アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

情けな顔俳優ソン・セビョク

2011-09-11 | 韓国映画

ここのところ、続けてソン・セビョクが出演する映画を見たため、あの印象の薄い顔がまぶたに焼き付いてしまいました。ごくごく平凡な韓国男子の顔つきで、しかもぜんっぜん私の好みじゃないんですが(いや、そんなに強調しなくても)、キャラが変わってるせいか、それとも演技力のなせる技なのか、まぶたには一筆書きできそうなあの顔が焼き付き、あの少し吃音気味の声も耳にこびりついて離れません。

一作目は、『危険な相見礼』 (2011)。今年3月31日に韓国で公開され、大ヒットしたコメディ映画です。すでにあちこちで取り上げられているので筋はご存じかと思いますが、全羅道(チョルラド)出身の青年と、慶尚道(キョンサンド)出身の娘が恋に落ちるものの、この両地方出身者は犬猿の仲。特に娘の父親はチョルラド出身者をとことん嫌っており、父親に挨拶に行く(これが相見礼らしい。本当は両家の顔合わせを言うようなんですが)のに際し、青年はチョルラド出身がバレないようあらゆる手を使う、というのがストーリーの根幹です。これは夏の旅行の折キャセイ航空の機内で見たのですが、中国語字幕でもそのおかしさがビンビン伝わり、笑いを抑えるのに苦労しました。

そもそも、青年=ヒョンジュン(ソン・セビョク)も娘=タホン(イ・シヨン)もヘンなのです。ヒョンジュンは女性名のペンネームで達者な少女漫画を描いていて、ファンも多いのに、本人は全然冴えない純情男。タホンと知り合ったのも文通を通してだし、タホンがソウルにやってきてデートする時も、セーター肩掛け姿でダサい遊園地に誘う。一方のタホンはちゃんと人生の計算ができる大人の女なのですが、それを隠してすごいカマトトぶりっ子を演じています。時代が現代ではなく、20年ぐらい前に設定してあるらしく、長距離バスで帰るタホンと見送るヒョンジュンが別れ際にハート・マークを飛ばし合うシーンなど、気恥ずかしくて脂汗がにじみます。今なら誰もやらんでしょー。監督のキム・ジニョン、臆面もなく2人にヘンなことをやらせています。

さらに、脇役キャラがまた強烈。タホンの家に行くと、野球狂の父親(ペク・ユンシク)、家中で一番まともそうなのにウラがあった母親(キム・スミ)、少女漫画ファンで、さらに○○趣味まであるタホンの兄(チョン・ソンファ)、ああ勘違いの多い叔母さんが出現、ヒョンジュンはあっちでもこっちでも痛めつけられます。その”自虐の歌”がいちいち笑いを誘うのですが、さらに陰ながらヒョンジュンを見守るよう父から命じられた兄のテシク(パク・チョルミン)も陰から表に引き出されてしまい、お笑い合戦の仲間入り。この兄テシクの、全羅道訛りを出すまいとするパントマイムシーンは抱腹絶倒です。

全羅道と慶尚道はいずれも韓国の南部に位置し、距離的には近いのですが、方言というか訛りはずいぶん違うようです。どちらも、全羅北道と全羅南道、慶尚北道と慶尚南道と南北に分かれており、西側、木浦(モッポ)や光州(クワンジュ)があるのが全羅南道で、東側、釜山(プサン)があるのが慶尚南道です。訛りを聞けば出身が一発でバレるため、兄テシクは無言を通すのですが、ヒョンジュンも出身をソウルと偽るにあたって、全羅道訛りをソウルのDJ(イ・ハンウィ)に矯正してもらいます。

出てくる人が全部ヘンな人ばかりで、芸達者な俳優たちがそれをノリノリで演じています。その中で一番影が薄いのがソン・セビョクなのですが、その影の薄さがかえって新鮮。全部地でやっているのでは、と思わせられ、情けない顔が目に焼き付いてしまいました。

『危険な相見礼』の韓国公式サイトはこちら(予告編がすぐ始まるので音出ます)。予告編画面の下、ハートマークの付いている「サイトなんたら」をクリックすると、サイトに入ることが出来ます。あとは英語が書いてあったりするのでわかりやすいです。

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次にソン・セビョクと再会したのが『第7鉱区』。韓国でも8月4日に公開されたばかりなのに、早くも日本公開が決定。11月12日から新宿バルト9ほかで、3Dと2Dの両ヴァージョンが同時公開されます。監督は、達者なコメディ『木浦は港だ』 (2004)でデビューし、『光州5・18』 (2007)をヒットさせたキム・ジフン。余談ですが、この人も全羅南道ばかり舞台にして撮ってますねー。

『第7鉱区』はアクション・アドベンチャーものとでも言いますか、怪物との戦いをクライマックスにしたサスペンスもたっぷりの作品です。舞台は九州の西、東シナ海のただ中に浮かぶ石油ボーリング船。船とは言っても、「第7鉱区」と呼ばれる海上島のような場所です。ここで石油採掘に当たっているハ・ジウォン、オ・ジホら8人のメンバーは、「採掘見込みなしのため撤収」という本部からの命令にとまどいますが、そこにやってきたベテランキャプテン(アン・ソンギ)は採掘続行を決定、再び活気が戻ります。ところが、その頃からメンバーの不審な死が起きるようになり、やがて残ったメンバーは第7鉱区に巣くう怪物を目にしてしまいます....。

ソン・セビョクはメンバーの1人で、年かさの男(パク・チョルミン)を兄貴と慕う誠実な青年を演じます。『危険な相見礼』の兄弟に通じる設定ですね。上のポスターは韓国版アンジェリーナ・ジョリーと言われている(らしい。ホント、この映画ではアクションを一手に担っている)ハ・ジウォンを中心に、アン・ソンギと彼女の忠実な恋人役オ・ジホ(ヒーロー的な活躍はほとんどなし。惜しい!)を配してありますが、横長のポスターではソン・セビョク(左端)は3人の次ぐらいに大きい扱いです。ベテラン俳優のパク・チョルミンやイ・ハンウィよりも上の扱いなんて、注目度高くなりましたねー。

韓国版公式サイトはこちら。メイキングがすぐ始まったりするので、音が出ます。しかしこのメイキング、こんなにバラしてしまっていいのかしら? できれば映画を見たあとでご覧になる方がいいかも知れません。お、素顔のソン・セビョク、なかなか頭がよさげに見えます。

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立て続けに2本見たので、ものはついでとばかり、ソン・セビョクが大鐘賞助演男優賞や種々の新人賞を総なめにした『春香秘伝 The Servant 房子伝』 (2010) も見てみました。ソン・セビョク、なかなか出てきません。キム・ジュヒョクのあわわ...のベッドシーンが終わっても、1時間半ぐらい経っても出てきません。やっと出てきたと思ったら、変態長官のインパクトありまくりキャラ。こんな短い出演でも、映画賞をかっさらっちゃったのわかります。

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1979年12月26日生まれのソン・セビョクはもともと演劇畑で活躍していたようですが、 『母なる証明』 (2009)で映画俳優デビュー、2010年は『春香秘伝~』のほか、『生き残るための3つの取引』など合計4本に出演しています。今後はさらに活躍が増えるはず。この情けない顔にピンときたら、ソン・セビョクの名前を思い出して下さいね。

 


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