消費者金融と広告

消費者金融と広告についてマーケティングの面から色々な情報を提供していきたいと思います。

民放はサラ金の味方?

2006-06-25 23:10:59 | Weblog
月刊「創」の7月号に丸山昇氏が「アイフル事件で再び問われた各局CM事情:民放各局はどう対応するのか」というタイトルで民放各局の消費者金融のCMを見直すべきではないかという記事を書いていたので取り上げます。

●CM自粛強化で民放キー局は億単位の収入源
まず、丸山氏は、本年4月より大手サラ金7社+アットローン、モビット、DCキャッシュワンが「多重債務問題に対応するため」テレビCMの自粛を強化したので、キー局は億単位で収入が減少したことを取り上げています。

以下、要約すると、この自粛強化の背景には、昨年12月から本年1月にかけて最高裁が「みなし弁済」を違法だと認定し、「グレーゾーン金利」は支払わなくても構わないことを認めたからで、また、監督官庁である金融庁も、「貸金業制度等に関する懇談会」を設置し、過剰貸し付け、多重債務の防止、契約・取立てに関わる行為規制、金利規制・グレーゾーンのあり方など消費者金融の負の部分の改善・排除に向けた議論を重ねて4月21日には座長の吉田直行慶応義塾大学教授の下記のようなコメントも出ています。

「テレビコマーシャルの影響を受けて消費者金融業者から借入をする者が多いなど、貸し手の広告が、特に若者の借入行動に大きな影響を与えていること、また、雑誌、新聞などの媒体に加え、近時は広告の媒体としてインターネットが多用されるといった動きが見られることから、外国の規制例や『たばこ』の警告の文言や広告の規制を参考にしつつ、その頻度と内容も含めて借りすぎを防止するための規制を強化することが必要であるとの意見があった」

これにアイフルの貸金業規制法違反があり、金融庁から行政処分を受け2ヶ月のCM自粛をすることになるわけです。日本経団連との関係からCMの自粛は7月まで続いています。

ということで、民放は大きな損失をしているわけですが、逆にいままで、民法上問題のある広告を垂れ流して、ぼろもうけをしてきたわけですから、このぐらいの損失は大きな問題ではないと思います。

●消費者金融のテレビCMの歴史、そして金額
ここで、丸山氏は、テレビCMの自粛が解除され、放送されるまでの歴史をまとめてあり参考になります。
・1986年3月まで:全キー局がサラ金のテレビCM放送を自粛
・1986年4月:テレビ東京が最初にサラ金のテレビCM放送を開始、TBS以外の他のキー局も五月雨式に放送開始
・2001年:TBSも放送開始

2000年に大手銀行系の消費者金融も参入しテレビCMを大量に打ち始めたので、TBSもそろそろ潮時と思って、2001年からサラ金のCMを流し始めたのだと思います。

2002年度の大手消費者金融の年間広告・CM出稿額(自社公称)は、以下でテレビCMはそのうちの50%~60%が投入されているようです。

アコム:158億円
プロミス:157億円
アイフル:154億円
武富士:151億円

2005年度(2006年3月期)に関しては下記のようになります。

アイフル:165億円
アコム:161億円
プロミス:133億円
武富士:122億円

江草晋二・東京情報大学講師が「サラ金テレビCM現状と規制」というレポートを2005年11月にまとめていて、その中に大手サラ金8社(アイフル、アコム、三洋信販、三和ファイナンス、シンキ、GEコンシューマーファイナンス、武富士、プロミス)の関東地区のGRPが、1999年、2000年と倍々ゲームで伸び、2001年には14万1373GRPとなり、頂点に達したそうで、その後減ってはいるものの2004年でも11万1345GRPもあるそうです。

また、私が調べたのですが、「月刊企業と広告」によると、消費者金融会社が提供している番組の扱い代理店は、電通が70%、博報堂DYMPが、15%、I&SBBDOが15%、ということで、電通の独占状態です。

ワールドカップ・サッカーの日本戦の放送時間で電通、NHK、テレビ朝日によってあの時間帯になったという話が話題になっており、本日付の朝日新聞にもとりあげられていましたが、サラ金広告の自粛解除も何かあったのかもしれません。

●民放各局の違法性の認識は、消費者金融寄り
ここで、丸山氏は「消費者金融CMの問題の核心は、社会問題化している負の部分を覆い隠して、安易に借金してもいいんだという風潮を助長する恐れがあり、こういうCMを誰もが目にするテレビが、広告主の注文のまま、あるいは電通など大手広告会社の営業の勢いに任せて大量に垂れ流すことは問題が大きい」と警告しています。
そして、もっと大きな問題は、「違法性」の認識で、被害者側と最高裁判所は「利息制限法」を根拠にして「違法な利息を取っている」とし、そういう判決も出ているわけです。
しかし、消費者金融会社、そして消費者金融の広告・CMを受け入れてきたテレビや新聞は、貸金業規制法に従ってやってきているから、民法上は違反しても「違法性はない」としているわけです。

