デュプラメソッド「理想的な淡水水槽」
9.2.2. 水槽に対する結論
天然河川の水の構成要素をそっくり真似た「模造品」を使用することで、水槽内に起こる様々な問題が解決できると信じることは致命的な誤りである。技術的には「クリプトコリネが自生している水」を作り出すことはできる。蒸留水や若干の塩化物を含む水を用意し、そこに様々な物質を混入させて天然の小川を流れる水を再現することは現代の技術をもってすればたやすいことだ。
ここでもう少し考えてみよう。そのような模造水を用いた水槽では何が起こるだろうか。いまだに「クリプトコリネが自生している水」の成分を人為的に完璧に模倣した水を使用すれば、水草はそれ相応の成長をすると信じている人が実際にその水を使用した際には、十中八九落胆することになるだろう。結果はまさに悲劇である。水草は病気になり、枯死するのだから。
この悲劇の原因については簡単に解説することができる。いくら自然下でクリプトコリネが育つ水を模倣したところで、元来栄養分に乏しい水では、水草がその栄養分の大部分をすぐに消費してしまい、栄養分はをあっという間に枯渇する。さらにもう一つの問題は水草を取り巻く環境にある。流れのある川では、水草が必要とする栄養素が常に補給されている。一方水槽は、流れのある川と比較すると、ごくわずかな限られた流れしか存在しない。しかし環境の違いに関わらず、植物を支配しているのは成長のために課せられた自然法則であり、この法則に従うには水槽内においても自然下と同様の条件が必要なのである。
これらの事実によって以下のことがわかるだろう。水草の繁茂する理想的な水槽を維持するにあたっては、アクアリアナーは水草の成長に必要なすべての栄養素を水交換などによって最適な分量で常に供給し、なおかつ必要とされる栄養素に1つの欠落もないようにしなければならないのだ。水槽内において栄養素の供給に不足が生じるということは、水草の損傷あるいは死を意味する。
我々がこのテーマを実証することができたのは、いわゆる「リービヒの最小律」(9.3.2. 参照)に化学的な根拠があるからである。この法則によれば植物の成長は、すべての栄養素がそれぞれ植物が必要とする最低限の量以上に確保されていなければならない。つまり植物を取り巻く環境に突然鉄分の不足が起こった場合、その他の栄養素を最適な分量与えても何のメリットもないのである。そして面白くないことに、光の量と関連する二酸化炭素(CO2)供給の効果によって、葉の黄色化を防ぐ鉄分はすぐに沈殿してしまうのだ。
そして水草は栄養不足によって光合成や成長を停止し、水槽内の魚の呼吸や成長に必要不可欠な酸素を生産することさえこともやめてしまうのだ。
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