鞦韆院落
北京で過ごすインディペンデント映画な日常
 



なんだかんだで1ヶ月も滞在してしまった広州に別れを告げ、極寒の北京へ戻ることにしました。
広州はすっかり暖かくて、もっと長居していたいのはヤマヤマなのだけど、帰らざるを得なくなったのです。

例の大家から電話がかかってきて、「どこにいる?」と聞かれました。
「まだ広州だけど」
「そうか…。じゃあ、帰ってきてから話す」
「どうかしたんですか」
「実は…、給湯器が壊れて、階下から苦情がきたんだ」
うちの給湯器は、家を暖めるために各部屋に張り巡らされている水道管と直結しているのです。
きっと、この寒さで水道管が凍って破裂したに違いありません。
「それって、部屋じゅう水浸しってことですよね」
「直したから大丈夫だ。心配するな」
直したっていうのは給湯器のことで、部屋じゅうの物が濡れてることについては全然大丈夫じゃないと思うのだけど。
あれもこれも濡れてしまっているのじゃないかと思うと、すごくブルーになります。

今後は他にも日本とのやり取りとか、北京での撮影の手伝いとかの予定もあるので、とりあえず急いで北京に戻ることに。
まだ列車のチケットは売り切れの状況だったため、1200元も払って航空券を買いました。

趙大勇に帰ると告げると、彼は生後9ヶ月になる愛娘を抱きながら「バレンタインに帰らないといけない用事でもできたんだろ」とニヤケています。
バレンタインじゃなくて破裂した給湯器のせいだなんて、説明する気にもなれません。


お見舞いチョコを贈りたい方はどうぞご遠慮なく。

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『黄瓜』で東京フィルメックスにも参加した周耀武によるホラー映画です。

インディペンデント映画を作っている人の中には、商業映画を目指している人ももちろん少なくはないわけで、そういう意味で彼は二本目にして作品を公開させた、順調な監督といえるかも知れません。
あくまでも、公開させたという点において、ですが。


莫小奇演じるゲーム会社のOLが、胡兵演じる恋人との倦怠期を解消すべく、友人カップルを誘って南の島に旅に出る。
そこには建設中に放置されたホテルひとつしか宿はなく、老人と気が狂った彼の息子だけが住んでいる。
ときどき妙な人の気配を感じつつ、島でのバカンスを楽しむ彼らであったが、やがて友人カップルが老人とその息子に襲われて……。


ご存知のように、中国ではホラー映画を作ることが大変難しいです。
レイティングシステムがないので、子供でも見られる作品でなければ審査を通らないため、あまりに恐ろしい描写は使えません。
また、迷信はいけないという建前から、霊などを扱ってはいけません。
殺人犯を描く際にも、警察の優秀さをアピールしなければならないので、限界があります。
結局のところ、すべては精神を病んだ主人公の幻覚だった、あるいは夢だったという結末に落ち着きます。
中国のホラーはまず例外なくそうで、たいして怖くもないわけです。

それでも、ホラー仕立てで面白い作品を作ることは可能だと思うのですが、残念ながらこの作品も従来の中国ホラーの典型から離れていません。
知名度のある俳優を使い、中には韓国人俳優もいたりするけど、客が呼べるほどのキャストとは言いがたいですね。
私はけっこう莫小奇が好きなのですが、この映画では「年取ったなあ」という感想しかありませんでした。
いろんな意味で、非常に残念な作品。
もう少し彼らしいというか、今までのホラーにないタイプの映画を見せて欲しかったです。
彼としてもこの映画はあくまで商業映画として割りきって作ったようで、今回は金儲けのためで、芸術映画もまた撮りたいと話してはいたのですが、どうなることか。
次の作品に期待するとしましょう。

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趙大勇の次の作品にも関わることになっているので、その製作に関する打ち合わせをするために香港へ行ってきました。
広州から香港へは直通の列車が出ていて、広州東駅で出境手続きをして、香港の紅磡駅に着いたら入境手続きをします。
切符にハサミを入れるのが、なんとも懐かしい感じ。


