愛知県吉良町。
半分天上界を通り抜けて来た禄郎は、堤防の上に座っている公吉の足元で、女の子二人が言い争っているのを見付けました。
(あ、いたいた。)
「それで?結局私達のどちらを選ぶの?」
「いい加減はっきりしてくれない?」
女の子二人に詰め寄られた公吉は、しばらく考えて言いました。
「うーん…。じゃあさあ、三人で付き合おうか。」
「は?」
「は?」
(…おい。)
見ていた禄郎も心の中で突っ込みました。
「俺さあ、今、特に誰かと付き合いたいとか、そう言うのないんだよね。」
公吉はニッコリと笑顔で答えました。
「バカじゃん。」
「最っ低!」
そう吐き捨てて、女の子二人は帰って行きました。
女の子二人が去った後、一人で堤防に座る公吉に、禄郎は声を掛けました。
「こんにちは。この間はどうも。」
「あ!この前、流夜のいとこと来てた、尾崎士郎を研究してる学生さん。まだこっちで調べてたの?」
公吉は禄郎に気付いて言いました。
「あ、いや、尾崎士郎を専門に研究している訳じゃなくて。文学部じゃないし。ただの趣味で。
…それよりも少し聞きたい事が。」
「俺?尾崎士郎は地元の出身だけど、よく知らないよ。」
「悪いけど、ちょっと立ってもらってもいい?」
そう言うと、禄郎も公吉の座っている堤防の上に乗りました。
「一緒に来て欲しいとこがあるんだ。」
「えー?」
そう言われ、訳の分からない顔で立ち上がった公吉の腕を掴み、禄郎は堤防から二人で地面へ飛び降りました。
「わっ!!何すんだよ…、えっ!!ここどこだ…?」
堤防から下の歩道に飛び降りたはずが、宙に浮かんでいて、海と堤防と地面が下に見えます。
「半分天上界。」
禄郎は答えました。
「…はあ?」
公吉は何がなんだかさっぱり理解出来ませんでした。
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