危惧されていたことが現実化した。沖縄県尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、海上保安庁の撮影とみられるビデオ映像がインターネット上に流出し、政権を揺るがす深刻な事態となっている。
問題点は2つある。1つは情報管理の不備だが、より深刻なのはビデオ映像を非公開とした政府の判断である。
ビデオは、海上保安庁と那覇地検に厳重に保管されているといい、流出には内部の人物がかかわった可能性が高い。一部の公務員が、自らの判断で映像を流出させたのならば、官僚の倫理欠如を示すゆゆしき事態である。
仙谷由人官房長官は、5日の記者会見で今回のビデオ映像と警視庁の捜査情報の流出に関連、「流出とすれば、相当大きなメスを入れる改革があらゆるところで必要だ」と述べた。一見、もっともらしいが、情報漏洩(ろうえい)の「犯人捜し」と組織改革に国民の目をそらそうという意図が透けてみえる。
何より最大の問題は、菅直人政権が、国民の「知る権利」を無視して、衝突事件のビデオ映像を一部の国会議員だけに、しかも編集済みのわずか6分50秒の映像しか公開しなかった点にある。
政府は、公開しない理由について刑事訴訟法47条の「証拠物は公判前には公にできない」を主な根拠にしてきた。だが47条は「公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない」と規定している。
今回のビデオ映像を見れば中国漁船が意図的に海保の巡視船に体当たりしたことは明らかだ。映像の公開は、中国人船長を逮捕した海保の判断が、妥当であったことを国民や国際社会に示す意味でも明確な「公益性」がある。弁護士でもある仙谷長官が、中国をアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に参加させようと、故意に条文の解釈をねじ曲げたとしかいいようがない。
「大きなメス」を入れるべきは、真実を国民の目から覆い隠し、対中弱腰外交を繰り返してきた民主党政権自身である。
ビデオ映像は、中国漁船の違法性を証明する証拠として、本来なら政府が率先して一般公開すべきものだった。遅きに失したとはいえ、菅首相は国民に伝えるべき情報を隠蔽(いんぺい)した非を率直に認め、一刻も早くビデオ映像すべての公開に踏み切るべきだ。
※産経新聞「11月6日」から転載しました。
問題点は2つある。1つは情報管理の不備だが、より深刻なのはビデオ映像を非公開とした政府の判断である。
ビデオは、海上保安庁と那覇地検に厳重に保管されているといい、流出には内部の人物がかかわった可能性が高い。一部の公務員が、自らの判断で映像を流出させたのならば、官僚の倫理欠如を示すゆゆしき事態である。
仙谷由人官房長官は、5日の記者会見で今回のビデオ映像と警視庁の捜査情報の流出に関連、「流出とすれば、相当大きなメスを入れる改革があらゆるところで必要だ」と述べた。一見、もっともらしいが、情報漏洩(ろうえい)の「犯人捜し」と組織改革に国民の目をそらそうという意図が透けてみえる。
何より最大の問題は、菅直人政権が、国民の「知る権利」を無視して、衝突事件のビデオ映像を一部の国会議員だけに、しかも編集済みのわずか6分50秒の映像しか公開しなかった点にある。
政府は、公開しない理由について刑事訴訟法47条の「証拠物は公判前には公にできない」を主な根拠にしてきた。だが47条は「公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない」と規定している。
今回のビデオ映像を見れば中国漁船が意図的に海保の巡視船に体当たりしたことは明らかだ。映像の公開は、中国人船長を逮捕した海保の判断が、妥当であったことを国民や国際社会に示す意味でも明確な「公益性」がある。弁護士でもある仙谷長官が、中国をアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に参加させようと、故意に条文の解釈をねじ曲げたとしかいいようがない。
「大きなメス」を入れるべきは、真実を国民の目から覆い隠し、対中弱腰外交を繰り返してきた民主党政権自身である。
ビデオ映像は、中国漁船の違法性を証明する証拠として、本来なら政府が率先して一般公開すべきものだった。遅きに失したとはいえ、菅首相は国民に伝えるべき情報を隠蔽(いんぺい)した非を率直に認め、一刻も早くビデオ映像すべての公開に踏み切るべきだ。
※産経新聞「11月6日」から転載しました。