残像の遊戯

俳句・音楽・映画・ジャズ・小説などをめぐるコラム。日々過ぎていく目のまえの風景と心象は儚い残像なのかもしれない。

60歳になってよかったこと。

2014年11月26日 | 映画
還暦を迎えてよかったことの一つに、映画館のシニア割引がある。
これまでは、「55歳夫婦割引」を使って妻といっしょに出かけてきた。
でも、これからは一人で出かけても、1,100円で観られる!

というわけで、今月は4本観た。これはかなりハイペースであります。
「ふしぎな岬の物語」★★
「そこのみにて光輝く」★★★★
「ジャージー・ボーイズ」★★★★★
「太秦トワイライト」★★★★

五つ★が満点での採点結果。4本中3本は、今年のマイベスト5に入るいい映画だった。
吉永小百合主演の「岬の物語」は、美しい小百合さんが観られるのだが、いい人ばかり登場し、ストーリー的にも甘いという印象。

いやなコメントとは

2014年11月23日 | 映画
高倉健さんが亡くなったとき、マスコミは交流のあった俳優にコメントを求めた。多くのコメントのなかに、こんなことを語ったUという俳優がいた。

「ぼくが可愛がっていた役者に、Kがいるんだが。Kに、健さんに会いたいから連絡をとってくれって頼んだ。そのとき、Kは笑っていた。たぶんKは、健さんが亡くなったことをそのとき知っていたのかなと思う」

いやだな、と思った部分は、この役者がKをいまだに「子分扱い」してしゃべっていたこと。だれがみても、俳優Kは高倉健さんの映画に脇役として何回も登場している。そのKに対し、「あいつは昔オレが可愛がっていた奴だったんだぜ」という先輩風を吹かせてしゃべる必要があったのか。

ただ、「Kさんに頼んだのですが」といえばいいではないか。

Uという俳優が昔はヤクザ映画に出ていたのは知っているが、健さんと共演した実績はない。UはKよりキャリアが上なのかもしれないが、晩年の役者としての実績はKがどうみたって上である。まあ、男の嫉妬というやつかもしれないが、こういうコメントを聞くといやな気分になる。

「太秦トワイライト」は映画を愛する人たちの賛歌だ。

2014年11月23日 | 映画
今月は4本も映画をみてしまった。4本目の映画「太秦トワイライト」は映画の魅力をあますところなく描いている傑作。

主役は時代劇映画の斬られ役として有名な福本清三さん。大部屋から映画界に入り、現役の斬られ役という人。そのたたずまいがいいのだ。剣劇スターに「斬られ方がじょうずだな」と可愛がられ、エビぞりに斬られる方法まで自分で考案した。

この映画には有名な俳優は出てこない。裏方をつとめ映画を盛り立ててきた人たちばかり。松方弘樹が時代劇スターの役どころで立ち回りを見せるくらい。そういばいえば、30年以上前はじめて太秦を見学したとき、松方弘樹はガムを噛みながらサイン会にのぞんでいたっけ。

映画を愛し映画に殉じようとする人々の切ないほどの入れ込みように、感動した。

高倉健さんが人生のすべてが映画であったように、「太秦トワイライト」で描かれた名もない俳優や裏方さんにとっても、映画が人生のすべてだったのだと思う。