歴程日誌 ー創造的無と統合的経験ー

Process Diary
Creative Nothingness & Integrative Experience

小鹿島裁判の不当なる判決

2005-10-25 |  宗教 Religion
韓国小鹿島更生園と台湾楽生院の入所者達の、ハンセン病補償法に基づく補償金の支払いを求める裁判の判決が、それぞれの入所者にたいして、全く対立するような形で、判決が出た。東京地裁は、二つのケースについて互いに矛盾した判決を下したのである。

小鹿島の場合楽生院の場合のどちらも、療養所の沿革と実態を述べる部分を除けば、原告側が提出した訴状の文面は、殆ど同一である。すなわち、請求の趣旨は同一、請求の原因も、「ハンセン病補償法の趣旨とその特徴」「本件取り消し原因」の部分は同一である。にもかかわらず、判決は正反対で、原告側は、小鹿島の場合は敗訴、楽生院の場合は勝訴であった。

読者は、各自、楽生院の判決要旨小鹿島の判決要旨を比較して読んで頂きたい。

楽生院のケースでは、判決文は明快であり、個人の人権を守るために、嘗ての日本の植民地に於けるらい療養所の人権侵害を補償するにあたり、人種や国籍の差別を立てずに平等の原則を貫いた判決として評価できる。

これに対して、小鹿島のケースでは、判決文の文体も徒に冗漫にして煩瑣、論旨不明瞭の典型的な官僚的悪文である。

小鹿島の判決文には、戦前に於ける「らい予防法」とそれに基づく人権侵害という視点が完全に欠落している。日本国家の人権侵害行為を、戦後のみに限定し、戦前のそれを無答責とする観点が前提されている点が、裁判官の歴史認識の欠如を物語る。彼等は、ハンセン病補償法が制定されるときに、旧植民地に於ける療養所のことは審議されていなかったと言う事実にあくまでも拘泥し、政府と国会の認識の浅さを逆用しつつ、三百代言的な論法をもって原告の訴えを斥けたのである。

責任は勿論、ハンセン病補償法を審議するときに、旧植民地の人々のケースを論じなかった国会、適切なる指示をだせなかった行政にもあるが、裁判官の見識を示した楽生院のケースとは異なり、小鹿島裁判の拙劣なる判決文を書いたものもまた、当然の事ながら、歴史と理性の審判を受けるであろう。
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包括的救済へ (T.Endo)
2005-11-05 12:05:21
11月5日の読売新聞記事速報

http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20051105it01.htm

によると、「厚生労働省は4日、韓国と台湾の原告らを包括的に救済する方針を固めた」ようです。この記事には、台湾訴訟については国側が上訴した上で示談するとも書いており、なお、良く分からないところもありますが、検証会議の報告の趣旨を尊重して、「包括救済」の方針を打ち出したのは一歩前進のようです。
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控訴断念、告示改正への訴えをしよう (田中)
2005-11-05 18:45:44
読売新聞(online)

http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20051105it01.htm

を読みました。



控訴後和解という方針を採用するところが、血の通わぬ官僚的思考法が残っています。原告の恒例であることを配慮すべきです。台湾楽生院判決については控訴断念、韓国ソロクト判決については告示改正という選択をするように働きかけましょう。



私が参加している市民学会の宗教部会MLに、弁護団からの次のメッセージが届けられました。この週末から月曜日にかけて、みなさんの声を再度、メール、Faxで首相官邸に届けてほしいとの呼びかけです。



「声」の送り先



官邸→http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html

FAX 03-3581-3883

〒100-0014 千代田区永田町2-3-1 首相官邸

内閣総理大臣 小泉純一郎 殿



厚生労働省→https://www-secure.mhlw.go.jp/getmail/getmail.html

FAX 03-3595-2020

メール  www-admin@mhlw.go.jp

〒100-0013 千代田区霞ヶ関1-2-1 厚生労働省

厚生労働大臣 尾辻秀久 殿



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声明



2005(平成17)年11月5日



小鹿島更生園・台湾楽生院補償請求弁護団

代表 国宗直子



東京地方裁判所民事第38部が言渡したハンセン病補償金不支給処分の取り消しを命じた判決の控訴期限が11月8日に迫っている。



一部報道機関では、厚生労働省は、控訴を断念すれば、台湾の入所者にハンセン病補償法に基づき、最低800万円の補償金を支払うことになり、補償金額や補償対象者の認定方法に検討の余地がなくなる等との理由から、控訴をした上で和解を目指す方針であると報道されている。



しかし、厚生労働省のかかる方針は、以下の理由から断じて受け入れることはできない。



第1に、原告らの早期救済がはかられない。原告らの年齢は平均81歳を超えており、小鹿島更生園の入所者だけでも、補償請求後、既に21人が死亡し、本年8月から現在に至るまで3ヶ月間の死亡者は5名を数えている。控訴して和解協議により解決するという枠組みでは、解決が大幅に遅延し、生きて解決を得たいと願う原告らの悲痛な願いを踏みにじることになる。



第2に、原告らの平等な救済が実現できない。原告らはわが国の隔離政策の被害者としてわが国のハンセン病患者と同等もしくはそれ以上に過酷な被害を受けてきたものである。この点は、厚生労働省自身が救済の基本的方針の根拠としてあげているハンセン病検証会議最終報告書に明かである。従って、補償法の趣旨や平等原則に照らし、日本国内の療養所の入所者と補償金額の格差をつけることはできない。控訴審におけ

る和解により金額に格差を設けることは、新たな差別を生むことに他ならず、補償金額の見直しを目的とする控訴は断じて認めることはできない。



第3に、補償金支給に当たっての認定方法の問題は、支給審査の段階における技術的な問題にすぎず、必要とあれば別途ルールを策定すれば足りるのであり、解決の枠組み自体を左右するような問題ではなく、到底控訴をする理由とはなりえない。控訴断念なくして本問題の救済はない。



原告らの請求を認容した民事38部の判決はもとより、同3部の判決も現行の補償法下で告示に占領下の療養所を含めて規定することは可能であるとの解釈を示している。



政府は、控訴を断念して告示改正による早期の平等救済をはかるべきである。今こそ政治的な決断が求められている。



我々は、控訴期限ぎりぎりまで控訴断念を求めて全力で闘い抜く決意である。以上

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首相官邸への投稿など (T. Endo)
2005-11-05 19:43:21
ソロクト判決に告示改正、楽判決には控訴断念を求めるという趣旨の声明を、上の弁護団の声明を参考にしつつ厚生労働省と首相官邸に送りました。
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