今、半分空の上にいるから

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今、半分空の上にいるから 海と霧と空 その1

2017-07-18 12:37:32 | 今、半分空の上にいるから①(完結)

 愛知県吉良町。

 半分天上界を通り抜けて来た禄郎は、堤防の上に座っている公吉の足元で、女の子二人が言い争っているのを見付けました。

 (あ、いたいた。)

 「それで?結局私達のどちらを選ぶの?」
 「いい加減はっきりしてくれない?」

 女の子二人に詰め寄られた公吉は、しばらく考えて言いました。
「うーん…。じゃあさあ、三人で付き合おうか。」

 「は?」
 「は?」

 (…おい。)
見ていた禄郎も心の中で突っ込みました。

 「俺さあ、今、特に誰かと付き合いたいとか、そう言うのないんだよね。」
公吉はニッコリと笑顔で答えました。

 「バカじゃん。」
 「最っ低!」

 そう吐き捨てて、女の子二人は帰って行きました。
 女の子二人が去った後、一人で堤防に座る公吉に、禄郎は声を掛けました。

 「こんにちは。この間はどうも。」

 「あ!この前、流夜のいとこと来てた、尾崎士郎を研究してる学生さん。まだこっちで調べてたの?」
公吉は禄郎に気付いて言いました。

 「あ、いや、尾崎士郎を専門に研究している訳じゃなくて。文学部じゃないし。ただの趣味で。
 …それよりも少し聞きたい事が。」

 「俺?尾崎士郎は地元の出身だけど、よく知らないよ。」

 「悪いけど、ちょっと立ってもらってもいい?」
そう言うと、禄郎も公吉の座っている堤防の上に乗りました。
「一緒に来て欲しいとこがあるんだ。」

 「えー?」

 そう言われ、訳の分からない顔で立ち上がった公吉の腕を掴み、禄郎は堤防から二人で地面へ飛び降りました。

 「わっ!!何すんだよ…、えっ!!ここどこだ…?」

 堤防から下の歩道に飛び降りたはずが、宙に浮かんでいて、海と堤防と地面が下に見えます。

 「半分天上界。」
禄郎は答えました。

 「…はあ?」
公吉は何がなんだかさっぱり理解出来ませんでした。


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