Stelo☆ panero

変態ですがよろしくお願いします。更新は気分次第、気の向くままに。新題名は、エスペラント語で、星屑という意味だったり。

【風船魔導士 クオラ】 二時限目 社会

2015-10-29 00:28:09 | 妄想小説
1)
 アネモネ魔法学院があるポワント・ウカーヴ皇国は、ウェンティア大陸の中央に位置し、エオリア朝が政を行っている立憲君主制の国家であり、その皇都アネモネアに政治と文化の中心を有している。
 アネモネ魔法学院の正式名称は、皇立ポワント・ウカーヴ・アネモネア・エオリア・マジック・アカデミーという長ったらしい名前で、理事長のリナは一応、皇族であるのだが、普段からの行動を見ても、とても姫様とは思えないこともある。
 クオラを教室へと送った後、独り、風船をつまんで、ためいきをつく、今のリナもそうだった。

  「 何なのよ。この風船…。人を選んでいるような?」

 話によれば、旧エオリア宮で、魔素の空白地帯である、通称、【魔女の狩り場】が現れたらしい。近年になって現れ始めた天災とも、どこかの黒魔術師の呪いだの、あるいは、近年開発された魔素機関なる機械のせいだとも言われているが、
正確な発生理由は分からない。ただ、魔素を資源として頼みにする、この世界中の国家は、この案件を重要視していた。

  「 まっ…いっか。パシアニド通りの鑑定士に、これ、見せに行こうっと。」

 リナは、ポケットに風船を入れると、繁華街へと繰り出すのだった。

2)
 一方、クオラは、教室でぼんやりとポシェットを眺めながら、気が抜けていた。

  「 はふぅ。このポシェットって、そんなに高級品だったんだぁ~。」

 ただの風船入れじゃなかったのね。つか、どこからか、風船が出てくるしね~。なんて、物思いにふけっていると、正午のチャイムが構内に鳴り響いた。

  「 あ。食堂行こうっと。」

 確か、日替わりで、人気のステーキ定食が出てたはずだった。そのことを思い出したら、きゅるるるとかわいらしく、おなかの虫が主張をはじめたので、クオラは、教室を後にした。

3)

 皇都アネモネアいちの繁華街であるパシアニド通りに行くと、冒険に必要なアイテム類も一通りのモノは揃うというギルドのクチコミから、人が集まる場所として、繁華街の名に恥じない様相を呈している。
 その大通りから、路地に入った奥の袋小路に、鑑定屋はあった。

   「 へぇ~?これは、また珍しい品ですなぁ。」

 どこぞの長老と言ってもいいような鑑定士が、リナの持参した風船を見て、感歎の声をあげた。

   「 ということは、ただの風船じゃぁないの?」

 普通の風船なら、モンスターを解体したときの余りものから作るので、二束三文で玩具屋で売っているのだが、それとは異なるモノらしい。

   「 これは、どちらかというと、魔道具ですな。【魔女の狩り場】なんてものが問題になっているこのご時世なら、欲しがる人も多いでしょうな。」

   「 ふむふむ。それで、買い取り額は?」

   「 そうですなぁ。リナ様には、上質なアイテムを持ってきてもらっているし、相場と期待を入れて…。」

 リナの問い掛けに、店の主が提示した額は、逼迫した学園の窮状を救うに値するものだった。

4)