この列車はさほど混んでおらず、2時間ほどで香港へ着きます。
香港は広州よりさらに3,4℃くらい気温が高く、街行く人の服装も1枚少ないです。

今回の宿泊は香港大学の柏立基学院。
学院という名前ではありますが、その実は招待所です。


趙大勇の製作パートナーであるアメリカ人のDavidが香港大学で働いているので、彼が予約してくれました。
香港大学は辛亥革命の年に設立された伝統校で、授業はすべて英語で行われているのだそうです。
上環から山の斜面を這うようにキャンパスが広がっていて、およそ敷地内に平地というものがありません。
古い大学だというのもあるかも知れないけど、キャンパス内を移動するには手すりのついた狭い山道を登ることになります。
しかも柏立基学院はその最上部にあるため、歩いて登るだけで全身汗だくになってしまいます。
夏はたまらないでしょうね。



香港には2泊し、多国間で出資のことなどを話し合いました。
撮影は中国ですが、とても国際的なプロジェクトになりそうです。

広州や香港でやたらと食べてばかりいたので、宿舎の体重計に乗ったら先月より4キロも増えていました。
夏には映画のロケ地である山奥へ行くことになりそうなので、体力づくりをしなければ。

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先日お伝えしたロッテルダム国際映画祭で、ターガーアワードが発表されました。
今回長編でタイガーアワードを獲った作品は3つあり、そのうちのひとつが黄驥の『鶏蛋与石頭』でした。
おめでとうございます。
これから世界中の映画祭をまわることでしょうから、日本でも今年上映されるでしょうね。
受賞は予想通りと言われるくらいとても評判がいいので、早く見てみたいです。

それから、NETPAC賞には武権の『感情動物』が選ばれました。
これは昨年10月に宋荘の映画祭でやった作品で、私は見られなかったけど後日監督にDVDをもらいました。
長時間写真みたいにずーっと止まったままの映像があったりと、いかにも芸術家らしい作品(彼は長年アーティストとして活動していて、これが初映像作品)ですが、最近の中国インディイーズで流行の屠殺シーンがここにも出てきて、しかもロバで、私は見ていられなくなりました。
でも、もう一度見直してみようかな。



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掃除  


農暦も正月初九となり、これまで春節で休んでいた店も営業を始め、広州の街は活気を取り戻しています。
まだ仕事が休みの人が多いからか、昼でもショッピングモールは大混雑です。
このところ10日間くらいずっと雨が続いていたのですが、今日は天気もよく、数日前まで7℃くらいだった気温は20℃を越え、まさに春が来たという感じです。

そんな陽気のなか、私は家にこもって掃除に明け暮れていました。
L氏の家はとにかく汚れていて、どうやら今まで一度も掃除というのをしたことがない様子。
初めてこの家の台所に入った時、ここで作ったものは食べたくないなと思ったくらいで、冷蔵庫を開けたらその匂いで吐き気をもようしました。
でも、彼は時折何かを作っては私に食べさせるのです。
断るわけにもいかず我慢して食べるわけですが、もうこうなったら私が台所を掃除する他ないので、彼が出かけている隙をみて徹底的に掃除してやりました。
しかし何しろ汚いので、1日かけても半分しか終わりません。
また次回掃除をしなければ。

もちろん汚いのは台所だけではなく、バスルームなんてもうそこらじゅうが黒ずんでヌメヌメして、常に扉に引っ掛けたままになっている彼のバスタオルは一度も洗ったことがないらしく、とても臭いです。
私の寝ている部屋も、曇りガラスだと思っていたらタバコのヤニだったり、とにかく凄いのです。
快適に過ごすために私は彼の留守をみはからっては掃除していて、本人は全くそのことに気づいておらず、時々来る趙大勇たちのほうが「何かキレイになってないか」というのだけど、彼は「先月片付けたからだ」なんて言ってます。

ただ、彼の弁護をしておくと、このレベルというのは中国では特に不潔なわけではなく、ごく一般的です。
どこの家庭でも、洗面所に行くと雑巾だかタオルだか分からない汚い布しかかかってなくて、しかも濡れていたりするものです。
不動産の物件探しで部屋を巡っても、キレイな台所なんて見たことありません。
上海では日本人に物件を貸したがる大家が多いそうで、理由はキレイに使ってくれるからだそうです。
中国人の家で生活するというのはそういうことです。

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シンガポール映画祭が今年も開催されることは以前にもお知らせしましたが、近々関連イベントを開くようです。
私は関わっておりませんが、頼まれたので告知を掲載します。

