アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

ディック・リーの監督作品が完成していた!

2017-08-17 | 東南アジア映画

昨日は3本映画を見たのですが、その中にシンガポール映画がありました。タイトルは『Wonder Boy(ワンダー・ボーイ/中国語タイトル:音為愛)』で、事前に調べている時に監督名を見てみると、何とディック・リーの名前が! あれは4年前、2013年の9月に東京で張國榮(レスリー・チャン)の没後10年に合わせたイベント「So in Love with Leslie」が開かれた時のこと(その報告はこちら)。ディック・リーも出演を快諾して来日してくれたのですが、その時の楽屋トークで、「来年はね、映画を監督するつもりなんだ」という話を聞いたのでした。それが完成したのね、おめでとう、ディック! ダニエル・ヤムという人との共同監督作品です。


本作はディック・リーの自伝映画と言ってよく、家でピアノを弾いては作曲をしていた内気なディックが、高校生になって同級生とバンド「ワンダー・ボーイ」を結成し、その後いろいろ紆余曲折があってプロの歌手としてデビューするまでを描きます。1970年代のファッションや雰囲気も再現してあって、その頃に青春時代を過ごしたシンガポール人にとっては懐かしいものがいっぱい登場しているのでは、と思います。

意外だったのは、ディックがかなり”不良”だったことで、ロックなどの音楽は禁止、長髪も禁止、という学校の規則に背くのはまあいいとして、背伸びしてタバコは吸うは、同じくタバコを吸っていた他校の女子学生と付き合ってあやしげな場所に出入りし、肉体関係は結んでしまうはと、お母さんならずとも怒りたくなってしまう不良ハイティーンだったようです。お母さんが素敵なキャラクターであるほか、お父さん、妹も魅力的で、あと3人いる弟の出番は少なかったものの、家族を愛するディックの気持ちがよく表れた作品でした。

ことに音楽方面に関してのディックの才能の芽生えは、家庭なくしては不可能だったことがよくわかります。最初「チャーハン・ベイビー」という歌をピアノで弾き語りして家族を笑わせ、また、歌手として出発したものの行き詰まったディックにお母さんが、「そんな感じの歌がいいのね、どこかローカルな味がする歌が」と言って彼の最初のヒット「フライドライス(チャーハン)・パラダイス」が生まれるエピソードなど、なるほどな~という感じでした。ここの、洋楽とは違うシンガポール・ローカル音楽の誕生をもっと主軸にしてあれば、映画としても優れた作品ができたのでは、と思うのですが、ディック・リーの自伝映画の域を出なかったのはちょっと残念。うーむ、これでは映画祭素材としても難しいかも。予告編はこちらです。

Wonder Boy Trailer - IN CINEMAS 3 AUGUST 《音为爱》电影预告片-8月3日上映

ディック・リーを演じたのはベンジャミン・ケン(金文明)という1990年8月15日生まれの、27歳になったばかりの俳優で、彼がピアノも弾け、歌もうまかったことがこの作品をリアルな音楽映画にしています。これまでは、バンドの歌手としてと、映画1本とテレビドラマにちょっと出たぐらいの俳優として知られていたようですが、この『Wonder Boy(ワンダー・ボーイ)』で人気が出るに違いありません。また、高校でのバンド仲間の1人はインド系のマーク・デスーザという名前で、こちらも結構年を食っていることがわかる容貌ですがザカリー・イブラヒムという俳優が演じていて、なかなかの演技ぶりでした。お母さん役はコンスタンス・ソン(宋怡霏) 、妹役はミシェル・ウォン(黄怡灵)と知らない人ばかりでしたが、ディック・リーを知っている人なら楽しめるに違いない作品です。そのディックの監督ぶりが見られる、メイキング映像を付けておきます。

BEHIND THE SCENES OF WONDER BOY - THE STORY [PART 1/3]

このメイキング、3までありますので、興味がおありの方はチェックしてみて下さいね。



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