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サワノのお気に入りだけで構成するブログ

ルーシー・リー

2007-01-23 | デザイン・アート・クラフト
ルーシー・リー(1902~1995)。
昨年末に 街なかでこの展示会のポスターを見るまで
私はこの女性陶芸家を知りませんでした。
しかしなんとバーナード・リーチ、ハンス・コパーとともに
イギリス近代陶芸の三巨匠と言われ その世界では神様のようなヒト! 
ヨーロッパやアメリカは勿論、日本でも人気が高いそうです。
...お恥ずかしい限りです



ポスターを見て私がイメージしたのは、
この陶芸家は女性らしい繊細な 気品に満ちた作品を作る ということ。
陶芸界の中においてはまだ若く(推定40代後半くらいの)今風の美人で
バリバリ仕事をこなして生きるこの業界の注目株...、そんな感じでした。
...ところがその後ネットで調べてみると 
彼女に対する印象は 全く裏切られてしまいました。
写真に写る彼女は ちょこん とした品の良さそうなおばあちゃん。
そう、すでにおばあちゃんでした。

1902年オーストリアに生まれ、1922年ウィーン工業美術学校入学。
この頃のオーストリアではウィーン分離派、ウィーン工房が活躍し
ヨーゼフ・ホフマン等 工房のメンバーが工業美術学校で教鞭を執っています。
ウィーン工房とは密接な結びつきがありました。
その後ホフマンの後押しもあってウィーンに工房を構えたルーシー・リーは
テーブルウェアなどを製作しミラノ・トリエンナーレや
ブリュッセル、パリ万国博覧会で入選を重ね
モダンな作風の陶芸家として頭角を現します。

1938年、ナチスによってオーストリアが占領され 迫害を逃れて渡英。 
食べていく為にガラス工房でボタン製作に関わりました。
ロンドンのファッションデザイナーの細かい色の注文に
見事な釉薬の色彩の表現で対応していった様です。
そして終戦後、本格的に陶芸活動を開始。

バーナード・リーチとの出会いは渡英間もない1939年。
リーチは柳宗悦、濱田庄司と親交が深く
それまで個人の手による陶器は認識されていなかったイギリスの陶芸に
「生活用品を作る」ことだけでなく
「自己表現の手段」という考えを確立させています。
ルーシー・リーもまた、1940年から1950年代のイギリスで
それまでとは違う軽量で薄い器作りを確立させて
ロクロに向かい続けた作家人生の中に二度と同じ作品は無いという
実験的な製作を繰り返していきました。




2002年には日本でも生誕100年を記念した回顧展が数カ所で行われていました。
現代作家の手による作品の様な器たちは
主に1960~1970年代にかけて創作されたモノ。
美しいモノとは これ程までに色褪せないんですね。

年末年始のバタバタの中で彼女に対する意識が次第に薄れて 
展示会場に足を運ぶことも「ま、いいか」なんて思い始めた頃、
ある方から「もう行きましたか?」というメールを頂き
これはキッカケを下さったのだと思い直し
今日、初めて彼女の作品を見てきました。
繊細で気品に満ちた作品だという最初の印象は変わりませんでした。
誰かの作品を見てココロがふるえる感覚を
久し振りに味わって来ました素晴らしい展示会でした。


写真は展示会図録より。





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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (nao)
2007-01-25 22:41:58
こちらのブログを拝見して早速静岡アートギャラリーに行ってきました。私もルーシー・リーという方を知らなかったのでとても勉強になりました。またオジャマします
返信する
Blogの社会的影響力が… (artisan)
2007-01-25 23:37:28
 すごいね。さっそく記事を参照して出掛けたのですね。
あなたはウィーンへと渡欧するとのことですが、近代アート&クラフトのムーブメントを検証する旅路になりそうですね。
ルーシーの足跡も見つかるのかな? 
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コメントありがとうございます♪ (サワノ)
2007-01-27 18:30:23
naoさん
訪問ありがとうございます!
私も全く知識のない中でアートギャラリーに行きましたが
初心者にも解りやすい丁寧な展示でしたよね。
入場料500円という価格も魅力です

artisanさん
ウィーンは比較的小さな街で
ツアーだと一日半~二日の滞在日程でまわっている様です。
しかし古典も、セセッションも、近代も、となると
限られた時間がハードになることが予想されます
私が予約したホテルの前から中心部に延びる道は
ヒトラーが美大の受験に失敗した帰路にあたるそうです。
彼が美大に受かって売れない画家になっていたら
歴史は変わっていたかもしれません。
おっと、これではヒトラーの足跡ですね...。
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