 「 はぁ~。食った、食った。ステーキ定食、最高ぉ~。」

 クオラは、満足げにおなかを摩りながら、校舎のベランダに敷かれた芝生の上に寝そべっていた。

 「 それにしても、平和だね~。そだ、入門書…。入門書…。」

 「 おっかしいなぁ?無くなってる。」

 不思議なことに、懐に入れていたはずの風船魔法の入門書が消えていた。

 「 無くさないように、入れておいたはずなのに。」

 戸惑いながら、クオラが懐を調べていると、飴色のしぼんだ風船が見つかった。

 「 ん?ふ~せん????」

【つづく】 

【風船魔導士 クオラ】 一時限目 美術

2015-10-25 14:44:57 | 妄想小説
1)
  アネモネ魔法学院は、保育園から大学院まで一貫した教育施設で、幾つかの専門科目に分かれて学ぶこととなっているが、魔法剣士科だけは、特別にすべての学科を習得しなければいけないことになっている。
 それゆえに、魔法学院の中でも、エリートが集い、偏差値も高く難関とされていた。そこの中等部1年にユルギスは所属していた。その教室の窓際の席で、彼は物思いにふけっていた。

  「 しっかし。昨日のあれは何だったんだ???」

  と、独りごちているのは、先日の午后の課外授業での出来事のことだ。
  ドラゴンが炎を吐いて、やられるっと覚悟して不覚にも目を閉じた刹那の間に、何かがあったらしい。
 
   「 あの魔法は、どう考えたって、最高位クラスの水系氷結魔法だったよな。」

  ドラゴンの炎まで凍結させるなんて、彼が知りうる中では、至高の凍結魔法、コーキュティアくらいしかありえないのだが、魔素が減衰していたあの場所で、誰がどうやって、発動させたのか?

