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楽天の08年12月期決算に思う

2009-02-16 | 会計・株式・財務

お疲れ様です。

楽天の決算が出ました。
日経さんの記事の後で、簡単にコメント。

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楽天の前期、営業・経常益が最高 最終損益は赤字に
 
 楽天が13日発表した2008年12月期連結決算は営業利益、経常利益がともに最高
を更新した。経常利益は445億円(前の期は23億円)だった。割安な商品を求める
利用者が増え仮想商店街「楽天市場」などが堅調だった。一方、保有するTBS株
の大幅下落で、評価損を特別損失に計上したことが響き、最終損益は549億円の
赤字(前の期は368億円の黒字)だった。最終赤字は4期ぶり。

 売上高は前の期比17%増の2498億円。主力の楽天市場を含むEC(電子商取引)
事業は20%増の923億円。会員数の増加に加え平均購入回数も増えた。
「大概のものはネットの方が安く買える。不況には強い」(三木谷社長)
としており、巣ごもり消費が追い風となっている。
同じく、割安なホテルなどを探しやすいトラベル事業の売り上げも24%増の
165億円だった。

 EC事業などの伸びに加え、クレジット関連事業が貸倒関連費用などの一巡で
営業黒字に転換したことが寄与し、営業利益は471億円、経常利益も445億円と
それぞれ最高益を更新した。

(引用終了)
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(参考資料)


■決算短信

■説明会資料
このうち、「スライド資料」も適宜ご参照ください。


 
(コメント)


①~③は釈迦に説法ですけど・・・


 
①この会社は儲かっているようで儲かっていませんよね。


今回の最終赤字で連結・単体共に欠損金となってしまいました。

要は、事業を立ち上げて何年も経過しているのですが、
通算すると儲けがゼロ以下。

その間に実施した配当は一体何だったのでしょうか。
(別に違法じゃないけどね)


過去の増資等で自己資本はそれなりに厚いこと、
そして過去に行ったのれん一括償却(今は禁じ手)の影響もありましたので
どうこういうつもりもありません。


ただ、今回行う配当は、資本の払い戻し(厳密には資本剰余金を配当原資)
である点にはご留意ください。(短信P.3)
語弊がありますが、いわゆる「タコ配」ってことになるのでしょうか。
                  ↑
        (リンク先のアニメーション解説がオモロイ)

となると、三木谷社長はタコ社長か。
(寅さん映画、久しく見ていないよなー)



 
②貸借対照表で記入ミス?


短信P.12
  「有形固定資産」1.土地   -
            2.その他  -
            合計  21,114(百万円)
   
内訳が「-」になっているのに合計額はちゃんとある・・・・・。
(せめて「その他」ぐらいはあっておかしくない。)
   
・・・・・「コレじゃぁ有形というよりも"無形"固定資産!」 
 ってなツッコミを待っているのでしょうか?
 
→<追記>親切な方より解説コメントをいただきました。
 コメント欄をご参照ください。
 それにしても、簡略化もいいんですが、
 開示される、使える情報がどんどん減っている印象がします。


 


③本質は金融会社か


これも今に始まった話ではないですが、総資産1.1兆円のうち、クレジット・
証券業で8千億円。

08/12期は、前年、過払利息費用計上で大赤字だったクレジット事業の
営業損益が▲251億円→107億円へと大きく改善したことが
最大の営業増益要因。
そこに好調なEC事業の利益が上積み(前期比+70億円)されていった構図。
ただし、もう一つの柱、証券事業が金融危機のあおりなどから失速気味。


営業キャッシュフローも▲134億円と赤字になっておりまして、
クレジット事業の割賦売掛金や営業貸付金の伸びなどが影響しているよう
なのですが、自己資本が毀損し有利子負債も増加している中で
少し財務面では無理しているのではないかという印象がします。

スライド資料では、主要事業会社ごとのバランスシートの概要を開示。
これは評価できます。欲を言えばこれに加えて、事業別のキャッシュフローと
その解説も付けてほしい。
さすれば、成長企業として許容しうるマイナスのキャッシュフローなのかどうか
理解が進むと思いました。


 

④気になる今後 ~利息返還請求の不安は再び高まるおそれも・・・。


前期に回復したクレジット事業ですが、例の貸金業法からみで気になる動きが
出てきております。楽天KCに与える影響には留意が必要だと思いました。


と申しますのも、週刊ダイヤモンド2月21日号 P.14~
「最高裁と金融庁が放った“爆弾“ 消費者金融は消滅する」
という記事を目にしたからです。


詳細は現物でご確認いただくとして、ポイントをさらりと・・・

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■1月22日 最高裁判決により過払金返還請求の消滅時効が事実上、認められなくなった
(→契約を解除してから10年たたないと時効にならないうえ、一定の枠内で借入と返済を繰り返すなリボルビング契約は、一連と取引となっているため延々とさかのぼって返還請求できるということに。)
   ↓
弁護士や司法書士による完済者の返還請求“掘り起こし”が増える
(10年以上取引のある利用者は30%以上いるとのことで、時効の壁がなくなったことで顧客層は格段に広がる)


■信用情報データベースには、消費者金融利用者の履歴が記録されており、利息返還請求を行った場合「契約見直し」と登録される。しかし、金融庁は貸し渋り対策としてこの記録の登録をやめるよう圧力をかけていると。
  ↓
で、この登録がなくなると、・・・・やはり返還請求が増えると。
  ↓
返還請求すると二度とおカネを借りられなくなるという懸念から解き放たれ、
迷っていた人が返還請求に殺到する可能性が高いと。

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先日、都営三田線に乗ったのですがその広告を見て驚きました。
目にした3つに1つは、弁護士・司法書士事務所のものだったからです。
大不況と相まって、これらの広告のウエイトがさらに高まる予感。

一体どうなっちゃんでしょうか?・・・この国は。


そして、当の楽天ですが、
EC事業は当面好調でしょうからカバーできるとは思います。
でも景気悪化でクレジット業務でも延滞が増えそうですし、
上記の動きもあるので金融関係の動向には注意が必要でしょうね。

以上、素人による戯言でした。

なかのひと

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1 コメント

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Unknown (経理マン)
2009-02-17 23:15:33
当期の有形固定資産が合計だけ表示されているのは、「表示方法の変更」にあるとおり、重要性が乏しいので土地の区分掲記をやめたため、残りはその他だけなので「有形固定資産」として一括表示することに変更したからみたいです。
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