外側のセカイへ~少し昔の物語~
「いや~、景気はどうよ、兄ちゃん?」今朝、俺は通りすがりの酔っぱらい親父に聞かれたんだ。
正直、見栄張って「いや、もうホクホクっすね!」って俺は言ってみようかとしてみた。
そしたらな、相方のガボ兄に言われちまったんだよ。
何て言ったか分かるか? そりゃあ、もうズバッとな――――
「馬鹿野郎! ホームレスやってる奴が儲かってるわけねぇだろうが!!」
改めて『現実』ってのを思い知らされた瞬間だったな、うん。
ま、その後、親父からは同情の念が籠もりきった夏目漱石さんを二人もくれたから良しとしよう。
惨めだなんて気持ち? そんなもんとっくの昔に捨てたさ。
安っぽいプライドは捨てていこう! ホームレスだったりすると特に、な。
第一話~とりあえず作戦会議~
さて、この日も俺は朝五時頃に目を覚ました。
いや、別に俺が爺さんってわけじゃない。それに身体の方はバッチリ十代、ていうか、それ以上、だ。
何でこんなに朝が早いかっていうとそれなりの理由が俺にはある。
そいつは至って単純なんだ。それはな――――――
あんまり寝過ぎるとお巡りさんに職務質問されるからだ。
コイツは結構厄介なものなんだな、意外と。
一度だけお巡りさんに捕まって結構大変なことになったりしたんだ。
とりあえず、様々な手段(……と数少ない金銭)をフル活用してその場を逃れることが出来たんだが、マジでヤバかったと今でも思ってる。
だから、お巡りさんが動き出す前に身体が動くように早起きを心がけていたりするんだ。
まぁ、今俺が生活している公園ではとりあえず、それほど人目に付くことはない。
寂れてるってのもあるし、何よりも住居が少ないって事が原因にあるのだろうな。
お陰様でお巡りさんが巡回してくることは殆ど無かったりするんだが、それに加えて客すらも来ていない。
だが、客に関しては大して問題はない。客寄せぐらいは出来るからな。
お巡りさんは本当に強敵である。とりあえず、日本にやって来て最初に思ったことはそれだったな。
……っと、早起きの話はそれぐらいにしておこう。
正直、『早起きは三文の得』という日本のことわざについて語っても良いんだが、絶対につまらないと思うから止めておく。
聞きたい奴は言ってくれ。金さえ払ってくれれば小一時間くらいは語れるからな。
起床後、俺はまだ明けない空を眺めながら、朝の身支度を整える事にした。
もちろん、傍らで熟睡していたガボ兄を起こしてからだ。
「――――ふう~、やっぱ朝の洗顔はスカッとするなー、ガボ兄!?」
「ま、公園の噴水で顔洗うってのもどーかと思うけどな」
うぐっ、相変わらず痛いところを突いていくなぁ、ガボ兄よ。
ここの公園は寂れている上にトイレというのが存在しない。
だから、洗顔や歯磨きの類はたいていここに存在する唯一の水源である噴水を活用させてもらっている。
……ただな、やっぱり、風雨に晒される噴水の水である。
秋ということも手伝って、散り始めた木の葉が噴水の水溜まりに溜まっていたりする。
正直、使いたくないんだが、そんなことも言ってられない。
人生相談士という仕事をしているからには身支度を整えることは大切だ。
あ、ちなみにホームレスが何言ってんだよってツッコミは止めてもらいたい。
結構気にしてるんだよ、本当にさ。
とりあえず、身支度を整え終えた俺とガボ兄は早速、今日の作戦会議を始めた。
「なあ、ガボ兄。とりあえず、今日は外に出ようかと思ってるんだ」
「ん? もう、外にいるじゃんか」
「いや、確かにここも外だけど、公園の外だから……」
「へっ、冗談だよ。んで、今日は宣伝って事か?」
そう、多少ここまで持ってくるのに無駄なこと喋ってたけども本題はこれである。
とりあえず、最近ベッド兼机兼椅子兼その他諸々に利用(悪用ではない)させてもらっているベンチに腰掛けながら話を進める。
もちろん、今日の議題は『宣伝』である。
「――――なぁ、どうやっていったらいいと思う? ホラ、この仕事ってまともに宣伝するモンじゃないだろ?」
「う~ん、それもそうだよな。それに、迂闊に宣伝がデカくなったりしたらそれこそ追っ手に『捕まえて下さいな』って言ってるようなもんだからな」
「あ~、それもあるよな。それじゃあ、宣伝はしない方向でいってみるかな」
「うん、それが無難だろうな」
とりあえず、宣伝に関しては無しって方向に決まった。
まぁ、これはこれで無難な方だろうな。何せ、実家からの追っ手が気付いてしまったりしたら大変なことになる。
奴らが日本に来ているかどうかは知らないけども、とりあえず静かにやっていくというのがあってるだろう。
「よし、こうなったら宣伝抜きで適当な奴をひっ捕まえてみるか!?」
「は!? いきなり何言ってんだよ、新司!?」
俺の自覚のある突発的犯罪チックなアイデアをガボ兄は反射と言っていいほどのスピードでツッコミをいれる。
ナイスツッコミだぜ、ガボ兄。それでこそ俺の相方だ。
「うぬっ、全く嬉しくない褒め言葉だな……まぁ、いい。なぁ、新司、とりあえず分かりやすい説明を頼むぞ」
