鞦韆院落
北京で過ごすインディペンデント映画な日常
 

活動  


ネットを見ていたらこういう記事がありました。
「中国で日本映画ブームの兆し!国交正常化45周年の節目に特集上映」

これを読むと、“中国では日本映画が流行ってきてるのか”とか“日本映画の上映が増えて良いことだ”と思われるかもしれません。
それはいいんですが、私は若干補足したいところがあります。
ただし私は今回の広州でのイベントについて何も知らないし、国際交流基金の活動についても何も聞いていないので、あくまで部外者の意見です。

まず、記事にあるように最近になって中国で日本映画が上映される機会が増えているのは事実です。
去年は公開された本数が過去最多だったし、北京国際電影節や上海国際電影節では去年も今年もたくさんの日本映画が上映されました。
しかも、映画祭で日本映画を上映すると、どの回も満席です。
でも、これは日本映画への関心が「確実に高まっている」からではありません。
上海国際映画祭では、ずっと前から日本映画の上映があるとすぐにチケットが完売していました。
もともと中国では日本映画の人気が高いのです。

最近になって、『STAND BY ME ドラえもん』や『君の名は。』がヒットしたのも事実ですが、それも「日本ブーム」だからではないと思います。
日本映画で劇場公開されたのは、2012年まで年間2〜3本程度でした。
2012年には外交上の問題で日本映画の公開は中止になり、13年と14年は公開されませんでした。
それまで公開された日本映画は、『クイール』や『いぬのえいが』『犬と私の10の約束』といった、要するに日本の歴史や政治には一切関係無い、人畜無害映画ばかりが選ばれてきました。
それくらい、日本映画への警戒心が強く、検閲のハードルが高かったのです。
日本でヒットした映画はほとんど公開されず、例えば中国人も大好きなジブリ作品は1本も公開されていません。
でも中国人はDVDやネットで日本映画は観ていて、とても良く知っています。
つまり興行成績としては最近になって目立っているけど、それは以前に観たい日本映画が劇場で上映されてなかっただけで、みんなは他の方法で観ていたのです。
興行成績がよくなったからといって「日本ブーム」だと言うのは、中国にいる人の感覚からするとピンときません。

昨年は劇場公開された日本映画が11本に急増しました。
これも日本映画の人気を反映しているとは言い難いです。

記事にあるように、中国では映画の輸入枠に制限があります。
そうなれば、配給会社はより多く客が入りそうな映画を優先的に選ぶから、当然ハリウッド映画が多くなります。
いくら日本映画に人気があるといっても、最高だった『君の名は。』が5.7億元だったのに対し、同じ年のハリウッドアニメ『ズートピア』は15.3億元売り上げているし、マーベルの映画なら7,8億元は硬いのです。
それに比べ、昨年公開された日本映画には二三千万元台のも多いし、『ドラゴンボールZ 復活のF』に至ってはわずか1092万元。
これより稼げる外国映画はいくらでもあるはずで、日本映画が多かったのはむしろ不自然でした。
日本映画好きな中国人は20代を中心とする文芸青年と呼ばれる層なので、そういう人たちをターゲットにしていない子供向けアニメが多く選ばれたのも問題だったと思います。

北京国際映画祭は、毎年全部で数百本の映画を上映しているのですが、2013年と2014年は日本映画が0本でした。
それが昨年から急に日本映画部門をたくさん設け、やたら日本映画を上映しました。
同様に、上海国際映画祭も大量に日本映画を選んでいます。
これは明らかに政治的な配慮です。

では日本映画の上映が容易になったのかと言えば、そうではありません。
この記事にあるように、「日中国交正常化45周年を記念し」「国際交流基金と広東省電影行業協会の主催」するイベントでさえ、「北京国際映画祭と上海国際映画祭での上映作の中から」しか作品は選べません。
それも、「作品のセレクションは中国側が行」うのです。
独自に、新たな日本映画を紹介することは許されません。

