――絶対ありえない人の浮気現場を目撃してしまった、と思った。
「ねえねえサクちゃん? こんなのとかどうかな?」
「どれどれ…ああ、このくらいなら大丈夫そうかな?」
「じゃあ、一応これも追加しとこうか」
「でも、あまり数ばかりあってもね……有羽ちゃんは、どれがいいと思う?」
だって、その声は間違いなく私が知っている声だったし。
そちらを振り向いてみれば、間違いなく私が知っている人の姿が、そこに在ったんだもの。
…しかも隣に立った男性と顔と顔が見合うくらいの近くの距離で親密そうに寄り添っていて。
…しかも呼び合い方が『サクちゃん』に『ユウちゃん』!!?
「――ちょっとユウちゃん!?」
思わず、その腕を掴んでいた。
「え!? あ、マリちゃん、どうしたの……」
振り返ってビックリまなこで私を見つめた、その視線を捕らえて。
何事か言わんとしかけた彼女の言葉を遮るような勢いでもって、そのまま私は食いかかった。
「これ、どういうこと!? やっぱりタカシくんのことフッちゃったの!!?」
「―――はァ!!?」
なにゆってんの!!? と叫びかけたユウちゃん、だったが。
ふいに口を噤み、はああ…と深く大きく、タメ息を吐き出した。
「あのね、マリちゃん……」
そして額に手を当て、困ったように私を見やる。
「なんか誤解してるみたいだけど……」
「私だって、『誤解』って思いたいよ! でも、ショックだよ……ユウちゃんに、タカシくん以外のカレが居ただなんて……」
「だから、それが誤解だってば!!」
「えー? でも、そんな、こうやってデートまでしといて、そんなイイワケされても……」
「だから『デート』なんかじゃないってば! てか、こんなトコロでデートするハズないでしょうが!」
言われてハタ…と私は気付き、きょろっと周りを見渡した。
ああ、そういえばココって……、
「私たちは、ただ単に塾で教えるのに使うテキスト買いに来ただけよ!」
――ここは大手本屋さんの店内、問題集や参考書が並べられた売り場の一角。
たまたま本を買いに来た私は、偶然この売り場の横を通りがかり。
そこでユウちゃんの姿を見つけたんだった。
あまりに“ありえない光景”だったものだから、思わず慌ててしまって……ココがドコだかなんて、考えて行動する余裕なんて無かった。
(確かに……冷静に考えてみれば、中学生の参考書売り場でデートする大学生なんて、居ないよね……)
サーッと一気に冷やされたアタマの中で。
今度は、ユウちゃんと一緒に居た“連れ”の男性のことを思い出す。
ハッとして彼女の隣に目をやると……そこには、憤慨した様子の彼女とは対照的に、あくまでも穏やかで柔らかい笑みが、あった。
「…どうやら『誤解』も解けてくれたみたいだね」
自分に向けられた視線に気付いたのだろう、私に微笑みを投げ掛けてくれながら、彼が告げる。
「有羽ちゃんの友達かな? ――はじめまして、那珂川といいます」
◆『青春18片道切符~ただいまキセル恋愛中~』
…なんか、フと思い立ちました。
マリちゃんとサクちゃんのカップル、って、
それはそれで“お似合い”っぽいなあ…なんて(笑)
「ねえねえサクちゃん? こんなのとかどうかな?」
「どれどれ…ああ、このくらいなら大丈夫そうかな?」
「じゃあ、一応これも追加しとこうか」
「でも、あまり数ばかりあってもね……有羽ちゃんは、どれがいいと思う?」
だって、その声は間違いなく私が知っている声だったし。
そちらを振り向いてみれば、間違いなく私が知っている人の姿が、そこに在ったんだもの。
…しかも隣に立った男性と顔と顔が見合うくらいの近くの距離で親密そうに寄り添っていて。
…しかも呼び合い方が『サクちゃん』に『ユウちゃん』!!?
「――ちょっとユウちゃん!?」
思わず、その腕を掴んでいた。
「え!? あ、マリちゃん、どうしたの……」
振り返ってビックリまなこで私を見つめた、その視線を捕らえて。
何事か言わんとしかけた彼女の言葉を遮るような勢いでもって、そのまま私は食いかかった。
「これ、どういうこと!? やっぱりタカシくんのことフッちゃったの!!?」
「―――はァ!!?」
なにゆってんの!!? と叫びかけたユウちゃん、だったが。
ふいに口を噤み、はああ…と深く大きく、タメ息を吐き出した。
「あのね、マリちゃん……」
そして額に手を当て、困ったように私を見やる。
「なんか誤解してるみたいだけど……」
「私だって、『誤解』って思いたいよ! でも、ショックだよ……ユウちゃんに、タカシくん以外のカレが居ただなんて……」
「だから、それが誤解だってば!!」
「えー? でも、そんな、こうやってデートまでしといて、そんなイイワケされても……」
「だから『デート』なんかじゃないってば! てか、こんなトコロでデートするハズないでしょうが!」
言われてハタ…と私は気付き、きょろっと周りを見渡した。
ああ、そういえばココって……、
「私たちは、ただ単に塾で教えるのに使うテキスト買いに来ただけよ!」
――ここは大手本屋さんの店内、問題集や参考書が並べられた売り場の一角。
たまたま本を買いに来た私は、偶然この売り場の横を通りがかり。
そこでユウちゃんの姿を見つけたんだった。
あまりに“ありえない光景”だったものだから、思わず慌ててしまって……ココがドコだかなんて、考えて行動する余裕なんて無かった。
(確かに……冷静に考えてみれば、中学生の参考書売り場でデートする大学生なんて、居ないよね……)
サーッと一気に冷やされたアタマの中で。
今度は、ユウちゃんと一緒に居た“連れ”の男性のことを思い出す。
ハッとして彼女の隣に目をやると……そこには、憤慨した様子の彼女とは対照的に、あくまでも穏やかで柔らかい笑みが、あった。
「…どうやら『誤解』も解けてくれたみたいだね」
自分に向けられた視線に気付いたのだろう、私に微笑みを投げ掛けてくれながら、彼が告げる。
「有羽ちゃんの友達かな? ――はじめまして、那珂川といいます」
◆『青春18片道切符~ただいまキセル恋愛中~』
…なんか、フと思い立ちました。
マリちゃんとサクちゃんのカップル、って、
それはそれで“お似合い”っぽいなあ…なんて(笑)