アジア映画巡礼

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'70年代のスーパースター、ラージェーシュ・カンナー逝く

2012-07-19 | インド映画

昨日たまたま、インドのフィルム・アーカイブ元所長P.K.ナーイルさんと連絡を取ることがあり、そのメールで男優ラージェーシュ・カンナーの逝去を知りました。2ヶ月ほど病床にあったあと、昨日7月18日(水)に死去、1942年12月29日生まれなので、享年69でした。逝去を報道した記事は、こちらこちらです。

 

ラージェーシュ・カンナー(Rajesh Khanna)は、私がインド娯楽映画に出会った1971年前後に一番人気があった男優で、当時は「スーパースター」「キング・オブ・ロマンス」と呼ばれ、絶大な人気を誇っていました。上の写真は、1978年1月にインドで購入したブロマイドです。ヒットした作品はたくさんありますが、たとえば次のようなものが人気でした。

1969 Aaradhna(祈り)監督:シャクティ・サーマンター/共演:シャルミラー・タゴール
1971  Kati Patang(糸の切れた凧)監督:シャクティ・サーマンター/共演:アーシャー・パーリク
1971  Anand(アーナンド)監督:リシケーシュ・ムケルジー/共演:アミターブ・バッチャン
1971  Haati Mere Saathi(象は僕の友達)監督:T.A.ティルムガム/共演:タヌージャー
1972  Amar Prem(不滅の愛)監督:シャクティ・サーマンター/共演:シャルミラー・タゴール
1973  Namak Haraam(裏切り)監督:リシケーシュ・ムケルジー/共演:アミターブ・バッチャン
1973  Daag(汚点)監督:シャクティ・サーマンター/共演:シャルミラー・タゴール

不治の病におかされながらも、明るく生きていく青年を演じた『アーナンド』のテーマソング・シーンはこちら。ラージェーシュ・カンナーのチャーミングな笑顔がいっぱい見られます。また、数奇な運命を辿り、2人の妻を持つに至った男の話『汚点』の大ヒットした歌のシーンはこちら。あと、ヒット曲をいろいろ生んだ『祈り』の歌は、トイ・トレインに乗るシャルミラー・タゴールに向けて歌われるこちらとか、ちょっとアブナイシーンのこちらをどうぞ。未婚の母ものの、先駆的作品でしたねー。

個人生活では、1973年に当時『ボビー』 (1973)でデビューしたばかりのディンパル・カパーディヤーと結婚して、世間をアッと言わせました。この結婚によりディンパルは映画界を引退、2人の女の子をもうけますが、結局数年して離婚(正式には離婚していない、という説もあり)。ラージェーシュ・カンナーはその後、時々映画に出たりしたほか、1991年から96年までは国会議員になるなど、政治活動も行いました。昔から彼のあだ名は「カーカー(おじさん)」だったのですが、「カーカー」という名は映画界より政界にふさわしいかも、と思ったりしたものです。

一方ディンパル・カパーディヤーは、離婚後女優復帰して多くの名作に主演、現在では『チャンスをつかめ!』 (2009)の母親役など、名脇役女優として活躍しています。ディンパルはその後サニー・デオルと一時噂になりましたが、結局再婚はせず、今回のラージェーシュ・カンナーの最後も彼女が看病して看取ったそうです。

また、2人の女の子のうち姉娘は後年、トゥインクル・カンナーとして女優デビューします。妹娘リンキー・カンナーも女優デビューしますが、こちらはあまりパッとしませんでした。トゥインクル・カンナーが現在アクシャイ・クマール夫人であることはご承知の通りです。というわけで、ラージェーシュ・カンナーはアクシャイ・クマールの義父にあたることになります。

映画『オーム・シャンティ・オーム』 (2007)では、1970年代の大人気スターとして「ラージェーシュ・カプール」というキャラクターが出てきますが、これはまさにラージェーシュ・カンナーをモデルにしたものでした。セリフの中には「キング・オブ・ロマンス」という表現が出てきますし、襟足の長いヘアスタイルもラージェーシュ・カンナーそのもの。下の写真も、1970年代にインドに行った時買ったブロマイドです。

また、前半の「ドリーミー・ガール」プレミアで歌われる歌のシーンでは、ラージェーシュ・カンナー本人がちらりと出てきます。2分5秒ぐらいの所でドラムをたたいている人が彼です。CGで合成したシーンですね。『オーム・シャンティ・オーム』をあらためて見ながら、ラージェーシュ・カンナーのご冥福をお祈りすることにします。合掌。 

 

 


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2 コメント

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あいち (やっほー)
2012-07-21 06:47:53
映画祭に向けて、先日、「OSO」DVDを見なおしてたのですが、その時に気になったのが、

>ラージェーシュ・カプール

という俳優さんのお名前でした。

このラージェーシュ・カンナーという俳優さんがモデルだったのですか。

ご本人もあのシーンで登場されていたのですね。
そして、シャールクの「Baadshah」に出ていた方がお嬢さんだったのですね。


訃報はあちこちで目にしていましたが、こういう方とは知りませんでした。

新しい作品も見たいですが、機会があれば、この方の活躍されていたころの作品も見てみたいです。

「OSO」はインド映画への愛がこもった作品なのだなあ、とも感じました。


ご冥福をお祈りします。
やっほー様 (cinetama)
2012-07-21 10:52:28
長文のコメント、ありがとうございました。

『オーム・シャンティ・オーム』の「ラージェーシュ・カプール」は、必ずしもラージェーシュ・カンナーだけがモデルとは言えませんが(「カプール」の方は、やっぱりラージ・カプールにシャンミー・カプール、シャシ・カプールの3兄弟を思い出しますものね)、かなり意識していただろうことは確かです。
彼の映画では、アミターブ・バッチャンの演技も光る『アーナンド』がオススメです。「操り人形」を読み込んだ印象的なセリフとか、アミターブの役名のあだ名「バーブー・モシャイ」などが、後年の映画でもパロられたりしています。

トゥインクル・カンナーin『バードシャー(帝王)』もよくご存じでしたね。ニュース映像を見てみると、アミターブ・バッチャンとアビシェーク・バッチャン父子を始め、シャー・ルク・カーン、サルマーン・カーンら、そして、やはり『オーム・シャンティ・オーム』でパロられていたマノージュ・クマールも弔問に訪れていました。ひと時代を画したスターでしたね、ラージェーシュ・カンナー。

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