千葉山(ちばさん) 大黒天女(だいこくてんにょ)、吉祥天(きっしょうてん)
【データ】千葉山 496メートル▼国土地理院25000地図 向谷▼最寄駅 JR東海道本線・島田駅▼登山口 静岡県島田市千葉の千葉寺▼石仏 千葉寺境内から奥ノ院にかけての参道。地図の赤丸印は大黒天女。
【独り言】千葉山はいろいろな石仏、珍しい石仏が見られる石仏好きには楽しい山。そのいくつかを紹介します。かつての参道だった島田市尾川からの道には西国三十三所観音が町石のように立ち、山門手前の土手には大きな魚濫(ぎょらん)観音が立っていました。大きな魚が入った魚濫(魚を入れる篭)が見事です。それから境内には「貞享五年(1688)」銘のある三猿の「青面金剛供養塔」。
そして奥ノ院の道に米俵を頭上にのせる「大黒天女」が立っていました。大黒天女は日本石仏協会の『日本石仏図典、続日本石仏図典』にあたってみましたがありませんでした。この本に紹介されていない石仏は珍しい石仏といえます。それでも何かに出ていないか探してみると、佐和隆研遍『仏像図典』に「近世のものに六大黒天あり。比丘大黒、摩伽迦羅大黒、王子迦羅大黒、信経大黒、夜叉大黒、摩伽羅大黒」とありました。そこで近世の神仏図像集『仏像図彙』を開くと、頭に俵をのせる「摩伽迦羅大黒女」がありました。つぎに現れたのは吉祥天です。左手に宝珠を持ち、右手は与願印。これもなかなか見られない石仏です。
山頂のだるま杉に立つ線刻石仏は馬に乗る甲冑姿の勝軍地蔵。この線刻、どこかで見た覚えがあるので古い写真を調べたら、栃木県の佐野市の愛宕山にほとんど同形の勝軍地蔵=写真右=がありました。どちらも『仏像図彙』を手本にしたに違いありません。そして 雷杉にある天狗姿の阿修羅坊は千葉山で案内しました。