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注目のシンガポール人アーティスト・映画監督が森
美術館での個展で来日します。
この機会にイベントを行います。皆様、是非お越し下
さい!
**Sintok シンガポール映画祭 2012 キックオフ・イベ
ント 
(映画祭の開催は5月12〜20日です。)
2月4日『ホー・ツーニェン作品上映会&トークショー』
日時▷2012年2月4日(土) 17:30開場 18:00開演
場所▷恵比寿 タイムアウト カフェ&ダイナー
www.timeoutcafe.jp/info
料金▷\1,500  (1ドリンク代込み)
http://www.sintok.org/2012/kickoff.html
https://www.facebook.com/SintokSFFT
http://www.mori.art.museum/contents/mamproject/project016/index.html#a01


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IFFR  


ロッテルダム国際映画祭が開催中です。
私の知り合いも、続々とロッテルダム入りしているところです。

思えば去年のこの時期、私もロッテルダムにいたのですね。
一年は長いような短いような。

さて、今年もこの映画祭では中国のインディペンデント作品が多数紹介されています。
中でも今回は中国ドキュメンタリー特集「Hidden Histories」があるので、20本ものドキュメンタリーが上映中。
我々の身内では、徐童の『老唐頭』や張賛波の『有一種静呼荘厳』、于広義の『独り者の山』など。
他にも季丹や叢峰、海波、炭嘆など友人たちの作品がいろいろ出ています。
そして、この特集で中心となっているのが、艾未未の作品群。
今回はAiweiwei Cafeなるものも出現しているらしく、朱日坤はそれに呼ばれていた様子。

それからコンペ部門には黄驥の『鶏蛋与石頭』が出ています。
中国作品としては唯一ですね。
この作品の撮影は、監督の夫であり『再生の朝に』の撮影でも知られる大塚竜治さん。
基金の学校の先生でもあります。
二人は長年一緒に作品を作ってきていますが、長編は確か初めてだったはず。
前評判もとてもいいようで、私も楽しみにしています。

他にも陳翠梅たちが撮った環境をテーマにした短篇集だとか、いろいろあります。
きっと盛り上がっていることでしょう。
私もまたいずれ参加してみたいものです。

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広州といえばやはり食べ物が魅力的。
なかでも飲茶は外せません。
いま滞在しているところから歩いていける天河城の稲香は、飲茶で人気の店。
広州に遊びに来ている趙海(昨年の山形で顧桃と一緒だった彼の弟分)と2回も行きました。
これだけ注文しても111元。日本円で1400円くらいでしょうか。
もうヤミツキです。


とはいえ、いつもこんな贅沢をしているわけにはいきません。
私が広州で一番ひんぱんに食べているのが腸粉(知らない人はwikiを御覧ください)。
いろんな具が注文できるので、飽きがきません。写真は蝦が入ったもの(15元)。
地元では、腸粉とお粥をセットにして食べます。


広州人は食に貪欲で、いろんなモノを食べることで知られています。
98年に広州に来たときは、まるで動物園のような食材市場に行って、孔雀やタヌキやゾウガメが売られているのを見たものです。
SARSをきっかけに取締りが厳しくなったことや、野生動物保護が言われるようになったことで、今はそういう光景は見かけなくなりました。
それでも、広州の市場にはよその土地にはないものが平然と並んでいたりします。
うーん、さすが。


趙海と西関のあたりをブラブラしていたら、彼がサトウキビ汁を買ってきました。
これも南方ならではですね。
若干の青臭さはあるけど、悪くありません。


ところで、全然関係ないけど午後の紅茶を久しぶりに買いました。
日本でもあまり買わないのに中国でつい買ってしまったのは、「北海道メロン味」だったから。
キリンが上海で製造したものです。
原材料名に北海道メロンエキスと書いてあるから、たぶん北海道から持ってきてるんでしょう。
中国人は北海道が好きですからね。
最近発売されたのかどうかは不明ですが、北京で見た記憶はありません。
蓋をあけると、部屋中にメロンの匂いが広がるくらいメロン味です。
思っていたより悪くない感じでした。


