謎の日常

 「観光」に”感動”などといった余計な”感情”は必要ない・・・
 ただ”事を終わらす”とだけ考えれば良い・・・

ボンベイ・サファリ(ムンバイ・インド)

2007-03-27 18:40:39 | 2ndミッション 中東:南アジア
2007.03.27

 ここ数日間は実に慌しかった…
 カジュラホで少し休んだのを最後に後は超特急の旅...

 スケジュールはこんな感じだった

 3.19:カジュラホ発・夜行のボロバスでボーパールへ
 3.20:ボーパール着、サーンチ(仏塔が世界遺産)へここから往復し、そのままジャルガオンへ
 3.21:ジャルガオンを早朝発、アジャンター(石窟寺院が世界遺産)を見学してアウランガバードへ抜ける
 3.22:早朝ホテルを出てダウラターバード要塞・エローラ(石窟寺院が世界遺産)・市内観光
 3.23:アウランガバードを出発してシルディーへ
 3.24:シルディーを出発してムンバイへ

 これらを日中は気温30度を超える中でこなしていったのである。

 ここまで急いでいるのには当然訳がある

 インドのビザを応対が良かったからといって11月にブルガリアのソフィアで取得していたために、5月15日にはインドビザが切れてしまうからなのである...



 ムンバイ到着の翌日(3月25日)は早速南端の街のトリバンドラムへ行く列車のチケットを購入し、エレファンタ島(石窟寺院が世界遺産)への日帰り観光をし、そして市内観光をしてからおまけに「シティーナイトバスツアー(市内の名所を2回オープンの観光バスで1時間ぐらい走るもの)」までとったので虫宿に帰り着いたころには22時を過ぎていた...

 ムンバイでもまだスピードは落とせなかった。

 結局夜、またしても100箇所以上は蚤ダニ虱の3重奏に苦しめられたので、翌日日中殆ど出払うシティーツアーをとっていたのにも関わらず、ホテルを移ることにした。




 3月26日

 朝0800頃にホテルをチェックアウト、私のバックはキャスター付きだがそれもボーパールで片輪壊れてしまっていたために最早キャスターの利点は殆どなくなっていた...

 タクシーを取ろうと値段を聞いてみると毎回私の知っている相場の倍額を言ってきて気に入らない...

 結局バックを引きずりながら30分、昨日見当を付けていたインド門付近の中級ホテルへ行く、レセプションが昨日聞いていた値段と違う値段を提示してきたので交渉して値下げをする。それでも「375ルピー(約1050円)」もしてシャワートイレは別だった...デリーや他の都市ならこの値段でダブル、シャワー、トイレ、TV付は間違いなく取れるのに...ムンバイは高い都市だ...



 今日の予定は昨日の段階で既に決まっていた。
 
 シティーバスツアーを申し込んでいたのだ

 値段は大体どこの会社でも150ルピー(約420円)で一日かけて市内をバスで回るものである...

 時間のない中で効率的に観光しようと思ったら悪くはない選択だろう...

 そもそも私は「首都狙撃者」であり、デリーを終えた今、インドに関してはぶっちゃけ「全てが消化試合」なのである。
 ただ折角いったのに何も見ないのは嫌だし、何か見逃すもの嫌だからこうして手を抜きながら観光しているのである...。それにインドの観光バスは基本的にリーズナブルだ。

 ちょっと気になっているのはデリーなどでは政府(又は州)が運営するツアーバスがあるのだが、ムンバイでプライベートの会社しかツアーをやっていないことだ。政府なら(インドだから完全とは言えないまでも)まあ安心だろうがプライベートでは何か仕掛けてくるかもしれないからだ...

 熟考に熟考を重ねてツアー会社を選択する。

 結局、私の選択したのは

 「ボンベイ(ムンバイの旧称)・サファリ」

 だ。

 色々な会社を比較しようと思ってエレファンタ島からムンバイのインド門へ戻ってきたときに、最初に声をかけられたからだ...

 ツアーの最初の地点はインド門で最後もここに帰ってくるというのも気に入った理由だ。

 それに「ボンベイ・サファリ」という名称...コンクリートジャングル、インド最大の都市ムンバイを見て回るのに臨場感をそそる名前ではないか...!!

 このこともあったのでチャトラバート・シバージー駅周辺の虫宿をやめてインド門付近に宿を移る決心をしたのだった...



 約束の時間にインド門へ行く、ツアーの最初の地点はインド門、ここでグループに合流する。

 ボンベイサファリのバス



 最初に料金の話で入場料とガイド料を請求されたが、入場料は通常ツアー代に含まれていないがガイド代は込みの筈だと抗議して、ガイド代は無しにする。実際の所ガイド代としては「10ルピー(約28円)」なので払っても痛くも痒くもないのだが、最初に込みといってきて後で別という遣り口が気に入らなかった...

 

 ツアーの内容自体は悪くはなかった

 インドではあまり想像できないショッピングアーケードにいったり、ボートで軽く湾を周遊してムンバイの景色を海上から眺めたり...
 
