ひとまず今回の記事には本当の【ネタバレ】はありません。まあネタバレしたからといって持ち味が薄れるという作品ではありませんが。
References
1a) カトリーヌ・アルレー;安堂信也(訳)『わらの女【新版】(創元推理文庫)』東京創元社(2006/06/27) [ISBN-10: 4488140270][ISBN-13: 978-4488140274] 新保博久による「解説」
1b) 『わらの女 (創元推理文庫 M ア 5-1)』東京創元社(1964/08) [ISBN-10: 4488140017][ISBN-13: 978-4488140014]
1c) 『わらの女(1964年)(創元推理文庫)』東京創元社(1964) [ASIN: B000JAG596]
1d) 『世界名作推理小説大系〈第21〉牝狼・死刑台のエレベーター・藁の女』東京創元社(1962) [ASIN: B000JB4AFG]
カトリーヌ・アルレー(Catherine Arley)『わらの女』、原題"LA FEMME DE PAILLE"は1956年出版で初邦訳は1958/12の『藁の女』[*1]、文庫版『わらの女』初版が1964/08/30[Ref-1b,1c]、と古い作品ですが、当時の読者たちに衝撃を与えたと言われています[文庫版の解説(Ref-1a)など]。しかし私が子供の頃に読んだときには「こんな初歩的ミスのある作品がなんで評価されてるの?」ということしか印象に残りませんでした。
一言で言えば完全犯罪が成立してしまう物語ですが、犯罪計画自体は単純で登場人物も限られていて推理小説と言えるものではなく、文庫版の解説でもサスペンスと分類しています。そして物語半ばで犯人が自ら犯罪計画を明かすのですが、その計画には子供の私でさえすぐに気づいた明らかな難点がありました。当然ながら作者はその難点を切り抜ける方法を用意しているに違いなく、それはどんなものだろうかと期待しながら読み進めたのですが、なんと最後までそれは出てきませんでした。もしかしたら日本とフランスでは事情が違うのか?[*2]との疑問まで生じたのですが、後日読んだ何かで「結城昌治が欠陥を指摘した」との記述があり、「やっぱりアルレーが馬鹿だっただけか」とあきれていたのでした。が、そこにはちょっと複雑なウラがあったのでした。
そもそもサスペンスと分類されたように、この作品の見どころはヒロインが富をつかもうと詐欺まがいの計画に加担して成功し、一転して殺人事件の犯人とされ追い込まれていゆく描写にあります。しかし私が子供の頃に読んだものはおそらく子供向けのダイジェスト版だったかも知れず、そのあたりの描写が簡略化されていて魅力が薄れていた可能性もあります。
ということで新版(2006/06/30)を改めて読んでみました。その結果は次回にネタバレ満載で詳しく書きますが、やっぱり推理好きの少年がガッカリしても仕方ないよねえ。
とはいうものの実はこの作品は、"作品中でトリックの真相が書かれていない"という前代未聞の珍しい作品だったのでした[*3]。いわば水面下のトリックです。そして再度の逆転劇の結末やいかに・・。
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*1) Ref-1aの解説によれば、「『藁の女』と題されて、東京創元社のハコ入り小型本叢ぎの一つクライム・クラブ(現在ある日本人作家の叢書とは別)第十六巻として一九五八年十二月に邦訳された(同版ではアルレェと表記)」とのこと。
*2) 実はフランスではなく、アメリカのニューヨーク州の事情が関係する。
*3) そう断言してしまうと、嘘になるのかなあ。
References
1a) カトリーヌ・アルレー;安堂信也(訳)『わらの女【新版】(創元推理文庫)』東京創元社(2006/06/27) [ISBN-10: 4488140270][ISBN-13: 978-4488140274] 新保博久による「解説」
1b) 『わらの女 (創元推理文庫 M ア 5-1)』東京創元社(1964/08) [ISBN-10: 4488140017][ISBN-13: 978-4488140014]
1c) 『わらの女(1964年)(創元推理文庫)』東京創元社(1964) [ASIN: B000JAG596]
1d) 『世界名作推理小説大系〈第21〉牝狼・死刑台のエレベーター・藁の女』東京創元社(1962) [ASIN: B000JB4AFG]
カトリーヌ・アルレー(Catherine Arley)『わらの女』、原題"LA FEMME DE PAILLE"は1956年出版で初邦訳は1958/12の『藁の女』[*1]、文庫版『わらの女』初版が1964/08/30[Ref-1b,1c]、と古い作品ですが、当時の読者たちに衝撃を与えたと言われています[文庫版の解説(Ref-1a)など]。しかし私が子供の頃に読んだときには「こんな初歩的ミスのある作品がなんで評価されてるの?」ということしか印象に残りませんでした。
一言で言えば完全犯罪が成立してしまう物語ですが、犯罪計画自体は単純で登場人物も限られていて推理小説と言えるものではなく、文庫版の解説でもサスペンスと分類しています。そして物語半ばで犯人が自ら犯罪計画を明かすのですが、その計画には子供の私でさえすぐに気づいた明らかな難点がありました。当然ながら作者はその難点を切り抜ける方法を用意しているに違いなく、それはどんなものだろうかと期待しながら読み進めたのですが、なんと最後までそれは出てきませんでした。もしかしたら日本とフランスでは事情が違うのか?[*2]との疑問まで生じたのですが、後日読んだ何かで「結城昌治が欠陥を指摘した」との記述があり、「やっぱりアルレーが馬鹿だっただけか」とあきれていたのでした。が、そこにはちょっと複雑なウラがあったのでした。
そもそもサスペンスと分類されたように、この作品の見どころはヒロインが富をつかもうと詐欺まがいの計画に加担して成功し、一転して殺人事件の犯人とされ追い込まれていゆく描写にあります。しかし私が子供の頃に読んだものはおそらく子供向けのダイジェスト版だったかも知れず、そのあたりの描写が簡略化されていて魅力が薄れていた可能性もあります。
ということで新版(2006/06/30)を改めて読んでみました。その結果は次回にネタバレ満載で詳しく書きますが、やっぱり推理好きの少年がガッカリしても仕方ないよねえ。
とはいうものの実はこの作品は、"作品中でトリックの真相が書かれていない"という前代未聞の珍しい作品だったのでした[*3]。いわば水面下のトリックです。そして再度の逆転劇の結末やいかに・・。
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*1) Ref-1aの解説によれば、「『藁の女』と題されて、東京創元社のハコ入り小型本叢ぎの一つクライム・クラブ(現在ある日本人作家の叢書とは別)第十六巻として一九五八年十二月に邦訳された(同版ではアルレェと表記)」とのこと。
*2) 実はフランスではなく、アメリカのニューヨーク州の事情が関係する。
*3) そう断言してしまうと、嘘になるのかなあ。
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