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熟年オジサンの映画・観劇・読書の感想です。タイトルは『イヴの総て』のミュージカル化『アプローズ』の中の挿入歌です。

世界最速のインディアン

2007-03-02 | 映画
1960年代に、改造バイクの最速記録に挑戦するために、ニュージーランドの最南端の町から米国ユタ州ボンヌビル・ソルトフラッツ(塩の平原)を目指した、実話に基づいた62歳のバート・マンロー(アンソニー・ホプキンス)の話である。
バイク一筋の人生ということは、周囲にも迷惑を掛け、或る意味で偏屈な生き方をしてきたことの証拠とも言えるが、その辺はあっさりとしか描かれていない。
しかし、バイクに興味が無くても、この愛すべき男を、隣家の少年だけでなく誰もが好きになってしまい、熟年世代へのエールもいっぱい詰まっており、観終わっった後、元気づけてくれる心地よい映画である。

年金暮らしで身寄りの家族も無く、健康にも不安が生じてきた彼を突き動かした動機は、永年自己流の改造を加えて速度計も付いていない愛するマシーンの本当の実力を、動けるうちに自身で確認したかったからである。同じ熟年世代としてはとても良く理解が出来てシンパシーを感じずにはいられない。
「夢を追わない人間は野菜と同じ」とか、「一生より充実した5分間」とか、「顔にシワがあっても心は18歳」とか、主人公は夢を追うだけではなく、ユーモアとしっかりとした人生哲学を持っているのも魅力的だ。

船でアメリカ東海岸へ到着早々に経験する、タクシー運転手や売春婦のエピソードはカルチャーショックとして描かれるが、中古車ディーラー、先住民のインディアン、モーテルで働く女装の男、独居の未亡人、ヴェトナム戦争の休暇兵など、旅の途中で出会う人たちは、全て善意の人ばかりというのが、少し出来すぎた感じである。これもきっと彼の魅力の成せる技で、親切で良い人を惹きつけるからなのだろう。
あの怖ろしいハンニバル・レクター博士は、ちょっと「歳は食って」はいるが、絶えずユーモアと笑みを湛えた熟年オジサンでも、やっぱり「人を喰った」巧さを見せてくれた。
ちょっと行き詰った人や、刺激が無い毎日を送っている人には、絶対お奨めの意外な拾い物の一作である。


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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (ケント)
2007-03-02 23:32:38
TBありがとうございます
確かに周りが善人ばかりなのは、ちょいと出来すぎでしたね。まぁそれでも気分が良くなる楽しい映画でした。
ただ実際にあんな人がいたら、奥さんは困るでしょうね。
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夢を追う (butler)
2007-03-03 10:56:53
>ケントさん、

趣味に生きると言うことは きっと家族にとっては
犠牲を強いられることでしょうね。
バイク改造工場が寝室ですもんね。
「男のロマン」と ひとことで美化してしまえば
それまでですが 歳をとっても 夢を追うって
やっぱり 憧れてしまいます。

TB&コメントありがとうございます。
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