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ロドリックの「世界経済の政治的トリレンマ」仮説について拾い読み

2010-06-15 | Weblog
本日の日経の経済教室で庄司克宏慶應義塾大学教授が、ダニ・ロドリックの「世界経済の政治的トリレンマ」仮説を使ってユーロ圏経済の現状分析を論じています。参考になる記事ですので、まとめてみます。

ロドリックの「世界経済の政治的トリレンマ」仮説とは、「国際経済統合」、「国家主権」、「民主主義」の3つを同時に達成することはできない、とする説です。庄司教授によれば、この仮説のもとで考えられる選択肢は以下の3つです。

(1)国家主権を二の次にして「グローバルな連邦主義」の下で国際経済統合と民主主義を選択する。
(2)民主主義を二の次にして「黄金の拘束服」の下で国際経済統合と国家主権を両立させる。
(3)国際経済統合を二の次にして、国家主権と民主主義を維持する。

そして、現在EUが選択しようとしている道は(2)の路線であり、ギリシアに対しては財政健全化と国内改革を要求し、「他の加盟国への危機波及に備えて欧州安定化メカニズムの創設が決定され」、「安定成長協定の強化も検討されて」いるが、「少なくとも今のところ、ロドリクの仮説における”連邦主義”的解決へ進んでいるようには見えない」と結んでいます。

ロドリック自身もProject Syndicateにおいて、世界経済史を振り返りつつ、同種の議論を展開しています。ギリシア危機の前には、さらなる政治統合へ向けて順調に移行を進めているかに見えた欧州は、今や進むべき道を見失ったかのように見える、という評価を下しています。

ロドリックは6月9日にもProject Syndicateでこの問題について発言していますが、ここでは短期的な処方箋としてドイツの内需喚起政策と、EUBのインフレ・ターゲットの上方修正の必要性を訴えています。

なお、「世界経済の政治的トリレンマ」仮説の初出(?)と思われるのはこちら。EUの現状を見るうえでも有効なこの仮説は、本来それにとどまらない普遍性をもっています。例えば東アジアにこの仮説を適用したら、どうなるんでしょう?

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