偏平足

里山の石神・石仏探訪

石仏513室根山(岩手)

2014年05月05日 | 登山

室根山(むろねさん) 三十三体観音(さんじゅうさんたいかんのん)

5130_3 【データ】室根山 894メートル▼国土地理院25000地図・折壁▼最寄駅 JR大船渡線・折壁駅▼登山口 岩手県一関市折壁の蟻塚公園▼石仏 室根山山頂近くの室根神社境内。地図の赤丸印、緑丸は姫滝、青丸は登山口

 5131_2 5132 【案内】室根山は、北上山地の南部にあるこの地方の主峰。山中に室根神社を構える山岳信仰の中心となった山でもある。室根神社の境内には紀州熊野から勧請した本宮と新宮が並び建つ。その境内奥に三十三体観音の石仏が祀られている。どれも80センチ近い大きさで、観音の像容も丁寧に彫られている。
 法華経の普門品(観音経)にいう、観音が三十三に姿を変えて衆生を救うことに因んで生まれた三十三観音。その姿は経典とは無関係で、中国風の像容が多い。これとは別に、三十三か所の観音を祀った寺を集めた三十三観音霊場があり、こちらは聖・十一面・千手・如意輪などを本尊とするため、観音が重複していることなどは、このブログの明神岳(神奈川)で案内した。この二つを区別するため、石仏では観音経に機縁するものを三十三体観音、札所の石仏を三十三所観音と区別している。石仏の三十三観音の多くは三十三所観音で三十三体観音は珍しい。
5133 5134 室根山室根神社の石仏は珍しい三十三体観音である。ところが、この三十三体のなかに聖観音・千手観音・馬頭観音などの七観音はじめ子安観音など、三十三体観音には含まれない観音があり、その数だけ本来あるべき三十三体観音の七観音が省かれている。これはどうしてなのか。その回答は、下山して訪ねた一関市千厩町岩清水字荻生田の永澤寺にあった。詳細は次回ブログ・迦陵頻伽岡(岩手)の【独り言】で案内する。

 5135 5136 【独り言】室根山の熊野三所権現 山頂近くまで車道が通じている室根山ですから、これを利用する人が多いのは当然ですが、中腹の蟻塚公園に大きな駐車場があって、ここからかつての登山道を登る人もたくさんいました。東北を登る人たちの大らかさを感じます。紀州の熊野の神を遷し祀ったといわれる本宮と新宮の社殿が、室根山の山頂近くに並んで建っています。しかし熊野三所権現のもう一社、那智の社殿がありません。本宮の前にある案内には、本宮が勧請されたが養老二年(718)、新宮は正和二年(1313)とあり、那智については一言もありません。三山が揃ってはじめて熊野と思っている私などは、那智社がないと落ちつかないのですが、室根山ではそんなこと気にしません。そもそも熊野にしても本宮と新宮だけで、那智は修行場だったという時代もあったそうですから、三山にこだわる必要がないのかもしれません。しかしどうしても那智社がほしい偏平足としては、それにふさわしい場所を登山道の途中で見つけました。姫滝です。
5137 室根神社の脇にある三十三観音から湧き出す清水が、中腹で小さな流れとなって岩場を滑り落ちる所が姫滝で、そこに十一面観音石仏と石祠が祀られていました。石祠の側面にある銘は「ふだらくや きしうつ奈みハ ミくま能の なち能おやまに 比びくたきつせ」と読めました。西国札所第1番でもある、那智青岸渡寺の御詠歌です。そういうわけで、この石仏こそ那智の本地仏の十一面観音であり、石祠が那智大社とみれば、室根山に熊野三山が揃うことになります。石祠には「寛保二壬戌(
1742)」とありました。

 

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