それから、中国政府はこうした海外映画の上映イベントはバーターの場合のみ許可しています。
つまり、国際交流基金が日本で中国映画の上映イベント(それも電影局が認めたもの)を行わないと、中国国内で日本映画を上映させてもらえません。
記事に「中国映画を日本で紹介する企画も行うという」とあるのは、そういう意味です。
しかも、日本で上映するにあたっても、作品選びは電影局が口を出してきます。

結局はすべて電影局次第であり、国際交流基金であっても何ら決定権は無いということです。

今回の第1回日本映画広州上映ウイークと呼ばれるものは、昨年9月に広州の中山大学で行われたイベントを継承したものです。
これも北京にある日本文化中心(国際交流基金)が企画し、3日間に渡って7本の日本映画が上映されました。
上映作品には、今回と同じ『セトウツミ』『家族はつらいよ』『東京物語』も含まれています。
なので正直、今回は新鮮さに欠けています(悪くはないですが)。

聞いた噂では、昨年は日本映画の上映の許可がなかなか下りず、広州という“文化沙漠”の、しかも大学の中でしか許されなかったために、このようなイベントになったそうです。
でもまあ、広州のようなイベントの少ない所で行われるのは、良いことだと思います。
広州の観客は私も好きだし。
(関係ないけど、今回上映される『64−ロクヨン−』は中国で『昭和六十四年』というタイトルになってます。中国で“六四”は禁句ですからね)

とにかく中国の映画産業はずっと政府の管理下にあり、政治に振り回されるのは不可避です。
今後もぜんぜん変わらないと、私は思っています。
記事を書いた方には申し訳ないけれど。


それはそうと、賈樟柯が平遙で新しい国際映画祭を開くと宣言しましたね。
カンヌで范冰冰や李睿珺らと一緒に会見をしてました(個人的には李睿珺が范冰冰と一緒に写っていることにウケました)。
これまで中国で映画祭といえば上海国際映画祭とクソみたいな北京国際映画祭くらいで、最近は一帯一路の影響で「絲綢之路電影節」なるものもあるけど、ぜんぜん面白い映画祭がなかったわけで、賈樟柯が少しでも面白い試みをやってくれたらと、かすかに期待しているところです。

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査証  


2003年以降、中国へは15日以内ならビザなし渡航が認められているので、多くの人は中国ビザを取ったことがないと思います。
ただ滞在日数が15日を超える旅行や出張ではビザが必要です。

かつては麻布の中国大使館で申請を受け付けていた時代もありましたが、その後は代理店を通じてしかビザ申請ができなくなっていて、高い手数料を払わなければなりませんでした。
私が使っている商用の2年マルチビザは特に手数料が高く、2万円以上かかります。
でも、昨年秋に「中国ビザ申請サービスセンター(以下申請センター)」というのが虎ノ門にできて、低価格でビザが取れるようになりました。

この申請センターというのは、形としては民営らしいですが、実質的に中国政府がやっているもので、すでに50カ国以上にあるそうです。
ということは、日本は遅かったんですね。
代理店とは違うので、料金も安く、2年マルチだと代理店の半額以下で取ることができます。

私のビザがちょうど今月で切れるため、更新するために初めてビザセンターに足を運びました。
以下、これからビザを取る人の参考のために、利用方法を書いておきます。

申請センターは郵送や代理人による申請は受け付けていません。
原則、本人が行く必要があるようです。
申請センターへ行けない人は、従来通り代理店を通して大使館や領事館に出すことになります。
なお、申請センターは大阪と名古屋にもあります。
取得料金も安く済むし、所要日数も代理店を通すより短いので、行ける人は申請センターへ行ったほうがいいと思います。

予め、公式サイトにある申請用紙をダウンロードし、必要事項を記入して、証明写真を1枚貼っておきます。
パスポートのコピーも必要になります(顔写真のページと、最近取った中国ビザがあればそのページ)。
申請センターに証明写真の機械やコピー機があるので、その場で作ることも可能です。

マルチビザを申請する場合は、中国企業からの招聘状が必要になります。
ただ、それほど難しいものではありません。
必要事項が記載され、中国の会社の届け出印が押してあればいいので、知り合いの会社などがあれば一枚書いてもらいましょう。
原本でなく、例えば中国で作ったものをPDFにしてメールで送ってもらい、プリントアウトしたものでもOKです。
記入例は代理店のサイトなどにあります。
なお、初めてビザを申請する人は1年間のビザまでで、2年間のビザは取れません。

