時々行く『テアトル徳山』のHPでちょっと興味をもったので久しぶりに映画に行くことにしました。
別に面倒で行かなかったのではなくて、土曜日日曜日のたびにいろんな野暮用が入ってしまい、しばらく映画館に行かずじまいでした。
HPを見ると
「人生でやり残したこと、ありませんか?
往年のジャズの名曲と共に、希望に満ちたラストステージが今、幕をあける。」
よく見ずに、JAZZが画面にあふれている映画ならぜひ劇場で観たいと思いました。
渡辺貞夫も出演するということで、思い切りSWINGできるものと期待していました。
映画が始まると突然、文字が画面いっぱいにあらわれて『ハンセン氏病』の説明が始まります。
「えー!音楽映画じゃなかったの?」と動揺しました。
島の岬で一人トランペットを吹く人の後ろ姿が印象的なオープニングです。
場面変わって、ミニスカートの足のアップから入って、階段を勢いよく走っていく女子大生らしき女の子の目的地は大学のJAZZ研究会。
そこでは、トランペットをリーダーとするバンドが演奏しています。
トランペットを吹くのはこれから重要な役回りを演じる大学生の貴島大翔(鈴木亮平)です。
そこからパズルを1枚1枚はめていくように、映画の全体像を見せていきます。
少しまどろっこしいような気もします。
大翔が車(赤いチェロキー)で家に帰ると、若い女性が家を訪ねていて、父良雄(陣内孝則)母律子(古手川祐子)が深刻な顔をしています。
父・良雄が重い口を開きます。
亡くなったと伝えていた祖父は生きていて、ハンセン氏病療養所から50年ぶりに戻るから、我が家へ引き取ることにすると説明します。
大翔は大学の図書館でハンセン氏病のことを調べます。
若者の正義感からすぐに祖父を迎えに行くと宣言します。
ここからこの映画の主人公である貴島健三郎(財津一郎)が登場してきます。
健三郎は一時帰宅ということで家に帰ってきます。
大翔には、生まれて初めて会う祖父・健三郎との接し方がわかりません。
頑固一徹。会話もありません。
ところが何の気なしに聴かせた一枚のレコードに、健三郎の表情が一転します。
それは、健三郎がかつて所属していたCOOL JAZZ QUINTETTEのレコードでした。
しかし、健三郎は多くを語りません。
健三郎を迎えた家庭はぎくしゃくした関係になります。
健三郎は一時帰宅の目的は他の所にありました。
彼の願いはかつてのバンド仲間たちに何も言えないまま姿を消したあの日の許しを請うこと。
そして、あの日果たすはずだった、憧れのジャズクラブ“ソネ”でのセッションを実現させることでした。
そこから、健三郎と、大翔(ひろと)とのロードムービーが始まります。
一番好きなシーンは、車がこわれて二人坂道を歩くシーンです。
まだまだストーリーを語りたいところですが、これ以上語ると映画を観た時に楽しみが半減してしまうのでここらへんでやめます。
財津一郎の演技が迫真に迫っています。頑固で偏屈。50年間心に抱えてきた想いを果たそうと、
思うように動かなくなった手に杖を握らせ旅する姿は、家族や仲間たちの心を動かしていきます。
映画全体のテーマは“出会ってすぐに旅に出る祖父と孫”を軸にした"家族の絆"であり、
何十年も立っても忘れられない"友との絆"をテーマにしていると考えます。
でも、その背景にハンセン氏病という重たいテーマが横たわっているので、そちらのほうへも気持ちを向けてしまいます。
健三郎の登場によって結婚を間近に控えた大翔の姉は婚約者と別れることになります。
大翔も恋人に祖父のことを話した時からぎくしゃくし始めます。
今も現存する差別の問題も見え隠れしながら、そのことはさらっとかわします。
啓発映画のような臭いも感じながら、観てしまうのは仕方ないことかもしれません。
大翔役の鈴木亮平は、なかなかいい心の揺れを表現していたと思います。
2人を見守る女性看護士と健三郎のかつての恋人という2役に挑戦したのは、
映画『252 -生存者あり-』で注目され、日本で本格的に女優活動を開始したMINJIです。
さらに、往年のジャズバンド「COOL JAZZ QUINTETTE」のメンバーに、藤村俊二、クレイジーキャッツのベーシスト犬塚弘、
歌手で一世を風靡した佐川満男らが、味のある演技で脇を固めます。
渡辺貞夫がライブハウスの店長として登場して流ちょうなサックスを聞かせてくれるのはご愛敬ということで。