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「理想的な淡水水槽」 9.3.2. それぞれの水草に適した肥料

デュプラメソッド「理想的な淡水水槽」

9.3.2. それぞれの水草に適した肥料


「理想的な水槽」に使用する水草肥料は、この9章で述べてきた必要条件をすべて満たしていなければならないだけでなく、水草の原産地の水質調査に基づいたものである必要がある。熱帯魚・水草飼育のための研究という制限下ではあるが、実際に水草を用いて我々が行った一連の大規模な実験結果に基づいて理想的な水草肥料が作られた。栄養素の性質と構成要素を段階別に分けて試験用の水草の育成状況を何週間にも渡って記録し、さらに水草の重量や成長スピードなどを測定した。こうして、水草にとって最適な育成方法が完成したのである。

このようにして生み出された水草専用肥料の使用は、人工的な生態系の中で育成される水草にとって最適な生存条件を整えるための重要な要素となる。アクアリアナーの水草用肥料の品質に対する要求は、水草に対して完全な環境を提供するというだけでなく、別の効能によってより満たされる。

我々は早い段階から鉄、マンガン、その他のトレーサー元素群が水中ですぐに溶解することを指摘してきた。これらは酸素がある水中においては沈殿し、水草の栄養素として利用される。水草はこれらの栄養素を、水に溶けた状態で葉からのみ吸収する。熱帯の小川では、永遠に湧き出す「栄養素の泉」によって栄養素が供給され、水草にとって非常に重大な危機である栄養素の欠乏という事態が回避されている。沈殿し水草によって使い尽くされた栄養素に代わり、栄養素の泉が継続的に栄養素を補給し続けるのだ。

水槽内においてこの役割を果たすのが施肥である。つまり施肥は化学的な「トリック」を利用して栄養素を補給しているのである。化学的物質の中でも特定の元素は結合や防護が強固で、酸素を寄せ付けないという性質を持っている。この性質により酸化し、沈殿することを回避しているのだ。これらの物質をキレートと呼ぶ。

水槽への施肥の際に栄養素の運搬手段として特に頻繁に用いられるのがエチレンのディニトリロテトラ酢酸、通称EDTAである。水草はEDTAを用いて組織化された栄養素群を吸収し、その中で結合した栄養素(特に鉄)を取り出して利用できる状態にする。理想的な水草肥料とは、計算された適切な処方量が確立しており、なおかつ繰り返し行われた実験データに基づく組み合わせがなされた様々なキレートを含むものである。

質を落とすことなく長期間継続して行う必要がある水草への施肥を確実に実行するために、水槽セット時および水交換時に水量に応じて適切な量を添加することが重要だ。規定に従った適切な水交換は、好ましくない栄養素が水槽内に蓄積するのを防ぐだけでなく、魚や水草が新陳代謝の際に水中に放出する老廃物を取り除く効果もある。



写真解説
水槽内でも「リービヒの最小律」は適用され、水草はすべての栄養素が正しい割合で水中に含まれている場合のみ成長するのである。これは我々が行った実験によって証明することができる。


実験
条件を変えてカボンバ(Cabomba aquatica)とハイグロフィラ(Hygrophila polysperma)の成長比較を行った。

左から右に下記の条件で育成を行った。
a) 添加物なし
b) 二酸化炭素(CO2)を添加
c) 二酸化炭素+肥料を添加
d) 肥料を添加

3週間後写真下段の状態となった。
a) 水草全体が黄白色になり、部分的に枯れていた。
b) 水草は黄白色だが、成長は良好であった。
c) 濃い緑色で健康的。
d) 丈は短いが濃い緑色で健康に見える。




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