良い子の歴史博物館

訪れたことのある博物館、歴史上の人物、交通機関についての感想、小論など。

アルコール燃料自動車

2005年04月19日 | 交通機関
原油高騰が続いている。
中国やインドなどで石油の需要が大きくなっているのと、
イラクなどの世界情勢の不安定、さらに投機筋の思惑が原因だ。
長期的には石油の枯渇が心配される。

そこで、人々は石油の代替となるものを模索してきた。
その中で、自動車燃料にアルコールを使うというアイディアがある。
植物からエタノールを作れる。バイオマス燃料というわけだ。
天然ガス、石炭等からメタノールを作れる。

そういえば、小学校の頃、理科の実験でアルコール燃焼で物質を暖めたりしていた。
きれいな火で燃えたよなぁ。
アルコールを使えば、排気ガスもクリーンな気がしてくる。

実際には、アルコールの酸化物として、アルデヒド類が出てくる。
最終的にはCO2と水になるわけだが、
中間物としてアルデヒド基(-CHO)をもつ化合物が出る。
エタノールの場合は、アセトアルデヒドで、酒酔いの原因とも言われる。
メタノールの酸化物は、さらに悪質なホルムアルデヒドで、発ガン性がある。

自動車エンジンにアルコール燃料を使用すると、
排気ガス中にこれらのアルデヒド類が含まれてしまう。
またアルコール燃料には、エンジン部品を腐食させる欠点がある。

ブラジルでは古くからアルコール燃料を自動車用に使ってきた。
爆発温度が高く、加速性はいいらしい。
アルコール燃料用にエンジンが改良されている。
腐食の問題を回避するためだ。

当初はガソリンに10%程度のエタノールを加えたものだったが、
今は100%エタノールで動く車も走っているそうだ。

但し、排気ガスのアルデヒド類はいかんともしがたい。
特有の臭いが町を覆っているという話を聞いたことがある。

ただ、研究しだいでは、クリーン燃焼も可能なはずだ。

またサトウキビを原料とする場合、
アルコールの生産1リットルにつき、
12リットルの有害な廃棄物が出るという。
廃棄物に処理を加えると、良質の肥料に変わるそうだが、
悪徳業者が河川に不法投棄すれば、魚が死ぬ。

ある研究報告によれば、エタノールを生産するのに使用するエネルギーが
エタノールのエネルギーを上回っている。
本当なら効率面で疑問が残る。

さらにブラジルの広大な森林がサトウキビ畑に変わってしまい、
伝統農法では収穫期に畑を焼くので、空が灰色になり、呼吸器障害を起こす。

ブラジルでエタノールの価格が安く、
ガソリンに対抗できる要因に低賃金労働者層の存在がある。

要するに、田舎の環境を破壊し、
貧しい暮らしを民衆に押し付ければ、
アルコール燃料がガソリン代わりになる。

日本で「ガイアックス」というアルコール系燃料が宣伝されたことがある。
アルコールなので、クリーンで環境に良い。
しかもガソリンとは違うので、税金がかからず安い。

幾つものTV番組でも取り上げられ、画期的な燃料として、
いい事尽くめとして、宣伝された。

実のところ、ガソリンが50%、アルコールが30%、
MTBE(Methyl tertiary-butyl ether)が20%の代物である。

MTBEは、米国で使用禁止で、日本では使用量を規制している。
ガイアックスは、この規制値の3倍ものMTBEを使用している。
“ガソリン”じゃないので、規制にひっかからない。

こんなものが広まったら、
みんな発ガン性のホルムアルデヒドで汚染された空気を吸う羽目になる。
環境省の実験では窒素酸化物は規制値を超過し
ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒドなども検出している。
環境に良いという話は真っ赤な嘘であった。

さらにエンジンの不調で、故障や火災の原因ともなってきたらしい。
はっきりいって、ガイアックスはトンデモいんちき業者に過ぎない。
宣伝文句に踊らされてはならない。

一方、別の方面から、メタノールが注目される。
燃料電池の燃料としてだ。
理論的にはエネルギー効率が高いとされる。
メタノール(CH3OH)を改質し、水素を取り出し、それを酸化する過程で電気を取り出す。
炭素が無駄となるが、それでも効率が高いらしい。(本当か??)
水素燃料をそのまま使用するのは、
燃料の貯蔵や輸送、燃料タンクの重量化などで問題がある。
それよりはメタノールを水素を貯蔵する媒体として使用するというわけだ。

小型のメタノール電池ではノートパソコンが長時間動くという。
自動車用としては、まだ価格が高く、性能的にも課題が残る。
しかし騒音がないし、クリーンではある。
課題を克服すれば、有望かもしれない。

燃料電池自動車が使い物になるかどうか、しばらく様子を伺いたい。