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「理想的な淡水水槽」 第6版序文 その1


「理想的な淡水水槽」第6版序文 その1


戦後の水槽の歴史は、本書と密接に関連している。
本書の発刊は、水槽の変革が起こり始めた1960年代には既に計画されていた。

水槽の変革は1950年代から1960年代にかけて人々に気づかれることなく生じていたが、照明の導入がまさに革命の時だったとも言える。照明の光エネルギー効果によって、水槽内の植物が育ち始めたのだ。
光は水槽内のあらゆる生物の働きを刺激し、連鎖反応を呼び起こした。

鉄分はかつて植物の栄養素として知られていなかったが、水槽の中で魔法のような力を持つようになった。炭酸同化作用(光合成)を行って成長する植物には栄養を与えることが重要で、とりわけCO2(二酸化炭素)・鉄分・トレーサー元素の添加と、安定したpH(水素イオン濃度)値と、植物の栄養となる豊かな土壌が必要である。そしてこれらは互いに定量的に適切な数値でなければならない。これよって初めて水草は、水槽内で需要の多い酸素を魚や分解バクテリアに供給することができる。水槽を上手に設置し、上記の有機物を安定させるためには、適切な水の動きと目的に見合ったろ過が必要である。

1960年代には効果的な照明や適切な水の流れを作ることが技術的に可能になったため、機能的かつ効果の高い水槽の維持管理ができるようになった。

しかしそれにもかかわらず、多くのアクアリアナー(水槽の管理者)は間違ったことを行っていた。以前にも増して、自然の法則や水中における生物の生活条件を無視するようになり、魚や植物に多大な被害を与えたのである。

当時のアクアリアナーには自然界における光エネルギーと栄養素との関係についての知識が欠けていたため、pH値の変化や窒素の循環、栄養素の構造内での反応などの化学的な出来事は、結果として想像上の論争を引き起こしただけだった。水槽内にはびこる藻/コケや、肥料を与えていても起こる水草の成長不良、魚の病気による死亡などは、知識が欠けていた事の現れである。

その結果として多くのアクアリアナーは挫折感を味わい、希望にあふれる素敵な水槽作りをやめて水槽を地下室やゴミ箱に押しやってしまったのである。

当時は、どうすれば近代的な技術を駆使して正しく水槽を維持できるのかについての知識が不足していた。

本書の著者たちはこれらの事態に、一つの使命を見出したのである。自然を研究し、魚や植物が生まれ育った湖・沼・川に幾度も出かけて、広範囲にわたる水や土壌を現場で、また研究所で分析した。このようにして得られた膨大な量の基礎データが、水槽内において魚や植物たちが見せる次から次へと変化する性質を理解するのに役立っている。そしてこれらの実験による結果から、水槽学を次第に発展させていったのである。


※「理想的な淡水水槽」第6版序文 その2へ続く



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