必要な書類が用意できたら、申請センターへ持ち込みます。
受付は平日の9時から15時まで。
サイトを見ると、ネットで予約しろと書いてありますが、そのくせネット予約は機能していません。
直接行きましょう。
ちなみに、余程のことでないと、混んでいるということはなさそうです。



入ると受付があり、非常にテキパキした日本人の若い女性スタッフがいて、持ってきた書類をチェックしてくれます。
不備がなければ、受付番号札をくれるので、座って待ちます。
中は中国の銀行のような窓口がたくさん並んていて、番号を呼ばれたら窓口へ行き、ガラス越しの係員にパスポートと書類を手渡します。
書類の確認が済むと受領証をくれて終わりです。
速いです。申請センターに着いてから15分もしないうちに、手続が終わりました。

普通申請の場合、提出したその日を含めて4営業日目に受け取ることが可能です。
受け取りは16時までで、受領証を持って行き、料金を払います。
料金はビザによって異なるので、こちらでご確認を。

というわけで、2年マルチビザも安く、簡単に取得することができます。
これで代理店も商売あがったりですね。
みなさんにも、申請センターでビザを取ることをお勧めします。

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閉幕  




3日間という短い日程を終え、西湖国際紀録片大会が閉幕しました。
21日には論壇、22日には円卓会議が開かれ、どれも登壇者が多いので1人5分ずつ話しただけなのに3,4時間かかり、私は日本人ゲストの通訳をしていました。
この映画祭に招待された時、論壇にゲストとして出てくれと言われたのだけど、結局出てみれば2つとも私の発言は無く、通訳のみ。
私の活動とも直接関係のあるテーマではなかったし、発言したいわけじゃないから良いけど、それにしても通訳以外にすることがあるでなし、つまり私は最初から通訳として呼ばれたということですね。
そういうことなら通訳代を払えと言いたいです。
こんなに金のある映画祭なんだから。



おかげで映画もほとんど観られませんでした。
この映画祭で観られたのは、初日にQ&Aの通訳をした『交差』(冒頭の数分は観られず)と、オープニング上映だった台湾の『他們在島嶼写作』(途中で呼び出されてので最後まで観られず)、そして21日の夜に上映したカナダのTiffany Hsiung監督の『The Apology』(なぜか映像には「Preview Only」の字幕あり)の3本のみ。
こんなに映画を観なかった映画祭も初めてです。
万馬才旦の新作も観たかったのに。



文句を言えばキリがありませんが、そもそもあまり期待してなかったので我慢します。
彼らは今後も毎年やるつもりらしいので、これから改善されるといいのですが。

さて、閉幕式では各賞の発表がありました。
審査員特別賞に大引勇人監督の『交差』、年度作品賞にTiffany Hsiung監督の『The Apology』、年度作者賞にAlka Raghuram監督の『Burqa Boxers』、年度新鋭賞に金行征監督の『羅長姐』、大賞であるIDF年度優秀紀録片には杜海濱監督の『少年小趙』が選ばれました。
結果的に、観ていた作品や知り合いの監督の作品が多かったです。
金行征は前回のヤマガタに『離開』という作品で来ていた人で、あの時は彼と彼の恋人と杜海濱と私で山寺観光に行ったのですが、あれから2年後にまた杭州でみなで再開するとは思いもしませんでした。
当時の恋人は今や奥さんになっていて、2週間前に子供も生まれたとか。
おめでたいことです。

中国美術学院は女子学生だらけで、受賞者たちは女子学生たちに囲まれてサイン攻めにあっていました。
やっぱり監督はいいですね。通訳なんて何も良いこと無い。

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開幕  


西湖国際紀録片大会が開幕しました。
この映画祭はあんまり映画が観やすいようにできてないというか、会場も離れすぎていて(車で1時間というのは、もはや1つのイベントの域を越えていると思います)、まだ全然観られてません。
今日は夕方からの開幕式のみ参加。

