● 党首会談決裂 国会冒頭から審議拒否も 攻めきれる?自公正念場
2012年10月20日(土)08:02
(産経新聞)
■「開会までに解散言質」作戦困難
民主、自民、公明の3党首会談が決裂に終わったことで、自公両党は野田佳彦首相に猛反発、対決姿勢を強めている。29日に召集される臨時国会では冒頭から審議拒否も辞さない構えだ。ただ、民主党側が自公両党の求める年内解散には応じないことが明白となったなかで、いかに首相を追い詰めていけるか。就任間もない安倍晋三総裁の力量がさっそく試されることになりそうだ。(岡田浩明)
「最近、ドジョウの入った柳川鍋は食べたくないねえと。実にそういう感じだ」
3党首会談に同席した自民党の石破茂幹事長は会談後のTBS番組の収録で、こう述べ、解散について「ゼロ回答」だった首相をあてこすった。怒りの収まらない石破氏はこうも続けた。
「野田さんはそんな人だとは思っていなかった。はっきりいってこれほど腹を立てたのは初めてのような気がする」
約40分の3党首会談。安倍氏と公明党の山口那津男代表は、首相が8月に約束した「近いうち」解散に関する新提案、いわば年内解散の確約を再三迫ったものの、首相は解散時期の明示を拒み続けた。
結局、安倍氏らは「これ以上議論することはできない」と席を立った。
石破氏は記者団に「毅然(きぜん)と対応する。(臨時国会召集の)29日までこのまま過ぎることはあってはならない」と強調した。
首相が早期解散を確約しなければ審議に応じられないとの強硬姿勢を示すことで、開会までに首相から解散の言質を引き出す作戦だ。だが、この日の発言からみても、首相がすんなり自民党の要求に応じるとは考えられない。
国会冒頭から審議拒否、あるいは内閣不信任案を提出しても、解散に追い込めるかは不透明だ。参院ではすでに先の通常国会で首相に対する問責決議を可決しているが、首相には決議を尊重する気はさらさらないようだ。
審議拒否をした場合、与党側が「自民党には経済対策に本気で取り組む気がない」と非難してくることが予想される。世論の批判も高まる可能性がある。
解散引き延ばし戦術ではもはや古強者(ふるつわもの)の「野田・輿石コンビ」に対抗するには、自公両党が今後も足並みをそろえて対応していけるかがカギとなりそうだ。
● 3党党首会談決裂、解散示さず 「空手形」ツケ重く
2012年10月20日(土)08:02
(産経新聞)
■「私を信じてほしい」野田首相/「誠意のなさに怒り」安倍総裁/「国民をバカにした」山口代表
野田佳彦首相が「近いうち解散」の約束を履行する気がないことが明白となった。18日の民主、自民、公明3党の幹事長会談で、民主党の輿石東氏が解散時期に関し、首相から「新提案」があるとし、自公両党に期待を抱かせただけにその失望は大きい。内閣支持率が低迷しているうえ、田中慶秋法相の辞任が避けられなくなったことで解散どころではないというのが首相の本音のようだ。だが、公党との約束を破ったツケが首相に跳ね返ってくるのは確実だ。
特例公債法案の未成立で平成24年度予算の約4割の財源にめどが立たない現状を打開するには、野党の協力が不可欠だ。そのためには解散時期を明確にする必要があるのは火を見るよりも明らかだが首相は自公両党に共同責任を負わせようという姿勢に終始した。
「予算と一体で特例公債法案を処理するルールを作りましょう。来年の通常国会でそういう法案を提出するという付則を(特例公債法案に)入れてはどうか」
首相が「来年」に言及すると、公明党の山口那津男代表がすかさず「谷垣禎一自民党前総裁はあなたが社会保障・税一体改革関連法を成就したことでここにいられなくなった。谷垣氏との約束があるのでしょう」と詰め寄った。
不意を突かれた首相に、自民党の安倍晋三総裁がたたみかけた。
「あなたは谷垣さんに『来年の予算編成をしない』と言った。私は引き継ぎを受けている」
突然の指摘に、首相は「言った、言わないの話になるから、言わない」「そういう認識はない」と、しどろもどろで答えた。
安倍、山口両氏は会談に先立ちこの「密約の暴露」作戦を周到に打ち合わせていた。「近いうち解散」をほごにしようという首相の思惑を打ち砕く狙いがあった。
それでも、首相は会談に同席した輿石氏と事前に確認した通り、解散時期の確約を拒み続けた。
「だらだらと政権の延命を図るつもりはない。『近いうち』について、表現のギリギリまで申し上げたが」
首相は会談後、記者団にこう述べた。「表現のギリギリ」とは特例公債法案処理のルール作り、「一票の格差」是正をめぐる幹事長間協議、社会保障制度改革国民会議の始動の3条件が整った後の解散を示唆したことだ。
首相が延々と3条件を説明するのを、安倍、山口両氏は白けた表情で聞いていた。先の通常国会で特例公債法案、民主党提出の衆院制度改革関連法案の衆院採決を強行し廃案に追い込んだ責任は「野田-輿石」コンビにあるからだ。
格差是正を呼びかけたことも自公には解散先送りの策略と映る。衆院選挙区画定審議会で新たな区割りを策定するには、法案成立から最低でも数カ月かかるとされる。実際、樽床伸二総務相は19日の記者会見で新たな区割りに基づいて次期衆院選を実施すべきだとの考えを強調した。
「新たな提案といっているが、党首会談をやることが、新たな提案なんだ」
輿石氏は会談前、党役員にこう打ち明けた。そこには首相が「政治生命を懸ける」とした一体改革関連法に賛成してくれた自公両党への誠意はみじんも感じられなかった。(加納宏幸)