寺子屋ぶろぐ

日記から身近な法律問題の解説まで。

相続人って誰なのよ⑦(相続欠格しています)

2010年05月17日 | 相続制度
相続欠格制度。

富豪がらみのミステリーで、よく出てくるお話です。

簡単に言えば…
「不当な利益を得ようとして、そんなことする人は、相続人たる資格(相続権)をはく奪します」です。

ポイントは、2つです。

①欠格事由に該当する行為は何か(「そんなこと」の内容)。
②許したらどうなるか。

①欠格事由に該当する行為は何か(民法891条)。

欠格制度により相続権がはく奪されるのは、不当な利益を得ようとして、そんなこと(民法が分類した5つの行為のどれか)をした場合です。

以下に、5つの行為の概要を記載いたしますが、「不当な利益を得ようとして」が枕詞です。

○死亡させた又は死亡させようとしたために刑に処せられた・・・。

これは、上記に関する犯罪(殺人罪や同未遂罪のみではなく強盗殺人罪等も)の被害者が、被相続人、同順位の相続人又は先順位の相続人の場合です。
相続に関して、上記の様な理由で刑に処せられた者は、相続権をはく奪されて当然ですね。

○被相続人が殺害されたことを知っていたのに・・・。

被相続人が殺害されたことを知っていたのに、告発または告訴をしなかった相続人は、相続権をはく奪されます。
ただし、犯人が、自分の配偶者または直系血族の場合だったら、はく奪されません。
身内をかばうのは自然の行為と言えるからです。

○詐欺または強迫による妨害。

遺言書に関係します。被相続人が、相続に関する遺言書を作成、撤回、取消し又は変更するのを、詐欺または強迫によって妨害した場合です。

○詐欺または強迫により遺言を・・・。

これも遺言書に関係します。
上記のが妨害ですが、これは、詐欺または強迫により遺言書を作成させ、撤回させ、取消させ又は変更させた場合です。

○偽造変造破棄隠匿。

これも遺言書に関係します。
遺言書を、偽造、変造、破棄又は隠匿した場合です。
注意が必要なのは、隠匿です。
相続開始後、自筆証書遺言書を発見したのに速やかに検認の手続をせず放置していた場合に、不当な利益を得ようとしていたと勘ぐられれば、相続欠格になりかねません。

②許したらどうなるか。

これは、欠格の宥恕(ユウジョ)は認められるか、という問題です。
つまり、欠格を無かったことにして相続権を復活させてやる事は出来るのかという事です。

例えば。
お父さんを強迫して遺言書を作成させた長男がいました。
もちろん、財産全部は長男にやるという内容です。
独り占めする気マンマンの長男です。

しかし、長男は、ふと考えました。
このままじゃ、イカンと。

そこで、それ以後は親孝行に徹しました。
お父さんは、満足です。
かつて作成させられた遺言書も、そのままでいいやと考え、それを家族みんなに伝えました。

で、安らかに眠りました。

さて、遺言書が有効か無効かの話は別として、長男はお父さんの相続人でしょうか。
上の欠格事由に該当する行為はしています。
不当な利益を目的としてもいました。

でも、後で許されています。お父さんから。

欠格制度が、相続権のはく奪というペナルティ(罰則)を課す側面を有していることを理由に、欠格の宥恕は認められないとする考えがあります。
一方、反省の余地を認めてやってもいいのではないかと言う事を理由に、欠格の宥恕を認めるとする考えもあります。

はっきりとコッチと言えない部分です。
個人的には、認める余地があってもいいんじゃないかなぁと思っています。

…「相続人って誰なのよ⑧(代襲相続って)」につづく。