式場に入るのにセキュリティーチェックがあったりして、ちょっと焦りました。
そう言えば、昨日は到着を告げる受付でパスポートの提示を求められたっけ。

いわゆる“官方活動”なので、開幕式は偉い人が来て話したり、まあ想像通りです。
ただ、美大だけあってポスターや映像、ステージパフォーマンスなども芸術性が高く、非常にセンスが良いです。
中国でこんなにスタイリシュな映画祭は他にないかもしれません。



そしてまた想像通りに、開幕式が終わればオープニング上映前に多くのゲストは席を立ち、残ったのは学生ばかりで、オープニング作品は微妙。
上映中にボランティアが私のところに来て、「パーティが始まるから来てください」と言うので行ってみれば、広い会場には弦楽演奏などがいて目を引くものの出席者はまばらで、しかもほとんどの人が顔を出しただけで帰ってしまいました。
1時間もしたら自主解散。
こんなシラけたオープニングパーティーは初めてです。
どうやら今回は名刺をほとんど使わずに帰ることになりそう。



映画祭をその傾向で分けると、観客をメインに考えるものと、作り手をメインに考えるもの、そしてスポンサーや上層部をメインに考えるものがあります。
私は観客を第一に考えがちで、ゲストにはややそっけないところがあります。
日本や台湾には、わりとこういう映画祭が多いと思います。
主催者がもともと映画好きだったりして、どんな映画を観客に届けたいかにこだわりが強いのです。

中国の独立系の映画祭はどれも作り手のために開かれるもので、監督同士の交流や、他の国や地域への作品の拡大、作品への批評などを狙ったものが多く、招待客中心で観客は多くないものの、作り手たちにとっては有意義なものです。
監督や大学で映画を教えてる先生など、制作者側に近い人が主催をしていることが多いです。
顧桃が昨年やった映画祭も、ある意味作り手のためですが、政府からお金を得て独立系監督たちに慰安旅行をさせるのが目的で、映画の上映よりリクリエーションが中心だから、それはそれで監督たちには戸惑いもありました。

そして、中国の公的な映画祭に多いのは、上層部しか見ていない映画祭です。
式典がやたら豪華で、ゲストの知名度や格、国際性などにこだわりが強く、作品選びも多くは大人の事情で決まり、スタッフは数がとても多いけど自分の仕事を把握しておらず、ゲストは良いホテルに泊めてもらえたり現金が配られる以外には得るものが少なく、上映環境や字幕はイマイチで、観客はなかなか観たい映画が観られないというもの。
メディアが開幕のニュースを大きく取り上げ、そこに政府関係者と有名なゲスト(特に白人)の写真が大きく載りさえすれば来年の予算も出るので、そのあとは問題さえ起きない程度にやってればいいという感じです。

いろんな映画祭に関わっている身としては、事情は理解できます。
観客は当然大事だし、作り手が参加したいと思うような映画祭にすることも必要だけど、資金源だってもちろん重要。
どれが欠けても良い映画祭にならないし、とても難しいです。
また、一口に映画祭といっても目的は様々だから、一概に語れないところもあります。

今回の映画祭は政府が金と口を出し、中国美術学院が運営を仕切っています。
中国美術学院はドキュメンタリーを作ったり、教えてたりしてる人たちだから、彼らなりの理想はあるはずです。
政治的なジレンマがある中、頑張っているのだろうとは思いますが、今のところ私の採点は厳しいものにならざるを得ません。

明日は論壇に呼ばれています。
中身については何も知らされていません。

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杭州  


西湖国際紀録片大会に参加すべく、杭州にやってきました。
やはり最後まで主催者側からの情報はなく、状況がつかめないままの出発でした。

航空便は全日空の成田発杭州行き。
久しぶりに成田の第1ターミナルに来てみると、店が増えていました。
思えば最近は羽田か第3ターミナルばかりで使っていたので。

杭州行きのA320は満席で、日本人より中国人の方が多そうな感じでした。
彼らが空港で買うお土産が多すぎて、上の荷物棚がすぐいっぱいになってしまい、多くの人が荷物を置けずに困っている感じ。
中国人が多く乗る便は、手荷物を制限するか、荷物のスペースを確保しないととても足りませんね。

