弁護士川原俊明のブログ

川原総合法律事務所の弁護士活動日記

離婚年金分割の実態

2010-04-04 15:57:33 | 日記・コラム
平成19年4月施行、平成20年4月施行、と2回に分けてなされた年金法改正。
 簡単に言えば、夫婦でいた期間に、掛け続けてきた厚生年金記録を、離婚の際に分けましょう、というものです。
 サラリーマンは、将来の年金受領を見越して、毎月の給与から、厚生年金負担料を源泉徴収されています。事業主が、負担料の半額を負担しているので、源泉されるのは、半額相当分です。
 給与からの天引きですから、勤務者であるサラリーマンの名前で年金負担料を納めることになります。一方配偶者Aさんが得た給与は、他方配偶者Bさんの内助の功を考慮するとき、夫婦の共同収入と見るべきです。
ですから、他方配偶者Bさん(3号被保険者 サラリーマンつまり2号被保険者の配偶者のこと)にも、将来の年金受領にあたって、一方配偶者Aさん名義の年金記録を分け合うのは、いわば当然、ともいえるのです。

改正前は、どんなに婚姻期間が長くとも、どんなに夫Aさんが高収入でも、離婚すれば、夫Aさん名義の厚生年金(標準報酬部分)は、全額、夫Aさんのものでした。
離婚した妻Bさんには、夫Aさん名義の厚生年金を分けてもらうことがなかったのです。

高齢化社会のもとでは、離婚配偶者の生活を維持するため、当然、年金分割による生活財源の確保が必要でしょう。

平成19年4月施行の年金改正法は、離婚配偶者に年金分割による生活財源確保の道を開きました。
しかし、この法律には、まだまだ問題が残されています。

今でも、離婚によって、当然に、年金が分割されるわけではありません。
あくまで、「分割請求」という意思表示を必要とし、「5割を上限」とするものです。
しかも、3号被保険者という立場の配偶者だけが、改正法の恩恵を受けます。

しかし、平成19年4月法律施行だから、その4月1日以降に離婚した人が対象でなければならない、というのは、理論的に、当然の結論ではないのです。
                          (現行の法律ではできませんが)
今回の改正法は、施行日以前に離婚した元配偶者の立場にある人は、全く保護の対象外となっています。
離婚配偶者の生活保護という観点から考えれば、法律施行日以降の離婚者だけに保護を限る必要はないでしょう。
夫婦平等、夫婦共有財産の認識の深まりを考えれば、この法律をさらに改正し、平成19年4月1日以前の離婚配偶者にも、当然のように、年金記録の分割をすべきでしょう。
さらにいえば、3号被保険者という立場以外の離婚配偶者の生活保護も、私たちは真剣に考えるべきです。



弁護士法人 川原総合法律事務所   
弁護士 川 原 俊 明 
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