ゆるりと生きる。

 
楽しいこと、おいしいもの、大好きな本や音楽のこと、思いつくまま気の向くまま。

なぎさ/山本文緒

2018-11-23 20:40:09 | や行の作家
なぎさ/山本文緒



故郷を出て佐々井と二人、久里浜で暮らす冬乃のもとに、連絡を絶っていた妹・菫が転がり込んできた。
一方、芸人に挫折し会社員となった川崎は、勤め先がブラック企業だと気付いていた。
だが上司の佐々井はどこ吹く風で釣り三昧。妹の誘いでカフェを始めることになった冬乃だが、夫に言い出せずにおり―。
小さな秘密が家族と暮らしに変化をもたらしてゆく。生き惑いもがきながらも、人生を変えてゆく大人たち。

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かなり久々の山本文緒さん。
どきどきしながら読みました。
この「どきどき」は山本さん読むとき特有のどきどきです(笑)
わかってもらえる人にはわかってもらえると思う(笑)

おもしろかったです。
やっぱり山本さんの人物描写は切り口がするどくて深いです。
人間ウォッチングみたいな才能に長けているんですよねきっと。

最初は冬乃にいらっとしていたんだけど、だんだん冬乃自身が変わっていくにつれ、
がんばれまけるな!と、いつのまにか冬乃押し。
夫や部下の川崎くんもなんとなくはっきりしない感じだったのが、
ちゃんとしてくるわけです。よかった・・。
大人になって社会に出てからも、人はどんどん変わることができるんだな。と、
静かな感動を覚えました。

終盤で冬乃の家族の闇も明らかになって、そうだったんかーい!って感じで、
妹の菫との関係も結局そうなんかーい!ってところで、若干駆け足で終わった感はあったのですが、
山本さん贔屓の私としては、よかったですありがとうございました、という感じです。
ていうかこれ2013年に出ていたんですね、遅くなってすみませんでした。

森は知っている/吉田修一

2016-01-20 21:13:30 | や行の作家
森は知っている/吉田修一



自分以外の人間は誰も信じるな――
子供の頃からそう言われ続けて育てられた。
しかし、その言葉には、まだ逃げ道がある。
たった一人、自分だけは信じていいのだ。

南の島の集落で、知子ばあさんと暮らす高校生の鷹野一彦。
東京からの転校生・詩織の噂話に興じるような、一見のどかな田舎の高校生活だが、
その裏では、ある組織の諜報活動訓練を受けている。
ある日、同じ訓練生で親友の柳勇次が、一通の手紙を残して姿を消した。
逃亡、裏切り、それとも? その行方を案じながらも、鷹野は訓練の最終テストとして初任務につくが――。
過酷な運命に翻弄されながらも、真っさらな白い地図を胸に抱き、大空へと飛翔した17歳の冒険が、いま始まる!

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めちゃくちゃよかったです。ものすごーくよかったです。
すっごく好きなタイプの吉田作品でした。
「太陽は動かない」のいわばエピソード0みたいなものです。
そうか、鷹野!そうだったのかおまえ!!!
風間さん、あなたそんなことが!!!(おちつけ。

実は「太陽は動かない」は私はそれほどのめり込めなかったんですけど、
これ読んでからもう一度読んだら、おもしろいかもしれない。
ていうかぜったいおもしろい、おもしろくないはずがない、読まねば!!

高校生の鷹野くんが、すでにスパイの訓練の最終テストですよ、
しかも鷹野くんの過去は凄まじいもので、もう涙涙。
You,スパイになっちゃいなよ!なるしかないよ!って感じで(どんな。
もうめちゃクール、めちゃハードボイルド。
一気に鷹野一彦ファンになりました。
続編をよろしくお願いします!!!

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「生きるのが苦しいんなら死んだっていい。
でも、今日死のうが、明日死のうがそう変わりはないだろ。
だったら一日だけでいいから生きてみろ。
その日を生きられたなら、また一日だけ試してみるんだ。」

64(ロクヨン)/横山秀夫

2014-07-20 23:21:59 | や行の作家
64(ロクヨン)/横山秀夫



警察職員二十六万人、それぞれに持ち場があります。
刑事など一握り。大半は光の当たらない縁の下の仕事です。
神の手は持っていない。それでも誇りは持っている。
一人ひとりが日々矜持をもって職務を果たさねば、こんなにも巨大な組織が回っていくはずがない。
D県警は最大の危機に瀕する。警察小説の真髄が、人生の本質が、ここにある。

(BOOKデータベースより抜粋。)

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はぁ・・よかったです。
久々の横山秀夫。いいです。やっぱり好きです。
647ページと長めなんですけど、ページをめくるごとに夢中になって、
読み応えがあり、楽しかったー!!!