●番組提供相乗りでCM集中露出
丸山氏は、ここで広告ビジネスに詳しい「広告市民の会」の三枝和仁氏の以下の指摘を取り上げています。
「消費者金融のテレビCMは、(1)CM放送料金を正価で購入していること、(2)相乗りをいやがらないことで、通常のCMとは違っている」

これは、簡単に説明すると、広告会社のいいなりで広告主(サラ金業者)は購入し、かつ広告会社のいいなりで一つの番組を同業他社と一緒に番組提供させられているということです。

広告の効率を考えたらこんなことはありえないし、また、同じようなサラ金のCMを続けて何回も見せられれば視聴者だってCMカットしたくなります。

サラ金業者は、一部の広告会社(主に電通)とテレビ局にいろいろ働きかけ、やっとCMを放送させてもらっているという立場なので、何にもいえないのでしょう。

●被害者団体から「CM中止」の申し入れ
消費者金融の広告・CMについては、被害者団体などや県などの公共団体が、中止を求めています。
このような中からごく一部ながらメディアの中から独自の判断を示しているところを丸山氏は取り上げていました。
一つ目はTBSで、2004年に中止された武富士のCMですが、昨年夏、テレビ東京が再開し、10月には日本テレビ、フジテレビ、テレビ朝日が解禁したのですが、TBSだけは中止したままだそうです。
また、朝日新聞も4月22日から「グレーゾーン金利」を表示した貸金業の広告を見合わせることにしたということを取り上げています。

●報道機関のあり方が改めて問われる
丸山氏は、今までは確かに広告・CMが報道を鈍らせてきているが、これからグレーゾーン金利の撤廃など新しい局面に入っていくわけなので、その時、報道機関はきちんと判断を下して欲しいと述べています。

まったくその通りで、特にテレビ局は、国民の財産である電波をお金も払わず、無料で借りて莫大な利益を上げているわけですから、国民に奉仕する義務があるはずです。

サラ金の金利は15%以下に:朝日のアンケート結果

2006-06-17 20:34:17 | Weblog
●消費者金融についての朝日新聞のアンケート
朝日新聞の5月27日付beに消費者金融についてbeモニターの人たちに実施したアンケートの結果が載っており、この結果をみると、朝日新聞の読者の人たちが消費者金融についてどう考えているのかがわかるのでとりあげました。

回答者は全部で2800人、そのうち91%とほとんどの人が「消費者金融の規制は強化すべきだ」と答えていました。

規制強化の対象は、7割近くの人が「金利」、6割近くの人が「取り立て」を挙げていました。また、「広告・宣伝」をあげた人が半分以上いました。
ということで、金利、取立て、広告・宣伝が問題であり規制強化すべきだと考えています。

そして、「金利の上限」が必要かどうかについては、92%の人が必要だと答えており、では「上限はどのくらいか」と聞いたところ、15%が21%、15%未満が30%と答えていることから、過半数の人は15%以下と考えています。
逆に、21%以上と考えている人は、たった3%しかいません。

テレビCMでしつっこく言っている「計画的な利用なら役に立つと思うか?」ということについては、「はい」と答えている人は19%、「いいえ」と答えている人は66%で、多くの人は「役にたたない」と考えています。
この質問は2004年5月15日付の同じ欄でも聞いていて、そのときは「はい」が22%、「いいえ」が53%だったので、「いいえ」がだいぶ増えてしまいました。

そして、消費者金融のテレビCMの好き嫌いに対しては、「嫌い」と答えている人が49%、「どちらかといえば嫌い」が17%、「好き」が1%、「どちらかといえば好き」が7%ということで、66%が嫌いで、好きなのは18%なので、多くの人が嫌っています。

このような結果を受けて朝日新聞は、6月9日に「グレーゾーン広告拒否」のコメントを出して、サラ金の広告を載せなくなったのだと思います。
他の新聞やテレビ局は、サラ金の広告に対して何も言ってないので読者のことよりも広告主の方を大事にしているのでしょう。


朝日のbeに載っていた調査結果をまとめたものは、人数しか載っていないものもありわかりにくかったので、ここに%を記入して載せました。
●規制強化の対象:
・金利:1844人、66%
・取立て:1622人、58%
・広告・宣伝:1442人、52%
・業者の資格:1246人、45%
・行政の監督:1180人、42%
・説明・通知:1170人、42%
・融資額:760人、27%
・借入人にかける生命保険:567人、20%
・融資期間:293人、10%