   「 ん~?まぁ、いいか。」

  ユルギスは、あっさりと追及を止めて、授業へと専念することにした。

2)
 同時刻。魔法科の生徒は、美術室にいた。

  「 あぁ、も~。美術とか、かったるい~。」

 クオラ・バロニア・ティルル・ポエニカは、オッドアイを潤ませながら、紫水晶のような左目に涙をにじませ、あくびをした。

  「 クオラ~。そんなこと言わないの~。」

 同級生の、リルル・ラルル・リルルが、呆れながら、クオラを窘(たしな)めた。

  「 だって、色によって魔法の効果が変わっちゃうとか、めんどくさいじゃない~。」

 クオラが、ウザそうにリルルとしゃべっていると、美術教師の耳にも入ったのか、

  「 ほぉ?めんどくさいとな?クオラ・ティルル・ポエニカ。」

  「 バロニアが抜けてます~。ダリせんせ~。」

  「 うっさいわ。お前には、身をもって、魔法画の効果を示さんといけんようだな。」

 美術教師は、さらさらさらと猛烈な勢いで、キャンバスに、クオラの自画像を描くと、

  「 赤は、炎系。」

 クオラの自画像を、赤く塗りつぶすと、クオラの身体も火が付いたように熱くなっていく。

  「 あち!あちっ!」

  「 青は、水系。」

 ついで、別のキャンバスに描いたクオラの肖像画を、青く塗りつぶしていく。
 どこからか、ザバンと水がかかる音がして、クオラの身体は水浸しになった。

  「 くちゅっ…ん!」

 かわいらしく、クオラはくしゃみをすると、教師に文句を言おうとした。

  「 な、何をするん…。」  

 が、耳もかさず、教師は、更に黄色に線画だけの自画像を塗りたくる。

  「 まぶしっ!」

 クオラ自身が発したストロボの光に、一瞬、目を閉じると、服が元に戻っている。

  「 あ?あれ?」

 美術教師は、再び、教壇の前で、魔法画の基礎を板書していた。

  「 さて、クオラが自ら実験台になったように、色には魔力が込められている。

    赤は、炎系。青は、水系。黄色は、時間系というように…。

    教科書の12ページに、表として載せてあるから、確認しておくように。
    
    あと、クオラ、授業の後、職員室まで来るように。」

 クオラといえば、狐にでもつままれたような表情をしていた。

3)
 さて、アネモネ魔法学院の重要な収入源は、学費ばかりではない。課外授業で手に入れたアイテムを売りさばくことでも、収入を得ている。

  「 で、クオラ。昨日の課外授業のことだが。旧エオリア宮だったらしいな。」

 クオラが、休み時間、職員室に向かった後、通されたのが、理事長室だった。彼女の目の前で、偉そうな口調で尋ねる幼女が、理事長のリナ・カリオペア・アネモネアだった。

  「 はい。たしか、そうだったような?リナ理事長。それが?」

  「 ふむ、まずは…。レッドドラゴンが、宝物庫に出たそうだな?すまなかった。」

 二人っきりの部屋で、神妙な口調をし、リナはクオラに謝辞を入れた。

  「 え?頭をあげてください。そんな…。」

 慌てるクオラに頭を下げたまま、リナは、本題を切り出した。

  「 いや、すまなかった。だが、学園の金庫も逼迫している。話を聞いてはくれまいか?」

  「 そりゃ、別にいいですけど?」

 引き受けの言葉を受けて、初めて、リナは顔をあげた。

  「 よかった。ありがとう。実は…。」

 リナの話によれば、旧エオリア宮には、世界随一の秘宝が隠されていたらしい。

  「 ひほう…、ですかぁ?」

 そんなものあったっけ?という表情で、クオラは記憶を探ってみるが、全く心当たりが見当たらない。

  「 もし売ったら、その額、少なく見積もっても、1000万阿僧祇ギュエルていう、途方もない宝なのよ。竜が守ってるという。」

  「 い…、いっせんまんあそうぎぎゅえる…????!!!!」

 この世界の全ての国の国家予算、一千万年分の額を言われ、クオラは卒倒しそうになった。

  「 ええ、それだけあれば、サービスも充実できるし、今、有料の学費と寮の費用も賄えるわ。」

  「 いや、でも、まさか、あれ…が????」

 昨日の授業で、宝箱から出てきた革製の古ぼけたポシェットを思い出す。それは、彼女のリュックの中に無造作に入れてあって、個人用に割り当てられたロッカーの中に、そのリュックは入れてあった。

  「 やっぱり、何か出てきたのね?宝石?大量のギュエル金貨?それとも、入手困難なミスリル鉱?」

 目を煌めかせながら、リナは、クオラに詰め寄った。

  「 ちょ…。そんないいものじゃないですよぉ。風船が出てくるポシェットですってば。」

 クオラは、詰め寄るリナを押しとどめながら、真実を語った。

  「 へっ????」

 と、一言だけリナは発して、石化したように動かなくなってしまう。

  「 理事長????」

  「 ・・・・・・・・・・。」

  「 りじちょぉ~???」

  「 ・・・・・・・・・・。」

  「 守銭奴ロリ~????」

  「 はっ!・・・・・・・。持ってきて。そのポシェットを、早く。」

 しばらくたって、ようやく我に返ったリナは、クオラにポシェットを持ってくるよう促すのだった。

  「 は、はい。」

 ぱたぱたぱたと足音を響かせて、廊下に出るクオラを見送りながら、リナは、

  「 守銭奴ロリって…?私?」

 と、首をひねるのだった。

4)
 しばらくして、クオラが持ってきたポシェットを、ためつすがめつ見ながら、リナは頭を捻った。

  「 ふむふむ…。この留め具かわいらしいわ。この意匠も好み。」

 風船をデザインした留め具は、結わえた紐で魔法陣を描いている。
  
  「 開けていいかしら?」

 クオラが頷いて了承すると、リナは留め具を外して、中に手を入れてみる。

  「 あら?何も出てこないわね?」

 リナが、何度も試してみるが、何も出てはこなかった。おかしいなと思いながら、次はクオラが、中に手を入れてみる。

  「 えっ?おかしいですね。確かに…。」

 すぐに柔らかい手ごたえがあって、クオラは赤い風船を取り出してみせた。

  「 ほら、風船です。」

 クオラは、手にした風船をリナに見せた。

  「 ほっんとね…。ふ~せんだわ。ちょっと、貸して?」

  「 どぞ?」

 クオラが、風船を渡すと、リナは深呼吸をして、風船の吹き口に口づけた。

んん~~~~~~~~~っっっ!!!!

