月刊「創」の7月号に丸山昇氏が「アイフル事件で再び問われた各局CM事情:民放各局はどう対応するのか」というタイトルで民放各局の消費者金融のCMを見直すべきではないかという記事を書いていたので取り上げます。
●CM自粛強化で民放キー局は億単位の収入源
まず、丸山氏は、本年4月より大手サラ金7社+アットローン、モビット、DCキャッシュワンが「多重債務問題に対応するため」テレビCMの自粛を強化したので、キー局は億単位で収入が減少したことを取り上げています。
以下、要約すると、この自粛強化の背景には、昨年12月から本年1月にかけて最高裁が「みなし弁済」を違法だと認定し、「グレーゾーン金利」は支払わなくても構わないことを認めたからで、また、監督官庁である金融庁も、「貸金業制度等に関する懇談会」を設置し、過剰貸し付け、多重債務の防止、契約・取立てに関わる行為規制、金利規制・グレーゾーンのあり方など消費者金融の負の部分の改善・排除に向けた議論を重ねて4月21日には座長の吉田直行慶応義塾大学教授の下記のようなコメントも出ています。
「テレビコマーシャルの影響を受けて消費者金融業者から借入をする者が多いなど、貸し手の広告が、特に若者の借入行動に大きな影響を与えていること、また、雑誌、新聞などの媒体に加え、近時は広告の媒体としてインターネットが多用されるといった動きが見られることから、外国の規制例や『たばこ』の警告の文言や広告の規制を参考にしつつ、その頻度と内容も含めて借りすぎを防止するための規制を強化することが必要であるとの意見があった」
これにアイフルの貸金業規制法違反があり、金融庁から行政処分を受け2ヶ月のCM自粛をすることになるわけです。日本経団連との関係からCMの自粛は7月まで続いています。
ということで、民放は大きな損失をしているわけですが、逆にいままで、民法上問題のある広告を垂れ流して、ぼろもうけをしてきたわけですから、このぐらいの損失は大きな問題ではないと思います。
●消費者金融のテレビCMの歴史、そして金額
ここで、丸山氏は、テレビCMの自粛が解除され、放送されるまでの歴史をまとめてあり参考になります。
・1986年3月まで:全キー局がサラ金のテレビCM放送を自粛
・1986年4月:テレビ東京が最初にサラ金のテレビCM放送を開始、TBS以外の他のキー局も五月雨式に放送開始
・2001年:TBSも放送開始
2000年に大手銀行系の消費者金融も参入しテレビCMを大量に打ち始めたので、TBSもそろそろ潮時と思って、2001年からサラ金のCMを流し始めたのだと思います。
2002年度の大手消費者金融の年間広告・CM出稿額(自社公称)は、以下でテレビCMはそのうちの50%~60%が投入されているようです。
アコム:158億円
プロミス:157億円
アイフル:154億円
武富士:151億円
2005年度(2006年3月期)に関しては下記のようになります。
アイフル:165億円
アコム:161億円
プロミス:133億円
武富士:122億円
江草晋二・東京情報大学講師が「サラ金テレビCM現状と規制」というレポートを2005年11月にまとめていて、その中に大手サラ金8社(アイフル、アコム、三洋信販、三和ファイナンス、シンキ、GEコンシューマーファイナンス、武富士、プロミス)の関東地区のGRPが、1999年、2000年と倍々ゲームで伸び、2001年には14万1373GRPとなり、頂点に達したそうで、その後減ってはいるものの2004年でも11万1345GRPもあるそうです。
また、私が調べたのですが、「月刊企業と広告」によると、消費者金融会社が提供している番組の扱い代理店は、電通が70%、博報堂DYMPが、15%、I&SBBDOが15%、ということで、電通の独占状態です。
ワールドカップ・サッカーの日本戦の放送時間で電通、NHK、テレビ朝日によってあの時間帯になったという話が話題になっており、本日付の朝日新聞にもとりあげられていましたが、サラ金広告の自粛解除も何かあったのかもしれません。
●民放各局の違法性の認識は、消費者金融寄り
ここで、丸山氏は「消費者金融CMの問題の核心は、社会問題化している負の部分を覆い隠して、安易に借金してもいいんだという風潮を助長する恐れがあり、こういうCMを誰もが目にするテレビが、広告主の注文のまま、あるいは電通など大手広告会社の営業の勢いに任せて大量に垂れ流すことは問題が大きい」と警告しています。