●金利の上限:
・年30%以上:7人、0.2%
・29.2%:64人、2%
・21~28%:26人、1%
・19~20%:362人、13%
・16~18%:215人、8%
・15%:594人、21%
・15%未満:836人、30%
・わからない:471人、17%




朝日新聞、グレーゾーン広告拒否

2006-06-14 22:57:17 | Weblog
朝日新聞は6月9日、グレーゾーン金利での融資広告についての広告の掲載を見合わせることに決めた事が10日の朝日新聞の朝刊に掲載されてしました。

9日の役員会でコンプライアンスの観点から議論し、「社会的影響が大きい新聞社としては掲載をやめるべきだ」との結論に達したとのことです。

これに先立ち、朝日新聞は4月22日、融資の広告は「上限利率を超える金利の支払いは任意」という趣旨の説明を付けない限り掲載しない措置をとっていたそうです。

朝日新聞社内の社員からの公益通報制度に基づいて「(グレーゾーン金利での融資広告は)読者の不利益になる情報ではないか」という指摘もあったそうで、「社会の公器」である新聞としては、当たり前の事だと思いますが、今までどこの新聞社もコンプライアンスを重視していなかったので、これでようやく一歩前進したなと思いました。

他の新聞社は、コンプライアンスよりも金儲けに走っているようで、非常識でだらしないですね。

しかし、もっとひどいのはテレビ局で、国民の財産である電波を使わせてもらっていながら、国民の不利益につながる「グレーゾーン金利での融資CMを垂れ流しているわけですから、あくどい商売をやっていると思います。



誰が貸金業を肥大化させた政策の責任をとるのか?

2006-06-11 13:27:34 | Weblog
週刊東洋経済の6月10日号に掲載された「金融ビジネス」編集長:大崎朋子氏の「貸金業を肥大化させた政策のツケと責任」は、現在の状況をうまく整理し解説しており、週刊エコノミスト6月13日号の「生き残るのは消費者金融か、ヤミ金か」における坂野友昭早稲田大学教授の偏った意見と比較すると大変公平で参考になります。
この責任は、消費者信用業界だけでなく、政治家、金融当局、資金を提供してきた金融機関、東証、日本経団連がその責務を果たすべきだと思います。

まず、二つの意見が対立していることが挙げられています。
一つ目はクレジット・サラ金問題に取り組んでいる弁護士たちによる高い金利が多重債務を生んでおり、利息制限法の上限金利まで引き下げるべきとする意見です。
もう一方は、金利を引き下げると信用リスクの高い借り手が借りられなくなりヤミ金がはびこるというものです。
後者は、業界そして、業界が研究費を助成している坂野友昭早稲田大学教授が喧伝しているもので、2000年の出資法の上限金利引き下げで借りられなくなった人がヤミ金に流れたと説明しています。

しかし、ヤミ金に行く借り手はすでに多重債務者であり、ヤミ金業者がはびこるのは取締の責任で、問題の根源は「1990年代に大手消費者金融に多額の低利資金が、多重債務者を生んだこと」と喝破しています。

その背景には、株式上場やノンバンク社債法の整備で信用力をつけ、そのため下記のようなことができるようになりました。
1)低利で多額な資金供給
2)全国に自動与信機配置
3)1社数百億円の宣伝広告

以上のことにより2%弱の調達金利に対し、24~26%の貸出金利で超過収益を生み、さらに融資を拡大していったとのことです。

これは当時の大蔵省の方針で、株式の上場を認め情報開示して自らの規制の手の内に置いて、日の当たる融資環境を作れば消費を刺激し、経済も活発化すると考えたようです。

しかし、借り手にはいずれ返済負担がのしかかってくるわけで、金利も高いし、しかも過剰な広告で返済能力のない人たちまで借りるわけなので多重債務者も増加するようになります。

ですから、大手消費者金融の株式の上場にあたっては、株や社債により資本市場から低利多額の資金の調達が可能になるわけで、この時、利息制限法内での貸付を要件とすべきだったと筆者は書いています。

つまり、安易に上場を許可した金融当局、そして東証の判断ミスによって、現在の過剰融資、そして多重債務の多発が起きているということになります。

また、優良企業の貸し先が限られていた信託銀行や旧長銀、生損保の保険会社は、80年代から消費者金融会社への貸付を行ってきましたが、上場大手の信用力や広告によるイメージアップにより融資額を膨らましてきました(日本経団連が加盟を許可したこともあります)。

05年3月末でアイフル、アコム、武富士、プロミス4社の長期の大口借入金額は、
信託銀行:6903億円
生命保険会社:3347億円
新生、あおぞら銀行、都銀:2193億円
と莫大な金額です。