設置してある液晶モニターがRetinaディスプレイばりにきれいで、映画が観たくなります。
『この世界の片隅に』を観ました。

3時間半ほどで杭州に到着。
税関を越えてゲートをぬけると、ボランティアスタッフがボードを挙げて待ってました。
5人くらいいます。
今回、日本映画大学の卒業制作として作られた『交差』という映画が参加するので、その監督の大引さんと、指導教官であった安岡先生が同じ便に乗っていて、車で一緒に中国美術学院へ移動しました。
一応日本語を話すボランティアがついているのだけど、趣味で学んでいる程度なので、会話はかなりおぼつかない感じ。
まあ可愛いからいいけど。
聞けば漫画専攻なんだそうで、今や中国美術学院も漫画なんぞ教えているのかとビックリ。

とりあえず大学の中にあるホテルへ。
この大学で建築を教えている先生が設計したという、非常に凝ったデザインのホテルです。
部屋が無駄に広くて、私が都内で住んでる部屋の3倍くらいあります。
自腹で泊まったらお高いんだそうです。





映画祭の開幕は20日の夜なのですが、なぜか19日から上映は始まっていて、『交差』も19日の18時半からの上映です。
何も頼まれてないけど、きっと私はQ&Aの通訳をやらなきゃいけないのです。
上映会場は浙江大学で、中国美術学院からはかなり離れています。
ボランティアが滴滴で呼んだタクシーに乗り、会場へ移動したのですが、渋滞で上映時刻を過ぎてしまい、遅刻。
通訳しなきゃいけないのに、映画もちゃんと観られないとは。

上映後Q&Aが始まりました。
会場は、一応上映のための環境は整っているけど50名弱しか座れない小さな教室のようなところで、そこの先生が司会をし、フランクな感じで行われました。
30分ほどだと聞いていたのに2時間も続き、通訳としてはかなり大変でしたが、観客は楽しんでいたようなので良かったです。
しかし、せっかく日本からゲストを呼んで、中国語字幕も入れて映画祭で上映するというのに、こんな小さな会場とは残念です。
中国美術学院と浙江省政府が主催なら、もうすこし大きな映画館とかでやってほしかった。
あと、中国語字幕は案の定かなり雑でした。
どう考えても翻訳者が映像を見ていないのがバレバレ。

さて、これから数日間、どんな映画祭になるのやら。

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移民  


趙大勇から1年半ぶりくらいに連絡が来ました。
「広州を離れて、家族でニューヨークに移住したから、来ることがあったら訪ねて来て」とのこと。
噂では聞いていたけど、本当に移住したんですね。

しかし、これから学齢期になる娘のためとはいえ、仕事もないのによく移住するものだと驚きます。
しかも本人、まるで英語が話せないし、話す気も無かったのに。
魅力あるんですかね、アメリカって。
私は旅行ですら行ってみたいと思ったことはないのですが。

かつて宋荘にいた仲間も、2人ほどアメリカに移住しているし、これから申請するつもりだという人もいて、今や独立電影の人たちも海外へ逃げる時代となりました。
もっとも、映画や芸術関係者でなくとも、移民できる人は移民するのが中国ですけどね。
それも今に始まったことじゃなく、昔からずっと。
あんまり居心地のいい国じゃないですから。

移民はできなくても、北京を離れて地方へ移るという人も増えています。
顧桃もその一人で、内モンゴルに引っ越すと言っています。
それがいいでしょうね。北京なんて全然面白くないもの。

その顧桃が、先週数カ月ぶりに連絡をしてきたと思ったら、また「お前も内モンゴルに来れば」とか無責任なことを言ってました。
去年も彼はそんなことを言っていて、「来週フフホトへ行くから一緒にどうだ?住むところも紹介できるぞ」なんて言うので、私も少しその気になったりしたのでしたが、その後音沙汰もなく、こっちから聞いても「ああ、またそのうち行くから」なんて言うばかりで、まったく当てにならないのです。
そのくせ、思い出したように「一緒に内モンゴルで仕事をしよう」と誘ってきたりするのだから、よくわかりません。
こういうのを“不靠譜”というのです。

