かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

院内メールで

2017年05月24日 | サポーターの心得
来週手術を控えている患者さんが、まだしっかりとタバコを吸っているからお願いしますと、看護師から電話。
担当の外科医が、患者さんの喫煙に対してまったく無頓着なので、こういうムチャぶりが時々ある。
看護師任せの無責任外科医に電話で一喝。
それから患者さんを快く引き受けた。
 
以下は、今夜、病院職員へ送ったメール。
 
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手術を目前にして、なかば強制的に禁煙外来に回されて来た患者さん。
禁煙治療医とのあいだで、どんな会話が展開されているのか?
 
興味のある方は以下をご覧ください。
 
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医師「これまで、禁煙してみようと思ったことはありますか?」
 
患者「以前、脳梗塞をやったとき、病院は禁煙だったから、入院中だけやめたことがあります。夢にタバコのお化けが出てきて、吸えよ~って誘うんですよ。いやあ、つらかったですね。病院の外で吸ってる人を見かけると、自分も吸いたくなるしね」
 
医師「それは、つらいですよねえ。脳梗塞の後遺症は?」
 
患者「何もないです。だから、また吸っちゃったんです」
 
医師「でも、今度はがんになっちゃったわけですね。今回の病気について、当院の誰かからタバコをやめましょうと言われませんでしたか?」
 
患者「誰にも言われませんでした」
 
医師「それは大変失礼いたしました。本当に申し訳ございませんでしたっ!。ご存知かもしれませんが、タバコをやめずに手術を受けると、肺炎になったり、傷が治りにくくなったりします。それが禁煙をおすすめする理由のひとつですが、他にも大切なことがあります。タバコを吸っている方が脳梗塞やがんになったら、タバコが原因になっている可能性が大変高いのです。つまり、タバコを吸っていなければ、これらの病気にならずにすんだかもしれないのです。ですから、病気の治療をするなら、禁煙も大切であることはご理解いただけますね?」
 
患者「はい、わかってました。でも、意志が弱いので・・・」
 
医師「タバコをやめたくてもやめられないのは、意志が弱いせいではないんですよ。ニコチンには覚醒剤くらい強い依存性がありますから、やめられなくて当然です」
 
患者「そうなんですか!」
 
医師「がんという病気になって、いろいろと考えるところがおありでしょう?」
 
患者「そうですね。肝臓にも転移しているらしいですし」
 
医師「それは心配ですね。楽に禁煙できるお薬というのがあるんですが」
 
患者「テレビなどで見たことがあります。でも、そんなに効くとは思えないんですけど」
 
医師「一度は使ってみるといいですよ。みなさん、早く使えばよかったっておっしゃいます」
 
患者「妻にこれまでもうるさく言われているので、薬を使わずに自分でどうにかがんばろうかと思います」
 
医師「ストレスなく禁煙できる薬を使って、タバコのことなんかに気をとられずに、そのぶん、がんの治療に専念したほうがいいんじゃないですか?」
 
患者「そうですね。確かにそのほうがいいですね。そういう薬があるなら、もっと早く勧めてもらえばよかったなあ」
 
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患者さんが禁煙しないのは、ひょっとしたら私たちのアプローチが足りないからかもしれません。
今後も、みなさまのご理解とご支援を、よろしくお願いいたします。
コメント
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