週刊東洋経済 2006/6/10号より
第2特集「進化するエビちゃんビジネス」
女性誌『CanCam』の専属モデル、蛯原友里。その人気は過熱するばかりだ。
雑誌とモデルがお互いのポジションを高め合う好循環は、すご腕マネジャーの周到なイメージ戦略によって仕掛けられた。
無名のモデルだった蛯原を、一気にブレークさせたのは、芸能界では半ば伝説的なマネジャー、ケイダッシュ取締役 谷口元一。
これまでも女性誌の人気モデルは数多くいたが、途中で女優活動を開始したり、タレントを目指すケースが多かった。
谷口は蛯原を育てるうえで、徹底的にモデル路線を追求する戦略を採った。そのため、2003年に蛯原と押切もえを2枚看板に、
ケイダッシュの子会社としてモデル専門事務所「Pearl(パール)」を発足されている。あくまで蛯原を“CanCamのモデル”として売り出し、
イメージの拡散を慎重に避けてきた。
これほどの人気になっても、テレビCMは最大5社程度に抑制。ドラマにも出演させるが、実はその大半は“モデル役”と限定している。
「今の中学生、高校生は『CanCam』のモデルになりたがっている。“月9”ドラマへの出演が、人気の尺度とは思っていない」と、
谷口は喝破する。モデル業をステップとしてとらえるのではなく、それ自体を極める。谷口と蛯原の採った戦略は、これだった。
谷口は、「広告代理店も『CanCam』の人気のすごさに気がついていない。若い女性を動かす力が(テレビと)まったく違う」という。
その『CanCam』のイメージリーダーであることこそ、「エビちゃん」の影響力の源泉。
「『CanCam』の版元の小学館は雑誌の価値はモデルで決まると割り切っている」
現在は、「カッコいい系の山田優」、「カッコかわいい系の押切もえ」、「モテかわいい系の蛯原友里」という3人のキャラクターが共存。
ブランドイメージを明確にしつつ、幅広い読者を獲得することが可能になっている。一度は30万部強にまで下がった販売部数は約55万部まで急上昇。
ここまでエッジの効いたイメージを確立できたことで、「エビちゃんビジネス」の可能性は大きく広がった。
蛯原のイメージを「共同開発」やCMという形で企業が借りに来るようになった。
サマンサタバサでは、蛯原デザインの商品が断トツの人気で追加生産を重ねる。
日本マクドナルドは、ターゲット層をこの数年で来店が大幅に減った20代のOLと設定。この層への訴求力がある蛯原を広告キャラクターとして選んだ。狙いは見事にあたり、4週間で1000万個以上と目標を大きく上回る販売を記録し、20代の女性客も店頭に戻ってきた。
資生堂の化粧品マキアージュ。伊藤美咲、篠原涼子、栗山千明、蛯原という年代の異なる4人の女優が共演したことでも話題になった。
「スーパーカリスマ性は駄目。身近でカッコいいのがいい」というのが蛯原起用の理由。
そのほか、「ガールズウォーカー」【ゼイヴェル】、ゴールドキウィ【ゼスプリ】、ドリームウェディングドレス【ベストブライダル】など。
「エビちゃんのファッションは、ものすごく値段が高い、というわけではない。女性が『真似できそう』と思える存在。そこが彼女のすごいところ」(ライターにらさわあきこ氏)
「今の20代は、カリスマにあこがれることに意味を感じない。エビちゃんはリアリティのあるキャラクターだから認知された」(博報堂生活総合研究所の原田曜平氏)
これほどの人気がありながら、「身近」で「リアリティ」があるというのはイメージコントロールがよくできている証拠。
エビちゃんスタイル
「キラキラ、ウルウルの瞳=チワワ瞳」、
「セミロングからロングの内巻き=ふわゆるヘアー」、
「ハートもののネックレス」、
「レースやフリルのワンピースorアンサンブル ピンク、白色が中心=ゆらりんスカート」
「ピンク、白色のパステルカラー ハート生地のバッグ」
またCIRCUS 6月号では、
今が旬!この娘の時価総額は? でなんと849億円とされている
計算方法は下記のとおり。
『CanCam』 の広告料 タイアップ広告216P+純広167P=383P 300万円/Pで
383P×300万円/P×12ヶ月=137億8800万円・・・A
『CanCam』がターゲットにしている20代女性800万人のうち、1/3がOLもしくは女子大生で、その半数がエビちゃんファッションと考えると、
270万人(20代女性の1/3)×1/2×衣類や靴にかける平均支出月(?年?)額5万円=約675億円・・・B
またマクドナルドが「えびフィレオ」効果で05年12月期の連結業績予想を36億円上方修正。・・・C
A+B+C=849億円
恐るべし、エビちゃん。