルロン酸のこと (河野武司)
2010-02-22 11:30:21
心配に成るのが・皇潤・の製造過程の製造法【品質管理・工程能力・特に衛生管理項目の徹底・等】と、原料は何を何%の割合で混合して錠剤にしているのか?酒粕の匂いがする
原料は安く・・高額な利益を上げているので、コマーシャルの数が多く、嘘の宣伝をしている、これ等の・インチキ商品を監査・管理・する国の機関は何処に成るのだろうか? 本質は詐欺と同じように思えて成りません。
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ヒアルロン酸、飲んでも効果は? (エコな人)
2010-06-20 15:47:49
自分もヒアルロン酸は、サプリメントとして、飲んでも効果はないのでは?と思っています。
 もし、効果があったとしたら。他に含有されている成分により良い結果がでたとか、病は気からという事で精神的なものや、たまたま、タイミングよく体調が改善されたとかそういう理由によると思われる。
 長期間、飲み続けて下さいという商品に関しては、飲んでなくても良くなる可能性があるので、論外だと思います。
 現段階では、直接注射器で幹部に使用する場合を除いては低分子にし、たからといっても効果はなさそう。
 よく売れているヒアルロン酸とかかげている商品
は、含有量も表示されていない(メーカーに聞いても教えてくれないらしい)。非常に少ない可能性もある。なぜ、少ないか?メーカーの人は、ヒアルロン酸が効果があるか、無いか一番わかっているであろうから、効果のないものに経費をかけるのはもったいないと思うだろう。
 
 ヒアルロン酸については、もっと調べてみようと思います。このサイトの運営者の人にはがんばってほしいです。

 
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皇潤の真実 (ある成分分析官)
2011-07-27 15:59:37
皇潤の分析を行いました。

ヒアルロン酸含有量:0.93%

コラーゲン43.8%

その他

ヒアルロン酸は原料代が高いですからね。

まあ、確かにヒアルロン酸は

ホンノちょこっとだけは確かに入ってました。

でも、「飲むヒアルロン酸!」ではなく

「飲むコラーゲン!」が正しい表現ですね。

それではどこにでも売っているから売れないか。
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Unknown (疑似科学が嫌いな者)
2011-10-01 18:04:18
はじめまして

> なぜこんなものが横行するのか

端的に言って「消費者が愚か」としたら反感を買うので、
「一般的な消費者心理には、科学的思考より感情論が先行する」からでしょう。

ブログ主の様に、ある学問分野(医学または生化学関連と予想します)の知識などは
普通の人には無く、「ムコ多糖類?何それ?」かもしれません。

ヒアルロン酸だけではなく、私たちの身の回りには
疑似科学と思われる商品が意外とありますね。

> これ等の・インチキ商品を監査・管理・する国の機関は
> 何処に成るのだろうか? 本質は詐欺と同じように思えて成りません。

国をかばうつもりではなく、一応最近では、国の一部機関では
下記の通りです。

http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail573lite.html
> 経口摂取によるヒトでの有効性については信頼できるデータは見当たらない

私にとっては、国よりも、テレビ局が拝金主義の様に見えます。
当然ですね。テレビ局は、営利団体なので、当然かもしれません。

この種のことは個人的には好きですが、
人によっては「理屈っぽい」で煙たがられるかもしれません。

私も、ブログ主にはがんばってほしいと応援します。
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公共広告機構は何のために存在するのか? (すかんぴん)
2012-02-19 18:01:48
私もこの問題を自身のブログで取り上げた事があります。確かにCMでは効果有りとは言っていない。しかし効果がある様な印象を与えるCMはもはや誇大広告と言えるのでは無いでしょうか。公共広告機構あたりが注意勧告すれば良いのですが、今でも毎日の様にCMが流されている所を見ると何のやる気も起こさないのでしょうね。(効かない証明が難しいのかも?)
 それにしても日本人のサプリメント好きにはあきれますね。
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実際に体験しないで語るのも? (かまた)
2012-02-25 17:21:47
飲むヒアルロン酸は、お年を召されたかたがたにとっては、非常に大切な健康食品だと思います。理論的な見解はいろいろあるかと思いますが、実際に使用した方々が満足されていれば、特に問題ないと思います。現に我が家では非常に助かっております。階段の上り下りが楽になったし、肌のしわが少なくなってきたりして大満足しています。ですから日々の生活になくてはならないものと確信しております。
やはりいいものはいいんですね。
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