インド離れしたショッピングアーケードの入口


ボートトリップのボート


洋上からのムンバイの景色



 それにあまり期待していなかったが「サイエンスミュージアム」は面白い見物だった。自然、科学、人体、宇宙等のジャンル別に子供も大人も楽しめるつくりだった...

科学博物館、自転車をこぐときの骨格の動きをシミュレートしている


科学博物館・「私がママよ」というタイトルだったが何がしたかったのかは意味不明



 楽しく時間は流れ、最後は郊外のヒンズー寺院、それも中の写真撮影(全てではないが)が出来る場所を訪れ、ビーチでまったりとくつろぐ...

訪れたヒンズー寺院


ご本尊は撮影可能!カラフルでナイスです


ツアー最後の場所、ビーチ



 150ルピーのツアーとしては満足だった。それに「歩き方」にはあまりムンバイ情報は載っていなかったので、こうしたツアーを選択した自分の正しさも十分に証明できた筈だ...





 このままで終わっていれば...





 時刻は1800時頃、

 戻るのにバスに乗ろうとするとスタッフとガイドが私にバスを移るように指示をする...


 よくない雲行きだ...


 
 私が「インド門」

 というと

 「こっちだ...」

 とバスを乗換えるように言われる...

乗換えさせられたバス



 大体の所は想像が付く、今いる場所には私以外のツアー会社のバスも数台止まっているのでツアー会社同士融通して戻り先が同じ人間を固めたがっているのだ...


 「インド門」へ戻れないと面倒なので2度3度念押しする、乗換えるバスのスタッフにも「インド門か?」と聞いて確認する。彼らは「インド門」だと答えているもののなんともいえないやな時間帯だ...


 バスは出発し、そして

 「私が確認したはずのスタッフは全て消え去る...」

 「...」

 「うーん、バスの中にまでいっていかにもこのバスのスタッフですという顔をしていた奴等は誰だったんだ...??」

 こうなっては仕方ない、運を天に任せ「インド門」に付くことを願い続ける...

 バスは途中乗客を降ろしながらインド門へと向かう...

 確かにインド門へは向かっていたが...



 「おい!ここが終点だぜ」


 「...???」


 「ここは...そして見慣れた虫ホテルの看板は...」


 「チャトラパティ・シバージー...」

チャトラパティ・シバージー駅・ちなみに世界遺産...でもこんな状況で見ても嬉しくない!!



 バスに抗議するも当初「インド門」と言っていたスタッフは出発時点からもう居ない...

 「歩いて5分だから降りて歩け」と言ってきたが、私は今朝歩いたばかりなので「20分以上」かかることを知っていた。

 こうなったらこのバスを無理やりインド門まで行かせるしかない。さらに抗弁する...

 すると、バスのスタッフが「抗議するならそこのボンベイ・サファリのオフィスにしろ」と道路脇にある旅行代理店を指差し、私は反射的に降りて抗議しようとするとそこは全くの別会社...当然バスはもう逃げ出していた...

 夜の2000時はすでに過ぎていた...
 


 「うーむ...、やられた...!!」


 今の私には良く分かっている...

 私の選択したツアー「ボンベイサファリ」の「サファリ」の意味は

 「最後は乗客を勝手な場所で放り出してそこから夜のムンバイを自力でホテルに辿り着かせる為」

 に「サファリ」とついているのだった...



 ここでまったく見当のつかない場所だったら「夜のムンバイ」を心細く歩きながらホテルに戻ることになり、「サバイバル」の様相を呈するかもしれなかったが幸いにして知っている場所だった...それに朝同じ道を荷物を引き摺りながら歩いているのだ...

 タクシーも考えたが結局タクシーは使わずインド門まで歩くことにする。

 途中、帰りのバスで一緒だったインド人と話すと彼らも私と同じ目に...

 「インド人...侮りがたし...」


 彼らと別れてホテルに戻る途中、インド門へ立ち寄ることにする、私がチケットを買ったツアー会社がもし開いていたなら文句を言うためである。


 インド門(後ろはタージマハルホテルという超一流のホテル…ちなみに私はこのホテルの真後ろにあるホテルに移った)ここにバスで帰ってくるはずだったのにぃ~




 夜の2100時は回っていたのにまだチケット売り場は開いていた!

 早速抗議をすると...

 てっきりインドだから「そんな事は知らない」とか「お前のミスだ」等と難癖をつけてくると思いきや...

 ノーマルに対応してくれる...!!