銀行や生保は、利息制限法と臨時金利調整法により、利息制限法の上限を超える金利での融資は認められていないのですが、このようなかたちで超過金利のピンはねをしているわけです。

●結論:詳細なデータによる実態把握したうえで、借り手の債務整理プログラムの実施
大手・中堅の消費者金融業者は、債務者のデフォルトに至るまでの貸付履歴を保有しており、さらに信用情報機関には、それが集積されています。
個人情報保護に留意したうえで、このデータを客観的に分析し、債務者の実態を把握したうえで多重債務者の救済策を実施すべきです。

その資金源は、今まで超過利潤を得てきた大手上場消費者信用会社やピンはねしてきた都市銀行、信託銀行、生損保もなどが担うべきだとしています(私は、安易に上場を許可した東証、安易に加盟を許可した日本経団連も責任を取るべきだと思います)。

その上で、上場金利引き下げそして、過剰融資規制の法律を施行するということになります。
そして、このようなプログラムをまとめるのが金融当局、そして、政治家の責務だとしています。


アイフル広告の自粛延長の理由

2006-06-06 00:20:59 | Weblog
Fuji Sankei Business iの6月2日のon the Webにアイフルの広告の自粛延長の理由が書いてありました。理由は、アイフルが日本経団連から7月25日まで活動自粛処分を受けているので、そのことに配慮してとのことです。アイフルのようなコンプライアンスが確立されていない会社でも日本経団連に入れるようですね。

武富士 サラ金の帝王(溝口敦、講談社+α文庫)

2006-06-04 10:58:24 | Weblog
「武富士 サラ金の帝王」というタイトルがついているので、「武富士」だけの事を扱った本だと思われてしまいますが、そうではなくて武富士元会長の武井保雄だけでなく、「プロミス」のドンの神内良一、「金貸しのエリート」の「アコム」会長の木下恭輔、チワワの広告でトップになった「アイフル」社長の福田吉孝、旧「レイク」元会長の浜田武雄というサラ金業界を一から作った創業者オーナーたちのその形成過程がわかりやすくまとめてあり、しかも武井保雄と木下恭輔についてはインタビューまで載っているので、その人たちのキャラクターまでわかり、大変参考になる本です。

しかも、サラ金業界への大手都市銀行による資金提供というのは、最近の事かと思っていたのですが、20年以上も前から、迂回経路を使って行われていたとのことで、一流銀行のエリートと言われる人たちはモラルが無いことがはっきりわかりました。

しかも都市銀行よりも信託銀行や生保、リース会社、アメックスやクレディスイスなどの外国銀行などが多額の資金を提供していたのには驚きました。
そしていくつかの銀行は表面に出ないように色々迂回路を作って提供していました。

アコムは、1978年まではサラ金業界のトップでしたが、トップでいられたのは、三菱信託銀行が78億円もの巨額貸付をしていたからだとのことです。
当時のアコムの融資残高は195億円で、その4割のお金が三菱信託銀行から提供されており、アコムは表面金利9.5%で借入れ、それを73%~102%の高利で利用者に貸付けていたそうです。
そのころ、他のサラ金会社は、主として小金もちの医者や商店主からの高利のアングラマネーを資金源にしていたので、78年2月22日に「朝日新聞」がすっぱ抜いた時、中堅サラ金業者は、やられて当然と小躍りして喜んだそうです。

政治家との結びつきも書いてあり、政治献金の献金先も自民党だけでなく社会党や公明党の名前があり驚きました。
1978年の貸金業法案(サラ金規制法の一案)の国会提案を要請する「全金連顧問ならびに関係議員懇談会」では、公明党の坂口力議員も「今回の業界で作られた法案は、間違いを見つけるのが難しいほどのできばえで」と挨拶していたのにびっくりしました。

この本は、1983年に現代書林から刊行された「サラ金商人」を改題し、新たに「文芸春秋」2004年2月号や「週刊ポスト」、「創」などへのレポートを追加して、加筆・再編集したものなので、ちょっと古いデータが多く、新しい部分が少ないのですが、サラ金の隠された歴史を知る上では貴重な資料だと思います。


アイフルのCM自粛延期から

2006-06-03 16:18:56 | Weblog
アイフルのCM自粛が2ヶ月延期になりました。アイフルは東証1部上場会社であり、その社会的責任の重さからいって1年くらいは自粛するのが当たり前と思っていましたが、最初2ヶ月の広告自粛であり、この2ヶ月延長もまわりから言われたので渋々承知したようです。
多重債務者が増えた原因の一つは大量のCMや新聞広告によるものであるので、その量に関して規制する必要があるかなと思います。