 小さな身体をくの字に前屈させて、顔を真っ赤にしながら、頬をふくませて、風船に息を吹き込もうとがんばるリナ。

んんん~~~~~~~~~っっっ!!!!!!

 だが、その努力も虚しく、一向に風船はふくらむことはない。

んんんん~~~~~~~~~~~っっっ!!!!!! ぷはぁっ!

 「 ぜぇ、な…。何なのよ。ぜぇ、このふ~せん、ぜぇ、硬…。ぜぇ、ぜんぜん、ふくらまない。」

 リナは、肩で息をしながら、一向にふくらまない風船に不満を述べた。

 「 おかしいですね~?ちょっと、ウチにも。」

 「 どうぞ。私と一緒に赤っ…。

すぅ、ぷぅぅぅ~~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅ~~~~っ!

 恥…

すぅ、ぷぅぅぅ~~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅ~~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅ~~~~っ!

 を…ってぇ!」

 リナの目の前で、余裕で風船をふくらませるクオラ。

 「 なんで、あなたは余裕でふくらませるのよぉ!私、理事長よ。理事長。」

 リナの糾弾に、クオラは、風船に口づけたまま答えた。

 「 ぶぅ~ぶぶぶ…(ん~?なしてだろう)?」

 「 むぅ~~~~っ。も、いっこもらえる?」

 クオラは、ポシェットから風船を取り出すと、リナに渡した。

 「 とりあえず、これだけでも、鑑定に出してみるわ。」

 リナは、そういって、恥ずかしそうに、風船を手に取るのだった。

【つづく】



【風船魔導士 クオラ】 それはね?魔法のふうせんだったから

2015-10-22 01:49:44 | 妄想小説
1)
 くっそっ!やっぱ、一筋縄ではいかないぜ…。アネモネ魔法学院魔法剣士科で、クオラの同級生。ユルギスは、レッドドラゴンを前に、心の中で毒づいた。

 週に一度の課外授業で、モンスターに襲われることは、そう珍しくはない。、だが、死傷者も必ず何名かは出ている過酷な授業が、続けられている理由は、
ぶっちゃけ、実戦を積ませて、経験値をあげることだろうと、ユルギスは、あたりを付けている。それ故に、班分けしたパーティーの構成も、魔法剣士科より
一名、魔法科より二名の三名によると決まっている。
 だから、ユルギス、クオラ、リルルのパーティーと決まったとき、クオラが居ることで、内心、しくじったと彼は思ったのだ。 

 そして、今、前方のモンスターから、目が離せない状況下で、背後からは、魔素が薄くて、魔法が使えないとパニくるリルルの声や、なぜか、風船という単語が聞こえていたが、
覚悟を決めたのか、それも、静かになった。なんとも妙な、すぅ、ぷぅぅぅ~、すぅ、ぷぅぅぅ~~という呼吸の音がするだけだ。

 しかたない。魔法が使えないらしいのは、俺も同じことだ。

 ユルギスは、覚悟を決めて、剣を握りなおした。

2)

 さて、クオラが読んだ風船魔法の入門本には、魔素が薄いところでも平気、強力な魔法が使えちゃうよと記されていたのだ。

 それなら、イチかバチかで使わない手は無い。なにせ、発動方法は、ひたすら、息で、ポシェットから出した風船をふくらませるだけなのだから。

すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ! 
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!

 青い風船は、透明度を増しながら、ふくらんでいき、クオラの上半身を隠すまでにふくらんだところで、その膜の表面に、見慣れた図形が現れてくる。



3)
 今まで、レッドドラゴンが唸るばかりで、攻撃に転じなかったのは、特大の炎のブレスを、闖入者へと喰らわせるためだった。
 準備はできたとばかりに、大きな口を開き、火炎放射器よろしく、炎を吐いた。クオラによって、頭上にトスされた青い風船は、当然の如く無視された。

 それが、レッドドラゴンの敗因だった。

4)
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!