顧桃が先週連絡をよこしてきたのは、べつにその件ではなく、「来週東京に行くから泊めてくれよ」というのが本当の要件でした。
うちは余分な布団もないし、彼が助手と一緒に来ても床に横になることしかできないので、それでもよければと伝えたところ、返事がありませんでした。
その後数日たって、泊めてくれる人が見つかったと連絡が来ました。
正直、空港まで迎えに行ったり、イビキで眠れなくなったりするのが不安だったので、ホッとしています。

顧桃が今回来日するのは、都内でイベントがあるからで、彼はついでに日本で撮影もする予定だとか。
何の撮影かは、だいたい察しがつきますが。
私は前回書いた杭州の映画祭があるので、イベントには行けず、彼ともすれ違いになってしまいました。

ところで杭州の映画祭、チケットが手配できたとフライト情報は送られてきたけど、映画祭の日程表もなければ、私が何をすればいいかも未だに伝えて来てません。
そもそも上映プログラムも発表されてないし。
どうなってんの?

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西湖  


「提名人」て何ですかね?

来月、杭州で西湖国際紀録片年展というのが開かれる予定です。
中国美術学院が主催するドキュメンタリー映画祭で、今回が第一回です。

中国美術学院にはドキュメンタリーを教える専攻があって、以前から馮艶などの独立系監督を講師に招いてワークショップを開いていたこともあって、私も以前から聞いたことがありました。
また、2013年には山形国際ドキュメンタリー映画祭の関連企画として、三都大学交流プログラムというのがあり、中国美術学院の学生や教員の作品が上映され、私も字幕翻訳や通訳を通じて彼らと知り合いました。

彼らは、かねてより自前でドキュメンタリー映画祭をやるのが念願で、数年前から準備を進めていたようです。
ただ、中国ではやりたいからと言って誰でも映画祭をしていいわけではなく、電影局から許可を貰わなければいけません。
これがなかなか大変なのです。
大学レベルの機関でも、何度も北京詣でをし、役人を招いた会議を開き、長い時間をかけなければなりません。
実は私も一度その会議に呼ばれたことがあります。
専門家の意見を聞くというような会議で、私は外国人枠として都合がいいので呼ばれたのだと思います。
電影局の偉い人に意見を聞かせるのが目的なのに、その人は忙しいからという理由で、途中で来て、20分くらいで帰ってしまいました。
ただ、結果的には許可が下りて、来月に開催する運びとなったようです。

先月、彼らが映画祭に日本からあるゲストを呼びたいと、私に相談してきました。
でもその人はスケジュールの都合がつかなくて、行けませんでした。
そしたらしばらくして、今度は私に来て欲しいと言ってきました。
何をすれば良いのか聞いたら、開幕と閉幕の式典に参加するのと、論壇のときにゲストとして登壇して欲しいということでした。
東京から杭州までの航空券も出してくれると言うので、以前からの付き合いもあるから、行くことにしました。

で、今日になってある人から、西湖国際紀録片年展の公式サイトに私のことが載っていると連絡がありました。
みたら、私は提名人ということになっています。
何をするのかわかりませんが、杜海濱などもいるD20という部門の提名人の一人として、1作品と2名を選び、合計45万元の賞金を出すとあります。
何のことでしょう? 全然聞いてないですけど。

しかしまあ、中国は金がありますね。
映画祭の最優秀作品には25万元の賞金が出るそうで、賞金総額は85万元!
せっかくだから、良い映画祭にしてほしいものです。

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検定  


調べ物があって東京都立図書館へ行ってきました。
入ったのは初めてだったのですが、さすが都立図書館だけあって、なかなか近代的ですね。

まず入館時に入口で入館証を受け取るのですが、それに番号とバーコードがあります。
入館すると、検索パソコンがずらりと並んでいて、それにバーコードを読み取らせて検索をします。
読みたい本が書庫にあったらボタンをクリックし、暫く待てば、館内の各階にあるモニターに自分の番号が表示され、カウンターで本が受け取れるという仕組み。
図書館も進化するんですね。

