小説は普段ほとんど読まないのだが、今回は向田作品を文庫本で立て続けに2冊読んだ。著者には失礼ながら、忙しい仕事の合間に手軽に読めるものを、と考えて手に取ったものだ。
初めて向田邦子(1929-1981)を読むことになったのだが、所期の目的は達したと言ってよい。いや、期待以上に面白かった。短い作品の中に、日常に潜む闇や男女の性(さが)を描いており、著者に抱いていたイメージを塗り替えた。
家庭や家族、兄弟、人生のなかで見るかも知れない闇や非日常を描いて驚くべきものがある。その筆頭は『思い出トランプ』所収の「かわうそ」であろう。快活だと思っていた妻の性格が、実は、悲劇のはじまりというどんでん返し。夫が管理していた世界は、いつの間にか、自分の力の及ばぬ世界になってしまうやるせなさと恐ろしさ。身近な者が寄り添っていてくれるとは限らない。「ダウト」も直木賞を受賞した「花の名前」もそのような系譜だ。
心理描写だけでなく、風景や情景の描写も的確で、「喧騒の中の孤独」を思い出す。作品の中の風景は、何やら、80年代に戻ったような気持ちをおこさせる。電車の中でしみじみとし、いっとき仕事を忘れた読書になった。
今の私は著者の執筆時の年齢をだいぶ上回っている。だが、出版当初に読んでいれば、私は著者の半分ほどの年齢ということになる。ところが、なかなか読む機会はなかった。読書は巡り会わせとか出会いであるとも言われるがやはりそういうものなのだろう。私自身は今の時点で読んだことをよかったと思っている。
彼女の客死の報は記憶に残っている。月並みだが、長生きしていらっしゃれば、と思う。(合掌)
向田邦子著『思い出トランプ』(新潮文庫3009)2016年6月88刷.,『男どき女どき』(新潮文庫3406)2015年12月65刷.
初めて向田邦子(1929-1981)を読むことになったのだが、所期の目的は達したと言ってよい。いや、期待以上に面白かった。短い作品の中に、日常に潜む闇や男女の性(さが)を描いており、著者に抱いていたイメージを塗り替えた。
家庭や家族、兄弟、人生のなかで見るかも知れない闇や非日常を描いて驚くべきものがある。その筆頭は『思い出トランプ』所収の「かわうそ」であろう。快活だと思っていた妻の性格が、実は、悲劇のはじまりというどんでん返し。夫が管理していた世界は、いつの間にか、自分の力の及ばぬ世界になってしまうやるせなさと恐ろしさ。身近な者が寄り添っていてくれるとは限らない。「ダウト」も直木賞を受賞した「花の名前」もそのような系譜だ。
心理描写だけでなく、風景や情景の描写も的確で、「喧騒の中の孤独」を思い出す。作品の中の風景は、何やら、80年代に戻ったような気持ちをおこさせる。電車の中でしみじみとし、いっとき仕事を忘れた読書になった。
今の私は著者の執筆時の年齢をだいぶ上回っている。だが、出版当初に読んでいれば、私は著者の半分ほどの年齢ということになる。ところが、なかなか読む機会はなかった。読書は巡り会わせとか出会いであるとも言われるがやはりそういうものなのだろう。私自身は今の時点で読んだことをよかったと思っている。
彼女の客死の報は記憶に残っている。月並みだが、長生きしていらっしゃれば、と思う。(合掌)
向田邦子著『思い出トランプ』(新潮文庫3009)2016年6月88刷.,『男どき女どき』(新潮文庫3406)2015年12月65刷.
早速アマゾン書店で『思い出トランプ』ポチってまいりました
自分は小説もかなり好きです
ご紹介ありがとうございます
モモちゃんも良い子にお過ごしですね
いつも可愛いモモちゃん、様子が知られて嬉しいです
またいつかお知らせください
ここのところ蒸しますね
イシスさまはお変わりありませんか
今日もあまりにも蒸しますもので、夕方頃にはすっかり蒸し上がってしまいました(笑)
更新楽しみにしております
本当に今日は蒸しましたね。何もしなくても汗をかきました。その汗が、なにか陰にこもったような汗でパーッとしていない(笑)。
そして、この地では昼ごろポツポツの雨、夜にまとまった雨が降り、現在も断続的に降っています。大雨になったところもあるようです。台風もウロウロしているし、油断がならないですね。
ボージーさんもどうぞご自愛くださいませ。
どうぞ、本もお楽しみください。読書でしばし蒸し暑さを忘れていただければ幸いです。