そして、もっと大きな問題は、「違法性」の認識で、被害者側と最高裁判所は「利息制限法」を根拠にして「違法な利息を取っている」とし、そういう判決も出ているわけです。
しかし、消費者金融会社、そして消費者金融の広告・CMを受け入れてきたテレビや新聞は、貸金業規制法に従ってやってきているから、民法上は違反しても「違法性はない」としているわけです。
●番組提供相乗りでCM集中露出
丸山氏は、ここで広告ビジネスに詳しい「広告市民の会」の三枝和仁氏の以下の指摘を取り上げています。
「消費者金融のテレビCMは、(1)CM放送料金を正価で購入していること、(2)相乗りをいやがらないことで、通常のCMとは違っている」
これは、簡単に説明すると、広告会社のいいなりで広告主(サラ金業者)は購入し、かつ広告会社のいいなりで一つの番組を同業他社と一緒に番組提供させられているということです。
広告の効率を考えたらこんなことはありえないし、また、同じようなサラ金のCMを続けて何回も見せられれば視聴者だってCMカットしたくなります。
サラ金業者は、一部の広告会社(主に電通)とテレビ局にいろいろ働きかけ、やっとCMを放送させてもらっているという立場なので、何にもいえないのでしょう。
●被害者団体から「CM中止」の申し入れ
消費者金融の広告・CMについては、被害者団体などや県などの公共団体が、中止を求めています。
このような中からごく一部ながらメディアの中から独自の判断を示しているところを丸山氏は取り上げていました。
一つ目はTBSで、2004年に中止された武富士のCMですが、昨年夏、テレビ東京が再開し、10月には日本テレビ、フジテレビ、テレビ朝日が解禁したのですが、TBSだけは中止したままだそうです。
また、朝日新聞も4月22日から「グレーゾーン金利」を表示した貸金業の広告を見合わせることにしたということを取り上げています。
●報道機関のあり方が改めて問われる
丸山氏は、今までは確かに広告・CMが報道を鈍らせてきているが、これからグレーゾーン金利の撤廃など新しい局面に入っていくわけなので、その時、報道機関はきちんと判断を下して欲しいと述べています。
まったくその通りで、特にテレビ局は、国民の財産である電波をお金も払わず、無料で借りて莫大な利益を上げているわけですから、国民に奉仕する義務があるはずです。
●CM自粛強化で民放キー局は億単位の収入源
まず、丸山氏は、本年4月より大手サラ金7社+アットローン、モビット、DCキャッシュワンが「多重債務問題に対応するため」テレビCMの自粛を強化したので、キー局は億単位で収入が減少したことを取り上げています。
以下、要約すると、この自粛強化の背景には、昨年12月から本年1月にかけて最高裁が「みなし弁済」を違法だと認定し、「グレーゾーン金利」は支払わなくても構わないことを認めたからで、また、監督官庁である金融庁も、「貸金業制度等に関する懇談会」を設置し、過剰貸し付け、多重債務の防止、契約・取立てに関わる行為規制、金利規制・グレーゾーンのあり方など消費者金融の負の部分の改善・排除に向けた議論を重ねて4月21日には座長の吉田直行慶応義塾大学教授の下記のようなコメントも出ています。
「テレビコマーシャルの影響を受けて消費者金融業者から借入をする者が多いなど、貸し手の広告が、特に若者の借入行動に大きな影響を与えていること、また、雑誌、新聞などの媒体に加え、近時は広告の媒体としてインターネットが多用されるといった動きが見られることから、外国の規制例や『たばこ』の警告の文言や広告の規制を参考にしつつ、その頻度と内容も含めて借りすぎを防止するための規制を強化することが必要であるとの意見があった」
これにアイフルの貸金業規制法違反があり、金融庁から行政処分を受け2ヶ月のCM自粛をすることになるわけです。日本経団連との関係からCMの自粛は7月まで続いています。
ということで、民放は大きな損失をしているわけですが、逆にいままで、民法上問題のある広告を垂れ流して、ぼろもうけをしてきたわけですから、このぐらいの損失は大きな問題ではないと思います。
●消費者金融のテレビCMの歴史、そして金額
ここで、丸山氏は、テレビCMの自粛が解除され、放送されるまでの歴史をまとめてあり参考になります。
・1986年3月まで:全キー局がサラ金のテレビCM放送を自粛
・1986年4月:テレビ東京が最初にサラ金のテレビCM放送を開始、TBS以外の他のキー局も五月雨式に放送開始