ここは蔵書の量も多いので、見たことがないような本もたくさんあります。
ちなみに私が書いた本も置いてありました。

語学のコーナーで中国語関係の本を眺めていたら、『日本人を対象とした旧「満洲」中国語検定試験の研究』という本がありました。
どうやら博士論文らしく、著者は中国人。
中国の学者が、日本で研究して書いたもののようです。
パラパラめくってみたところ、当時の試験問題も掲載されていました。
でも、結構難しいのです。
私も一応中国語学習者ですが、正直合格できる自信がありません。
満州の言葉なので、今の普通語より東北方言に近いというのもあるし、今では使われていないような表記方法もあったりするのかもしれないけど、全然理解できないものもチラホラ。
こんな検定試験が行われていたとは、当時の日本人の中国語力は相当なものですね。
やはり現地で育った子供とかもいるから、李香蘭のようにネイティブなみの人も少なくなかったのだろうし、大勢いる日本人の中には優秀な人もたくさんいたのでしょう。

開拓団のイメージもあり、日本人が固まって住んでて中国語もろくに理解できてなかったように想像してましたが、これでかなり印象が変わりました。
非常に興味深い本なので、時間があったらちゃんと読んでみようと思います。

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困難  


香港国際映画祭(HKIFF)のサイトを見ていたら、『笨鳥』がキャンセルになっていて驚きました。
よくわからないけど、止むに止まれぬ事情があるのでしょう。
この作品はかつて香港亜洲電影投資会(HAF)で賞を獲った作品でもあり、HKIFFで上映できないのは残念だろうと思います。

今年のHKIFFは、いつになく大陸の作品が少ないというか、魅力的な作品が少ない気がします。
一部にはHKIFFは中共に屈したのではという意見もあるようですが、むしろ電影促進法による映画会社側の事情でしょうね。
ロッテルダムやベルリンの頃はまだ電影促進法が施行されていなかったから、駆け込みで出品できたけど、HKIFFは施行されてから最初の大きな映画祭(中国映画にとって、という意味ですが)なので、とりあえず様子を伺っているのだと思います。
ベルリンに参加した映画会社のところに、その後電影局からいちいち連絡があったという噂も聞きました。
睨みが効いているのでしょうか。
それでもHKIFFのコンペ入選作をみると、フィクション部門にはどう考えても検閲を通してなさそうな映画もあるし、ドキュメンタリー部門も馬莉の『囚』といい郭熙志の『工廠青年』といい、検閲は通してないと思うので、その限りとも言えませんが。

実は、土曜日に栗憲庭電影基金で『囚』の中国初となる上映があったのですが、政府からの妨害もなく、無事に287分の上映を終えることができたそうです。
何かあっても可怪しくないと思っていたので、ちょっと意外でした。
ドキュメンタリーにはさほど厳しくないんでしょうかね。
それとも両会が終わったばかりだから、ちょっと緩んだとか?

今年はHAFへの参加を見合わせた中国人監督もいると聞いて、ビックリしました。
そこまで厳しくなっているんですね。
今後は資金集めも容易ではなさそうです。
ますます政府の顔色を伺いながら作るつまらない映画ばかりになって、映画業界が「促進」されていくんでしょうか。

知り合いの青年が、半年くらい前から北京の映画宣伝会社で働くようになったのですが、もうこの業界に未来が感じられなくなったらしく、他業種への転職を考えていると言ってました。
宣伝会社でさえそう思うんだから、映画を作る人はなおさらでしょう。

この現状には于広義もかなり嘆いていて、今日も「映画は厳しいから、お前は日本で中国語の先生にでもなれ」「中国語を学びたがっている女の子を掴まえればいい」と言われました。
仮に中国語を学びたがっている女の子がいたとしても、カワイイ娘はなかなか掴まらないんですがねえ。

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転居  


このたび転居をして、三十数年ぶりに都民になりました。
春なので新生活です。
今度の住居は、築46年のボロ物件で、大通りと線路に挟まれた凄い所です。
なので、とにかく安いです。
もちろんそんな物件が好きなわけではなく、あえて居心地の悪い所に住んで、ハングリー精神を養おうという「臥薪嘗胆作戦」です。
1年くらい住んだら、もっと良い所へ引っ越そうと思っています。

