デュプラメソッド「理想的な淡水水槽」
10. 水草 後編
※前編より続く
さらに、もう一度はっきりと述べておかなければならないことがある。これは今までの我々の経験から指摘できることだが、自然のビオトープの化学的データを直接水槽に移行するのは不可能だということだ。水槽の人工的構造とでも言うべきものがこの要求を妨害するのだ。水槽を裏返したり回転させたりといったことは簡単にできるが、水槽とはそもそも人工的に作られたビオトープに過ぎないのである。
自然状態以外で得られらたデータは、実際に使用可能な他の水槽に置き換えるというような実験に対しては基本的に有効である。しかしたとえば、極端に塩分の少ない熱帯河川、特にpHの非常に低いブラックウォーターを水槽内にそっくり再現するのは不可能である。熱帯河川の水質に近づけるために水槽内の酸素濃度を減らすという気の遠くなるようなアイデアも存在するが、我々はこの章で引き続き酸素についての重要な事項について述べる。熱帯の河川のデータをそのまま水槽に写し取ることはできないが、熱帯の河川について学んで得た知識は「理想的な水槽」の設置・維持に生かすことができるのである。
ここで述べてきたことの結論は、水槽にプラスチックでできた水草を使用することが、手の施しようがないほど大きな過ちであるということである。プラスチックの水草で装飾された水槽で生きていかなければならない魚は、我々が本書の10.1.1.から10.4.3.の章で述べる、本物の生きた水草から享受する利益をすべて失うことになるのだ。偽の水草だけでなく、時としてプラスチックの潜水夫や沈没船などのくだらないおもちゃを水槽に入れるアクアリアナーがいる。こういう人たちは、いっそのことプラスチック製の魚を飼育すべきだと我々は考えている。必要であればそれが動くこともできるようにモーターでも取り付けて。
「理想的な水槽」に求められる魚と水草の良好な組み合わせを作り上げるには、双方が快適に暮らすことができるような環境を整えなければならない。水槽内において魚と水草は、敵や競争相手などではなく、互いの生存要求を理想的に補い合うパートナーなのである。
クリプトコリネ・ベケッティ
(Cryptocoryne beckettii)
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