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初詣  


私が泊めてもらっているアパートは、L氏というCMディレクターが借りているもので、彼もここに住んでいます。
なので、私は居候させてもらっている立場です。
中国人は気さくな人が多いので、彼は居候について別に気にしていないというか、むしろ暇つぶしの相手がいていいと思っている感じです。
ただ、私も彼も自分から話しかけるタイプではないので、二人でいてもいつも無言です。
それでも私は多少気を使っていて、どこかへ誘われればなるべく付いて行くし、食事なども一緒にとるようにしています。

そんなL氏が、光孝寺へ行くぞと言い出しました。
光孝寺は嶺南地区で最も古いお寺の一つで、かつて鑑真和上が日本へ行こうとして海南島に流された後、ここにしばらく滞在したともいわれる由緒あるところ。
中国でも年が明けると寺へお参りに行く習慣があり、大年初一となる23日は広州に住む信心深い人々がこの寺に集まってくるのです。

私は信仰心がないので、旅先では寺や教会によく行くものの、祈ったことは一度もありません。
日本でも初詣に行ったことはありません。
だから、何もこんなに人の多いときに出て行かなくても…とは思ったのですが、居候という後ろめたさも手伝って、広州見物のつもりで行くことにしました。

地下鉄の西口門を出ると、すでに参拝客であふれています。
そこら中にまったく同じ風車付きの飾り物を売っている屋台が並んでいて、多くの人がそれを手にしています。
破魔矢みたいなものでしょうか。


門前通りは乞食だらけ。
中国じゅうから乞食を集めたのじゃないかと思うくらい、いろんな種類の乞食が通りに整然と並んでいて、まるで乞食の博覧会です。
楽器を奏でたり歌を歌う乞食が多いので、騒然としています。

人ごみをかき分けるように歩くと、すぐに光孝寺にたどり着きました。
思ったよりも寺は小さい感じ。
凄い数の人が集まっていて、門をくぐるのも至難の業です。


中国では祈るときに大きな線香を焚くのですが、線香に火をつけた状態で人が群がっているので、危ないし煙たいし動きにくいしで大変です。
私は参拝しないので、人ごみをさけてL氏を待っていました。
境内は煙でモウモウとしています。
大量の線香は頻繁に撤去しなければ後の人たちが挿せないので、参拝者が挿すなりゴーグルをつけた作業員が撤去していきます。
これでもご利益はあるのだろうか。


寺を出ると、L氏は陶街だの北京路だのいろんなところを巡りだしました。
好意的に考えれば、広州を知らない私を案内しているつもりかもしれないけど、彼は終始無言でマイペースにあれこれ買い物をするだけなので、私はただ付き合わされているという感じがしないでもありません。

夕方になり、利華飯店というレストランの前まで来ました。
庶民的な、どちらかというとキレイじゃない雰囲気ですが、有名店らしく、表にはたくさんの人が並んでいます。
昼ご飯も食べていないので私はすっかり腹が減っており、わざわざ並んでまで食べたくないのだけど、彼はここで食べると言い出しました。

(手前にあるのが門松のような円柱型のみかん飾り。入口の左側にも対のものがある)

外で待つこと30分。二人はずっと無言です。
やがて順番が来て、中へ入って行きました。
中は結構広くて、4階まであります。
彼が適当に注文をして、料理が来るまでまた無言で待ちます。
彼はずっと携帯をいじっています。


出てきた料理は、煮た豚足、茹でた鶏、揚げたカレイ、炒めた青菜の4品。味は普通。
黙々と食べ終わると181元を払い、二人で地下鉄に乗って黙って帰るのでした。

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趙家の年夜飯。

奥さんの実家から大勢が来たため、この日は子供も含めて9人分の食事。
ほとんどは趙大勇が作りました。
刺身があるのは、私の為に用意したわけではなく、最近は中国の家庭でも特別なときには刺身を食べるようになっているのです(でもほとんどサーモンしか食べません)。
このごろの中国人は通ぶってワサビを大量に使用します。
ちなみに刺身は近所のジャスコで購入。

年越しに欠かせない餃子。

これも具と皮は趙大勇が一人で作りました。
北方の人は誰でも餃子が皮から作れるのですが、南方の人はほとんど作れません。
奥の皿にあるこれから茹でる餃子は私が包んだもの。

広州の花市。

市内のスタジアムを囲むように、数百メートルにわたって花屋が延々と連なっています。

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