もともと引っ越しが嫌いじゃないというか、大学に入ってこれまで二十数回引っ越していて、いろんなところに住んでみるのが楽しいのです。
今回はさすがに、これまで住んだ中で最古の物件ですけど。
ただ、中国のマンションに比べたらキレイかな。

そんなボロ物件ですが、不動産屋からインターネットが無料だと言われました。
でも、よく聞いたら無料なのは1Mの超低速サービスのみで、それ以上の速度にすると有料なのです。
しかも、ケーブルテレビのネットサービスだといいます。
以前にも、日本でケーブルテレビのネットを契約していたことがあって、そのときはしょっちゅう停まるし、なぜか異常に遅いし、ロクなもんじゃなかったのです。
できれば1Gの光とかにしたいけど、その場合は工事費とかがかかるし、大抵は2年以上の契約の縛りがあり、私のように1年くらいで出たいと思っている人には不向き。
悩めるところです。

部屋の申し込みをした日、さっそくケーブルテレビ会社から電話が来ました。
テレビの初期設定をするので、引っ越しの日に来ると言います。
私はテレビを観ないのですが、この物件は最初からテレビが付いているので、不動産屋が連絡をしたのかなと思い、ネットのこともあるのでとりあえず来てもらうことにしました。

引越し当日、さっそくスーツを着たケーブルテレビの人が現れ、初期設定をするから上がらせてくれといって入ってきました。
その人はテレビのスイッチを入れ、画面が映っているのを確認すると、スイッチを切りました。
え?それだけ?
そんな確認なら自分でできるじゃん。
すると今度は、「ところでネットの契約はどうしますか?」と聞いてきます。
どうやら初期設定などもともと必要なく、ネットのセールスに来ただけのようです。
なんか感じ悪い。

その人は、1Mだと無料だけど、遅くて使い物にならないから、月々3300円の320Mにしろと言います。
使い物にならないサービスを提供しているのは自分たちなのに。
一応、建物でケーブルテレビに入っているので、定価よりは安いらしいけど、NTTの1Gで3800円とかだから、微妙な金額ではあります。
「どうしますか。320Mでいいですか」
「それ、今決めないとダメなんですか」
「皆さん、そうされてます」
「他社と比較したいから、パンフレットか何かください」
「パンフレットはありません」
「は?無いんですか?詳細もわからず契約するんですか」
「ホームページに書いてあります」
「とりあえず無料の1Mを使って、あとで切り替えるのはダメですか」
「切り替え料が五千円かかります」
「随分高いですね。1Mと320Mしか選択肢は無いんですか?」
「そうです」
「でも、不動産屋は他にもあると言ってましたよ」
「12Mというのはありますが、遅くて動画も観れませんよ」
「12Mと320Mの中間は無いんですか」
「ありません」
「たしか120Mというのがありますよね」
「ああ、あります。でも値段は320Mとほぼ同じですよ」
「具体的にはいくらですか」
「ちょっと調べないとわかりませんね」
どう考えても怪しすぎです。
会社としてはコストは同じだから、そりゃあ一番高い320Mに加入させたいのでしょう。
調べると320Mといっても下りだけで、上りは10Mしかなく、全然使えません。
だから資料とか見せたくないんでしょうね。
また、ネットで調べるとものすごく評判が悪く、実測ではスピードが100M出てないのは当たり前、酷いのは1/100なんて人もいて、解約したいけど違約金がかかるから何とかしたいという意見ばかり。
その場で結論を急がせるのはそのへんにも理由がありそう。

こう考えると、ケーブルテレビはありえない選択です。
しかし、他社は工事からやるから数万円は高くなるし、2年使わないと更に違約金が。
それに、今から頼んでもネットが使えるのは4週間後とかいいます。
待てません。

うーん、広州では4Mが三千円だったし、それに比べたらケーブルテレビもありかな。
でも0.5Mしか出てないという書き込みもあるしな……。
臥薪嘗胆作戦はやっぱり大変。
皆さんは、ちゃんと光が引いてある物件を探してくださいね。

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