「もちろんさ、さすがにあれだけじゃ『頭のネジが緩みきってる人』だからな、うん」
とりあえず、数本の緩みそうなネジを締め直しながら俺は今回の作戦を教える。
まぁ、俺の話し方が下手だって事もあったからここで全部紹介するのもアレなんで簡単に一言でまとめてみた。
端的に言うとだな、
『とりあえず適当な客を呼び寄せて、強引に話をしてもらおうじゃないか作戦』だ。
もちろん、予想通りの反応が返ってきたさ。
「いや、そいつは悪徳商法の類になるんじゃねぇか?」とか、「思いっきり迷惑行為だろ」っていうツッコミが来た。
そいつは俺も分かってるさ。でなきゃ、こんなアホな作戦なんて明日の生活がかかってる状況で言わない。
ってことで、俺は付け足すようにしてガボ兄に説明した。
これまたグダグダ言ってしまったので、端的に紹介してみようかなと思う。
まずは、『適当な客を呼び寄せて』である。
これは、最初の一手だったりする。
とりあえず、適当な客を捜してその人から適当な話をもらってそれにいつも通りに受け答えする。
もちろん、この時に金なんかを取るつもりはない。
そんなことをすれば強盗と一緒だ。そんな外道をするなんてことはしない(って、そんな台詞が言える程じゃないけどな)。
そんでもって『強引に話をしてもらう』って方は至って単純だったりする。
強引にって部分は間違っちゃいない。肝心なのは『話』の部分だ。
普通ならこういう時、話の内容というのはお悩み相談って感じになるんだろうな。
だけど、俺の仕事(自称)は人生相談士だ。占い師でもなんでもない。
俺としても色んな話が聞きたいしな。
お悩み相談は大歓迎、自慢話はちょいと嫌だが、まぁ、良しって所だ。
ちなみに、この時の最初の客には金を取るつもりは毛頭ない。
てか、当たり前だろうな。自分で捕まえておいて金取るなんてのは外道である。
かといって、そのまま「有り難うございました」って返すつもりもない。
俺の作戦の神髄はこのラストにあるんだ。
それは『その客を使って新しい客を連れてくること』である。
いやぁ、これを思いついた時には正直言って「やったな俺!」って思ったな。
これなら、客経由で俺のことを他の人に知ってもらって、俺が客寄せしなくても勝手に客がやって来るという仕様だ。
もちろん、そのためには客がある程度の熱意を持って俺の事を紹介してもらってくれないと意味がない。
俺も頑張って最初の仕事を手掛けるつもりだ。
以上が俺の突発的に思いついたスペシャルアイデアって訳である。
「――――なるほどな。まぁ、多少の無理はあるけど、これなら大丈夫か」
「だろ!? いやぁ、こんな事を朝から思いつくなんてビックリだ。『早起きは三文の得』ってのは本当みたいだな、うん」
俺の話を聞き終えたガボ兄は若干の難色を示しながらも、他にアイデアがあるわけでも無かったようで、俺のアイデアに賛成してくれた。
そして、意気揚々と町中へ出るための準備をする俺をよそにガボ兄は羽をばたつかせながら呟くように、
「はぁ~、本当に三文の得になると良いよなぁ……」
微妙に耳に残る一言だった。けれども、この時の俺はそんな事は一蹴するようにして元気よく、
「何言ってんだよガボ兄! そんな弱気じゃ駄目だって」
「……だな。よし、それじゃあ、まあ、いっちょ行ってくるか!?」
「おう! それじゃあ、出発!」
って事で俺とガボ兄は荷物を『特製ナップザック』にしまい込んで公園を後にした。
とりあえず、朝早いからコンビニに行ってみよう。
あそこなら情報源もそれなりにあるし、オニギリくらいを買う金だったらまだ残ってるしな。
とりあえず、俺は適当な客を捕まえれることを願いながら町中へ向かって歩く。
そして、見つけたわけだ。とびっきりの『大当たり』を。
最も、それが俺にラッキーをもたらしたかどうかなんてのは別の話になるんだけどな。
<後書きor次回予告!?>
はい、ども~。俺はこの本編の主人公、待之夜 新司だ。
今回は趣向を変えて作者じゃなくて、俺がこのスペースをやらされることになった。
……正直、嫌だな、うん。面倒くさい。
けれども、土下座までされたらやらないわけにもいかないからな。
やるからにはキッチリやるって事にする。(食料もらったからやってるって訳じゃないぞ)
……さて、今回は後書きが出来る身分じゃないから、次回予告でもやってみるか。
とりあえず今後の方針が微妙に決まった俺とガボ兄。
順調に思える今の状況なんだが、ここは俺の人生である。
この先も困難とかが諸々待っていた訳なんだ。
まぁ、どんなことが有ったかは……そのうち紹介って事にしておこう、うん。
で、先行き不透明な次回は『ファーストアタック(仮)』。
いよいよ仕事が始まるわけだ。
果たしてどうなる事やら……
次回もお楽しみにって事で頼む。いや、本当に。
※あ、ちなみに感想の方があったらコメント欄の所に頼む。
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