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ドルリイ・レーン最後の事件

2007年06月20日 | 長編ミステリ

ドルリイ・レーン最後の事件

Drury Lane's Last Case (1933)


☆事件

サム元警視のもとを訪ねてきたのは、色眼鏡をかけ髭をまだらに染めた異様な風体の男だった。一通の封筒を預け男は消えたが、同じ頃博物館でシェイクスピアの稀覯本すり替え事件が起きる。サムの要請に応じ、名探偵ドルリイ・レーンが真相究明に乗り出すが……
シェイクスピア劇の元名優ドルリイ・レーンが、世界文学史を根底から覆す大事件の謎に挑む。X、Y、Zに続く四部作の掉尾を飾る巨匠の代表的傑作(ハヤカワ文庫『ドルリイ・レーン最後の事件』カバー紹介文より)。


☆登場人物リスト

サム・・・元警視。私立探偵
ペイシェンス・・・サムの娘
ジョージ・フィッシャー・・・観光バスの運転手
アロンソ・チョオト・・・ブリタニック博物館館長
ハムネット・セドラー・・・同新館長
ミック・ドノヒュー・・・同警備員
ゴードン・ロウ・・・シェイクスピア研究家
エイルズ・・・シェイクスピア研究者
マックスウェル・・・エイルズの使用人
リディア・サクソン・・・サクソン書庫所有者
クラブ・・・同司書
ジョー・ヴィラ・・・こそ泥
ドルリイ・レーン・・・元俳優。探偵
クェイシー・・・ドルリイ・レーンの使用人
フォルスタッフ・・・同執事
ドロミオ・・・同運転手



☆コメント

長年にわたり舞台の上でハムレットを演じつづけてきたドルリイ・レーン自身は、おおかたの人がハムレットに対して抱くイメージとは異なり、認識する人であると同時に行動する人であった。なぜなら彼はまぼろしのヴェールに包まれていたから。
名探偵ドルリイ・レーンの運命は、彼が関わった事件そのものにもまして数奇なものであった。彼はこの最後の事件において、劇的な退場を余儀なくされる。

すべては運命のなすがままだったのか?

運命・・・それは人間の意志あるところに立ち現れる。レーンは悲劇の主人公にふさわしく、おのれの意志を実現し、そして運命を受け入れる。
最後の事件はまさに『最後の悲劇』と呼ばれるにふさわしいものであった。

物語において作者は、本物の「神」でこそないが、いわゆる「神の猿」としてその作品世界の登場人物の運命を支配する立場にある。ドルリイ・レーンは『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』を通じて、時として悲劇の演出家のように振る舞い、超人的な活躍を見せてくれたが、この『最後の悲劇』では彼もまた作者に操られる「神の猿の猿」に過ぎなかったことが明らかにされるのである。

この『レーン最後の事件』を読んで、「これはもはやミステリではない。悲劇そのものだ」と言う人が現れてもおかしくない、鮮やかな幕切れである。

(yosshy)

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