ストーリーが小気味よく展開していくのはもちろんなのですが、
やはり横山さんの描く警察という組織、そこでミッションを果たしている職員、
そこの模様ですよねー、痺れる!痺れます!!

64事件という昭和64年に起きた未解決の誘拐事件を軸に、
ゆっくりと物語が進んでいくのですが、これがまたおもしろい。
決して、びっくりするようなトリックや派手な演出があるわけじゃないんだけど、
もうじわじわきます。じわじわー。
警察はもちろん、事件に携わる人たち、その家族、すべての登場人物が魅力的なんです。

この主人公の三上もよかったです。
こんな上司が職場にいたら間違いなく惚れますね。
すっきりした結末ではないのですが、これがまた考えさせられる終わり方でよかったです。

真相がわかっても、再読する価値大の一冊です。ありがとうございました。

路/吉田修一

2014-05-17 22:23:40 | や行の作家
路/吉田修一



ホテルの前でエリックからメモを渡された。彼の電話番号だった。
「国番号も書いてあるから」とエリックは言った。
すぐに春香も自分の電話番号を渡そうと思った。しかしエリックが、「電話、待ってる」と言う。
「電話を待っている」と言われたはずなのに、春香の耳には「信じてる」と聞こえた。
春香は自分の番号を渡さなかった。信じている、あなたを、運命を、思いを、力を―。
商社員、湾生の老人、建築家、車輛工場員…台湾新幹線をめぐる日台の人々のあたたかな絆を描いた渾身の感動長篇。

(BOOKデータベースより抜粋。)

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一気読みでした。よかったです。白吉田です。
ていうか吉田作品、いつから白・黒わける必要ができてしまったのでしょうか(笑)
まるくなっちゃったなー色々考えて仕事受けてるんだろうなーと思わないでもないですが、
でもまあいいです。これおもしろかったから!

7年にわたる台湾新幹線の建設工事の話が軸となっています。
そこに携わる人たちのドラマ。この先どうなっていくのかが知りたくて、
本を閉じられなかったです。長編なのにあっという間でした。
もっとビジネス寄りのストーリーかと思いきや、吉田さんの鋭い観点からの
人間模様がみっちり描かれていました。

前半は、それぞれの登場人物が点在しているのですが、後半、台湾新幹線の開通に向うにつれて、
登場人物がつながっていくのです。
ちょっと巧過ぎるというか、ぴたっとハマりすぎ感は正直あるんですが、
この作品、括りがあっての作品(企画モノ?)ぽくないです?(ただの想像ですけど。
だとしたら、逆にすごいと思います。ここまで書けるのか吉田さん!!と。
やっぱり人物描写が緻密です。登場人物のリアリティさって、あるラインを超えると、
それは感動につながると思うんです。

そして読んだ後は、台湾がいやでも大好きになる仕組みになっています(笑)
土地も、食べものも、そして人も、とても魅力的です。
なにかひとつのものを築き上げていく時、時間、お金、権力など必要なものはたくさんあるけれど、
一番必要なのは、やはり「絆」なんだなぁと思わされました。
いまさらそんなこと思わされるなんて!

で、思ったんだけど、やっぱり私、吉田さんの文章が好きです。
そんなにくせや特徴はない文章だと思うんですけど、ときどき「これこれ!」って思う言い回しとか、
文章の波みたいのがあって、うまく言えないんですけど、それがいいんです。
これからもずっとずっと書いてほしいです。

愛に乱暴/吉田修一

2014-05-12 23:03:18 | や行の作家
愛に乱暴/吉田修一



これは私の、私たちの愛のはずだった―本当に騙したのは、妻か?夫か?
やがて、読者も騙される狂乱の純愛。
“家庭”にある闇奥。“独り”でいる孤絶。
デビュー以来一貫して、「ひとが誰かと繋がること」を突き詰めてきた吉田修一が、
かつてない強度で描く女の業火。

(BOOKデータベースより抜粋。)

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うーん!!やな話ー!!!(笑)
題材的にも下世話だし、構成に仕掛けがされているんだけど、
それに気づいた時も、なんかすげーやな気持ちになりました。
あーもうわかったよ、わかりましたよ、と思いながら、
ものすごい勢いで読みました。おもしろかったです。

とりあえず登場人物の誰にも感情移入ができません。
まったくどいつもこいつもばかやろうです。
でもみんな真剣に必死に、愛とか家族とか考えてる。
みんな大真面目。まさにこれが私たちなんだろうな。
挙句に主人公の桃子は狂乱。狂気の沙汰。

で、なにが怖いって、狂ってる人が一番冷静なわけです。
自分が狂ってるなんて、夢にも思わない。
まあそういうものなんでしょうねー。

少しだけ「パレード」の感じを思い出しながら読んでました。
後味の悪さをとったらピカイチの吉田作品。
もういまめちゃ気分が悪いです(笑)
もう1冊吉田修一いきます!