ぷはぁっ!

 「 これだけふくらませば、充分よね。」

 クオラは、満足げに、愛らしいくちびるを、ふくらましていた青い風船から離した。
 優に一抱えはあるだろう、その風船は、その表面に、青の魔法陣を明滅させながら、クオラに抱かれている。

 その口から、息が漏れないように結わえようと、慣れた手つきで、吹き口を縛って両手を放すと、ふわりと浮きあがって、
ドラゴンの頭上へと、ふわふわと進んでいった。



5)
 ユルギスが、やられると思い、不覚にも目をつぶったその瞬間。

 「 あ…、れ…???」

 いつまでたっても、レッドドラゴンの炎で、灰にならないので、目を開くと、

  「 。。。。。。嘘だろ?炎ごと、凍結してる。」

 何が起きたかはわからないが、とにかくチャンスなので、匠の手で掘られたかのような氷のドラゴンの彫像を、持っている剣で叩き割った。

6)
 (ふぅ、うまくいったみたいね。)

 レッドドラゴンが倒されるまでを、クオラが見ていると、ドラゴンが倒された後に、赤い風船が落ちている。

 あれ?今までなかったよね?と、疑問を感じ、再度、風船魔法の入門書をひもとくと、

 風船魔法で倒したモンスターは、その特性に応じた色の風船になります

なんて、記されてある。ユルギスとリルルは、風船に気付かずに部屋の外に出たようだった。
 どうやら、とっくに、学校へと戻ったようである。
 クオラは、赤い風船をひろって、マントの裏のポケットへと忍ばせて、二人の後を追っていった。

【つづく】

【風船魔導士 クオラ】 なして、ふうせん?

2015-10-20 13:23:56 | 妄想小説
 

1)

 左手の革製のポシェットから出てきたのは、しぼんだ青色の風船だった。

  「 ふうせん……???」

 絶対絶命の事態に、何か武器なり魔力を回復させる薬品なり出てこないかと、一縷の望みを託して
この宝物庫の奥に、大事そうに隠し扉の中にあった宝箱から出てきた革製のポシェットの中から出てきたモノは、

  「 何の変哲もないふーせんじゃない?!」

 という、しょぼいというか、何の足しににもなりそうもない玩具だった。

 ぐるるると唸るレッドドラゴンの、巨大な口から見える牙の隙間から、チロチロと炎が漏れ出ている。

  「 あああ。もう、ダメ。」

 クオラと、一緒の班を組んでいた魔法科の女生徒は、天を仰いだ。
 それは、クオラも同じで、思わず、ダンジョンにツッコミを入れてしまった。

  「 ど、どうしろっていうのよ~~~っ!」

 と、そのとき、はらりとクオラの足元に、古ぼけた羊皮紙のスクロールが、落ちてきた。

  「 何だろ?この紙?なになに…?」

 その巻物は、【風船魔法入門】と記されたものだった。

  「 【風船魔法…、にゅうもん】????」

 クオラは、その巻物に記された文章を目で追った。

2)
 『 【風船魔法入門】
       
       やっほぉ♪よい子のみんなげんきかなぁ。ふうせんだいすきだいまどうしのたふぃおねえさんだよぉ♪

       きょうは、よいこのみんなに、とっておきのまほうをおしえちゃうぞ💛

       おねえさんが、こうあんしたふーせんまほうだよん♪ みんなぁ、ちゃぁんとおぼえてねぇw』


   ……って!ふざけてんのか、この人。クオラは、手をふるわせながら、巻物を読み進めていくと、


   「 これって…。」

 巻物の中の一文に、括目し、息を飲んだ。



3)

 確か、魔法剣士科の子も、同じ班だったはずだけど????

