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御伽噺19

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父親と私

2009-12-17 00:04:42 | 日記
『父親と私』

 私は単なる肉体労働者。働きもしない連中にもサービスする。身体を使いサービスを行う。私は一生、こうして生きていける訳もない。客とは煙草のキスをする。
「一服吸っていいかな?」
「どうぞ」
そんな事も会話する事もある。21才で、風俗嬢としても若い方だ。私はずっとこの店で働こうと思っている。父親はいつか死んだら私は一人になるだろう。孤独は悪い事ではない。ずっと独りで生きていく。それが正しい生き方かどうか知らないが。
 私は一生懸命サービスをする。ルックスもスタイルもあそこにも自信がある。客が指名してくれる。色々浮気して
「やっぱり、一番いいね」
そう言って、常連客になっていく。父親は未だに仕事をしている。もう年金を貰っているのに。死ぬまで働くよと笑っていた。私はそんな父親に育てられた。母親は早く天国に昇った。
 大変だったと思う。遺影に手を合わせて数珠を持って祈っていた。私は神道を信じているので、ただ手を合わすのみだ。
 父親は宗教を強制させたりはしない。私の性格を見抜いているからだと思う。私はきっと、父親がこの世を去ったら、父親の代わりに数珠を遺影に飾っておくつもりだ。
 仏教界の極楽浄土と、神道の天国は違うのかもしれない。そう思っている。
 私は何時もの通り、手を合わせてから、仕事場でサービスをする。私は玄人の女なのかも。なんて冗談半分でそう思っている。
 私は結婚なんかはしないでおく。恋人も適当に作る。最近は忙しくて恋人はいないが。私はやりまくって、やりまくって、女性ホルモンが分泌していく。客が会うたびに
「綺麗だね」
と言ってくれる。私は照れた振りをする。別にあまり自分では気が付かないし、そう思い込むのは危険だと思っているからだ。その割には過大な自信を持っているが。
でも、サービスを心がけているから。テクニックがなければ、いかにいいあそこだからといっても、私はそれ以外に人気集めの方法がないからだ。
「俺と結婚しないかい?」
ニートの青年が、馬鹿げた事を言うので笑ってしまった。
「働き口を見つけてからね」
そう言って、私は笑っている。いつかこの店から強制退去されるまで、この店で働こうと思っている。父親の通夜と葬儀は仕事をクビになっても必ず行くつもりである。