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数学的実在とは-幾何学-14-原論と基礎論(12)

2010-03-07 06:45:33 | 数学基礎論/論理学
 前回の続きです。

 『幾何学基礎論』では、第4章で面積理論を展開しています。が、まだ実数量としての面積を導入したのではなく、2つの多角形の面積が等しいという「等積」の概念をまず導入します。それも分解等積補充等積という2種類の概念を導入していますが、分解等積の方が基本的です。簡単に言えば、多角形AがA1,A2,・・・Anのn個の三角形に分解でき、多角形BがB1,B2,・・・Bnのn個の三角形に分解できて、A1≡B1,A2≡B2,・・・An≡BnであるときにAとBとは分解等積であると定義します。もちろんA≡Bとは限りません。
 次に補充等積の定義です。以下のアルファベット記号は全て多角形を表し、"+"は図形を辺や頂点を共有させて合成することを表すとします。
  S=P+A1+A2+・・・+An、 S'=P'+B1+B2+・・・+Bn
 ここでSとS'が分解等積で、A1とB1,A2とB2,・・・AnとBnもまた分解等積であるとき、PとP'は補充等積と定義します。

 以上の定義により、底辺と高さが等しい三角形同士や平行四辺形同士は分解等積であるというよく知られた性質が証明されます。ここまではまだ面積が等しいという概念が定義されただけで面積の大小は定義されていません。が、底辺と高さが等しい平行四辺形同士が分解等積であることから、そのような平行四辺形での線分としての底辺と高さの積(前回記事で紹介済み)である線分は、すべて合同となります。よって多角形の面積と線分とを対応させることができ、線分の大小関係は定義されていましたから、面積の大小関係も定義できます。面積と対応させた線分を「面積測度」とよびます。そして面積測度を介して分解等積と補充等積とが一致することが示されます。ある底辺と高さを持つ図形とその面積測度との関係は、どんな線分を単位線分1とするかによって変わることには注意が必要です。

 こうして定めた面積測度とは多角形から線分への写像(多角形と線分との対応)ということができます。そして連続の公理により線分から実数への写像を定義でき、それがすなわち数学的に定義された長さだと考えられます。

 以上述べたように、公理的に構成された線分や多角形は長さや面積とは切り離された数学的存在でもあり得ます。線分には常に長さが分かちがたく含まれていると感じる日常感覚からはなかなか考えづらいのではないでしょうか。もっとも現実にも人を並べて身長順に並べるとき、特に長さという量は意識していないのかも知れません。ひとつには順序だけ意識していて和や積のことは意識していないだろうし、人の身長のみならず紐や歩く距離とも比較できるなどとも意識していないでしょう。人の身長のみならず紐や歩く距離も共通に比較できることに気づいたとき、長さという量の存在が明らかになるのでしょう。その意味では量というものも結構抽象的な概念です。けれど数学における数や測度ほど抽象度が高くはありません。ところが数学プロパーの人が量について説明するときに、どうしても抽象度が高いレベルで話をしてしまい教育的には問題のある場合がままあります。

 こういった量の問題については、新たなテーマとして述べていくつもりです。


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