・2001年:TBSも放送開始
2000年に大手銀行系の消費者金融も参入しテレビCMを大量に打ち始めたので、TBSもそろそろ潮時と思って、2001年からサラ金のCMを流し始めたのだと思います。
2002年度の大手消費者金融の年間広告・CM出稿額(自社公称)は、以下でテレビCMはそのうちの50%~60%が投入されているようです。
アコム:158億円
プロミス:157億円
アイフル:154億円
武富士:151億円
2005年度(2006年3月期)に関しては下記のようになります。
アイフル:165億円
アコム:161億円
プロミス:133億円
武富士:122億円
江草晋二・東京情報大学講師が「サラ金テレビCM現状と規制」というレポートを2005年11月にまとめていて、その中に大手サラ金8社(アイフル、アコム、三洋信販、三和ファイナンス、シンキ、GEコンシューマーファイナンス、武富士、プロミス)の関東地区のGRPが、1999年、2000年と倍々ゲームで伸び、2001年には14万1373GRPとなり、頂点に達したそうで、その後減ってはいるものの2004年でも11万1345GRPもあるそうです。
また、私が調べたのですが、「月刊企業と広告」によると、消費者金融会社が提供している番組の扱い代理店は、電通が70%、博報堂DYMPが、15%、I&SBBDOが15%、ということで、電通の独占状態です。
ワールドカップ・サッカーの日本戦の放送時間で電通、NHK、テレビ朝日によってあの時間帯になったという話が話題になっており、本日付の朝日新聞にもとりあげられていましたが、サラ金広告の自粛解除も何かあったのかもしれません。
●民放各局の違法性の認識は、消費者金融寄り
ここで、丸山氏は「消費者金融CMの問題の核心は、社会問題化している負の部分を覆い隠して、安易に借金してもいいんだという風潮を助長する恐れがあり、こういうCMを誰もが目にするテレビが、広告主の注文のまま、あるいは電通など大手広告会社の営業の勢いに任せて大量に垂れ流すことは問題が大きい」と警告しています。
そして、もっと大きな問題は、「違法性」の認識で、被害者側と最高裁判所は「利息制限法」を根拠にして「違法な利息を取っている」とし、そういう判決も出ているわけです。
しかし、消費者金融会社、そして消費者金融の広告・CMを受け入れてきたテレビや新聞は、貸金業規制法に従ってやってきているから、民法上は違反しても「違法性はない」としているわけです。
●番組提供相乗りでCM集中露出
丸山氏は、ここで広告ビジネスに詳しい「広告市民の会」の三枝和仁氏の以下の指摘を取り上げています。
「消費者金融のテレビCMは、(1)CM放送料金を正価で購入していること、(2)相乗りをいやがらないことで、通常のCMとは違っている」
これは、簡単に説明すると、広告会社のいいなりで広告主(サラ金業者)は購入し、かつ広告会社のいいなりで一つの番組を同業他社と一緒に番組提供させられているということです。
広告の効率を考えたらこんなことはありえないし、また、同じようなサラ金のCMを続けて何回も見せられれば視聴者だってCMカットしたくなります。
サラ金業者は、一部の広告会社(主に電通)とテレビ局にいろいろ働きかけ、やっとCMを放送させてもらっているという立場なので、何にもいえないのでしょう。
●被害者団体から「CM中止」の申し入れ
消費者金融の広告・CMについては、被害者団体などや県などの公共団体が、中止を求めています。
このような中からごく一部ながらメディアの中から独自の判断を示しているところを丸山氏は取り上げていました。
一つ目はTBSで、2004年に中止された武富士のCMですが、昨年夏、テレビ東京が再開し、10月には日本テレビ、フジテレビ、テレビ朝日が解禁したのですが、TBSだけは中止したままだそうです。
また、朝日新聞も4月22日から「グレーゾーン金利」を表示した貸金業の広告を見合わせることにしたということを取り上げています。
●報道機関のあり方が改めて問われる
丸山氏は、今までは確かに広告・CMが報道を鈍らせてきているが、これからグレーゾーン金利の撤廃など新しい局面に入っていくわけなので、その時、報道機関はきちんと判断を下して欲しいと述べています。
まったくその通りで、特にテレビ局は、国民の財産である電波をお金も払わず、無料で借りて莫大な利益を上げているわけですから、国民に奉仕する義務があるはずです。