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2014年2月3日
読売新聞
「10年かかる」 橋下氏、焦り?
橋下徹大阪市長(大阪維新の会代表)が3日午後、出直し市長選に踏み切ることを正式表明する。橋下氏は、選挙の目的を「大阪都構想を進めるため」と説明するが、直接の引き金となったのは、大阪市を複数の特別区に分ける「区割り」について、現在の4案から1案に絞り込むことを大阪府議や市議らに拒否されたことだ。なぜ、区割りが絞り込めないと、出直し選になってしまうのか。
◆1000ページの資料
「こんなに分厚い資料、読んでくれる市民が本当にいるんでしょうか」。大阪市職員は、昨年8月に府市が公表した都構想の制度設計案を前につぶやいた。
橋下氏や松井一郎大阪府知事(維新幹事長)が掲げる大阪都構想は、市を5か7の特別区に分割したうえで、府と統合再編。経済政策などの広域行政は府に代わってできる「都」が、身近な住民サービスは特別区が担う構想だ。市と府の役割分担や権限・財源を大きく変えようとしているため、制度設計案は極めて複雑な内容になった。
さらに、橋下、松井両氏は、市の2大拠点のキタ(北区)とミナミ(中央区)を同じ特別区にするかどうかなどにより計4パターンの区割りを考案。職員体制やコスト、統合効果額などを案ごとに分析しているため、制度設計案の資料は約1000ページに上った。
この資料が公表されると、両氏と府市議計20人で構成する法定協議会では、維新以外の野党から効果額や特別区間の財政格差などへの疑問、異論が噴出。当初、橋下氏らは昨年10月頃には区名などの具体論に入りたかったが、議論は遅々として進まない状況になった。
◆牛歩戦術
「ゆっくりやれば、都構想はつぶせる」
都構想に反対している自民党市議はそう明かす。野党側には来年春の統一地方選まで議論を遅らせれば、都構想は頓挫するという計算がある。
維新は府市両議会で少数与党。都構想を実現するには、法定協や両議会で賛成議決を得たうえで、大阪市民による住民投票を実施する必要がある。このまま議論が進まず、住民投票が統一選後にずれ込んだ場合、人気に陰りが出ている維新が統一選で議席を大幅に減らす可能性もある。そうなれば、維新は法定協での主導権を失い、都構想の議論が中止となる、というのが理由だ。
焦った橋下、松井両氏は、時間も手間もかかる4案同時並行の議論をやめ、市を五つの特別区に分割し、キタとミナミは同じ区に入れない案への絞り込みを提案。都構想への賛否を明らかにしていない公明に協力を求めてきたが、1月31日の法定協では、公明を含めた野党4会派がすべて反対した。橋下氏は「このままでは10年かかる。議会は非常識だ」と批判し、出直し選を決めた。
◆勝っても変わらない
橋下氏は、今回の出直し選で再選されれば「民意の後押しという大義を得た」として、法定協で絞り込みを行い、両議会での議決や住民投票につなげたい考え。しかし、自民、民主などは対立候補を擁立しない構えで、橋下氏が無投票再選や有力候補がいない中で勝利しても「民意を得たとは言えない」と主張する方針だ。
また、橋下氏が再選されて市長職に戻ってきたとしても、議会構成は変わらず、都構想の議論が進む可能性は低い。選挙期間にあたる2~3月は市の新年度予算編成時期で、市政の停滞は避けられない。