 そう思い出しながら、周囲を見渡すと、たった独りでレッドドラゴンに立ち向かおうとしている男子生徒がいる。

 もし、この巻物を信じるなら、彼の助力が必要だ。

   「 彼には悪いけど、今のうちに…。」

 クオラは、思いっ切り息を吸い込むと、しぼんだ青い風船の吹き口に、口づけた。

【つづく】

【風船魔導士 クオラ】 プロローグ

2015-10-19 21:50:40 | 妄想小説
1)

 課外授業で入った神殿で、クオラ・バロニア・ティルル・ポエニカは、困惑していた。
 目の前には、宝物の番人のレッドドラゴンが、出入り口を背に唸り声をあげているし、絶体絶命の彼女の手には、この部屋の宝箱から出てきた革製のポシェットが握られている。

  「 見て。クオラ。ここの魔素量、極端に薄いよぉ。」

 一緒にまわっていた班の少女が、大気中の魔力の素となる物質の量を測る魔素量計がついたブレスレットを、クオラに見せて怯えている。

  「 ほ、ほんとだ…。これじゃあ、魔法がつかえない。」

 なんで、こんなことになったんだろう。クオラは、数時間前の出来事を思い出していた。

2)
 

 その日のアネモネアの空は、青色光を反射する魔素粒子が満ちているからか、どこまでも、高かった。
 
  「 ん~~~~っ!いい天気っ!」

 アネモネ魔法学園の校庭のベンチで、亜麻色のショートカットの少女が、仰向けのまま、背伸びをした。

  「 中等科ウンディーネ組のクオラ・バロニア・ティルル・ポエニカさん。クオラ・バロニア・ティルル・ポエニカさん。いらっしゃいましたら、職員室までおいでください。」

 校庭にひょこんと立っている鉄塔の頂きに備え付けられた、遠くからの声を飛ばして増幅させる魔導機から、何度も、少女の名を呼ぶ声がする。
 それもそのはずで、肝心の授業をさぼって、工程のベンチで寝ているのだから、また、担任の教師に厳重に注意されるのだろう。
 少女は、面倒くさそうに、あくびをすると、再び、布団替わりのマントに潜ったが、亜麻色のショートだけが、外に見える。

  「 ふぁぅ。おちこぼれ、独り、ほっておいてよね~。」

 いじけた調子で少女が、毒を吐くと、業を煮やした担任の、魔導機を破壊するほどの怒鳴り声が、ハウリングを起こしつつ、校庭に響いた。
 

  「 くぉらああっ!クオラ!早く、来ないと補習増やすぞ~。」


  「 きゃああっ!分かった、わかりました~。」


 そう言って、布団替わりのマントを羽織ると、少女は、校舎へと、歩を進めた。

3)

 少女、クオラが、不承不承、職員室に赴くと、案の定、担任の大目玉を喰らった後で、ため息をつきながら、語り掛けられた。


 「 クオラ。お前、真面目に授業出たらどうだ?」


 「 そんなこと言われても、うち、才能ないし…。」


 しょんぼりとクオラはつぶやいて、落ち込んだのも、無理はなかった。

 彼女は、魔法の才能がからっきしだったのだ。

  「 それなんだが、おかしいんだよな~。」

 これは、クオラ本人には聞かされていないことだが、学園に入学時に、魔力がどれくらいあるのかを入学試験の一環で計ったときに、クオラは、学園はじまって以来の最高値を弾きだしていた。
 にも関わらず、おちこぼれなのは、担任も困惑するところだった。

  「 先生・・・?」

  「 ん?何でもない。とにかく、午後の課外学習の授業には出るんだぞ。」

 それだけ言われると、クオラは放免されたのだった。

4)

 そして、今、何かないかと、クオラは、手にした革製のポシェットの中身を、まさぐっていた。
 すぐに、何か柔らかいものの手ごたえがあったので、クオラは、手に取って取り出してみると、

  「 ふうせん・・・????」

 だった。


  「 ど、どうしろっていうのよ~。」

 【つづく】