 「そうか...そんなことをされたのか!」

 「バスのガイドはまた明日来る。こちらからも問いただすから明日来てくれ...」

 対応自体は悪くはない。幸いホテルも近いし、それに明日はようやくの休養日の予定だ。ちょっと寄り道も悪くはない。

 私はチャトラパティー・シバーシーからインド門まで歩いてきたのだが、ここは一つ、はっきりと言って置かねばならない。

 「わかった、俺も今は急ぎじゃないから明日来る、ただ忘れないでくれ、ここまでタクシーで40ルピー(約112円)も払わされたんだ...、インド門についてさえくれればこんなことにはならなかったのにな...」

 「えっ...!40も...!!、ここまで20(約56円)で十分だぜ...」

 「そんな事は知らないぜ(実は20で行けると知っていてやってます)、俺は外人でもう夜も暗くなったからボッてきたんだろうぜ、いかんせん俺には必要のなかった出費だ...、覚えておいてもらおうか...」


 私はオフィスを後にする。お金の事をわざと持ち出したのは、もし歩いて帰ったといったら「それは残念」で済まされてしまうと思ったからだ...。勿論お金をもらえる等とは思っていない、相手はインド人だ、町の商店でさえ定価を教えようとしないような卑しい国民性を持った国だ!ただこちらも少なからず損失があったと思わせなければ明日の交渉(苦情)のテーブルにはつけないだろう...


 明けて翌28日、1000時にインド門近くのオフィス(といっても単なるチケット売り場)に行く、相場では昨日のガイドは決しておらず、ほかの人間が応対して「そんな事は知らない」といってくるだろう...そうなったらこちらにも考えがある。

 「可能な限りの嫌がらせ...」

 ツーリストポリスに行くといって、店の前で英語で大声で騒ぎ、ほかの人間に何事があったのかと注目させ営業妨害をしてやるつもりだ...



 よーし、待っていろよ!

 久しぶりの戦い(ずいぶんセコイ気もするが)に神経は高揚する。

 そしてチケットオフィス

疑惑の旅行代理店



 私の予想通り昨日のガイドは...


 「へっ...」


 「いっいた!!」

 オフィスの前で呑気に立っている...


 私は早速、文句を言い始める。

 「おい、お前、俺を覚えているか?昨日乗せかえられたバスはチャトラパティー・シバーシー行きだったぜ...、おかげでこちらは乗りたくもないタクシーにボラれてここまで帰ってきたんだ、どう落とし前をつけてくれるんだ!!」


 ガイドは口の端にちょっとした「笑み」を浮かべる、

 人を嘲笑する仕草だ...

 てめえで仕掛けておいて...



 こういった時に私のとる行動は大体決まっている。

 「見せ拳」

 である!


 これは「怒った振り」であり、相手にこちらが如何に真剣に激怒しているか分からせるためにやるのだ!

 もちろん「本格派のチキン(臆病者)」の私には世界中のどんな場所でも本気で揉めるつもりはない。本気でやったら3秒以内にたたまれるのは私に違いないのだ!ただ、やられっぱなしは悔しいし、それに今日は暇なのでここらでちょっと揉めるくらいなら丁度いい暇つぶしだろう。付近には大勢の人がいるのでまあ安全だろう。

 よしっ!ゴーサインだ!!



 私はおもむろにガイドの胸倉を掴む、そして畳み掛ける様に話す...


 「おい!お前!!人が苦労させられたというのに笑っているのは何でだ?それがお前のやり口か??これは冗談でやってるんじゃないぜ!なあおい...」


 するとオフィスの中から声がする

 「ペイ・ヒム・20...(彼に20ルピー渡せ)」

 「へっ...??」


 そしてガイドが財布から「20ルピー」出して私に渡す...
 
 ややあっけにとられてそして反射的にお金を受け取る...


 「...」

 「...!!」
 

 「(お金を出すのが)はっ早!!」


 うーむ...乗っていないタクシー代をこうも簡単に支払ってくれるとは...

 いやっ!こんなことで溜飲を下げてはいかん...、タクシー代はかかってないといっても20分は歩かされてそれに時間もよく考えたらだいぶ無駄にしている...暇だから気にしていなかったが「20ルピー」ぐらいで引き下がってはいけない。それに彼は「一番大事な一言」をまだ口にしていない...


 「おいっ!お金だけで済ませようとするつもりか?ソーリーの一言もないのか??お前は...」


 私のしゃべっている途中で、彼の声が私の話をさえぎる...


 「ソーリー...」


 そしてオフィスのほうからも


 「ソーリー...」



 「(謝るのも)はっ...早...!!」



 慰謝料としてタクシー代、そしてこうも簡単に謝罪をされたらこれ以上揉める事もない...


 しかし...


 それにしても...



 謝るものお金を出すもの早すぎないかい??


 それにタクシーは使っていないんですよ!!いいんですか??



 こんなことは「北インド」では考えられないだろう...

 

 相手のあまりにも素直な応対...


 よくよく考えてみたらガイド代(10ルピー)を払わなかった私に...


 確認せずにタクシー代までくれて...


 確かに相手に過失はあった...しかしこんなことがここ「インド」で起こるとは...



 「インド侮りがたし...」


 そして今回私は「駄目もとでもとりあえずアクションを起こす」ということの重要性に気付いたのであった...