先日紹介した理系白書blogの元村有希子記者、どんな記事を書いているのか気になってちょっと調べてみたところ、例の「ゲーム脳」騒動の発端の記事を書いていたことが分かりました。
知らない人もいるかもしれないので、一応解説しておくと、2002年7月、日本大学の森昭雄教授が「テレビゲームをすると、人間らしい感情や創造性をつかさどる大脳の前頭前野の活動が目立って低下する」という内容の「研究結果」を発表、その後、ほぼ同じ内容の新書本をNHK出版から「ゲーム脳の恐怖」と題して発刊しました。これを毎日新聞が大々的に報道し、他のマスコミや、普段からテレビゲームを快く思っていなかったPTA等の各種団体も巻き込んで、少年犯罪の増加等はテレビゲームが原因だとする、テレビゲーム糾弾の大合唱が起こったわけです。
ところが、これに対しネットを中心に反論が展開され、実はこの「ゲーム脳」理論、間違いだらけで科学的にナンセンスな内容であることが判明。精神科医の斉藤環氏からも出鱈目である旨の書評が寄せられ、挙句の果てには「ト学会」から「トンデモ本」認定されることに。風説の流布により業務を妨害された形のテレビゲーム業界は、法的責任追及の構えを見せます。
これに慌てたのが火付け役の毎日新聞。「国は科学的検証すべきだ--ITには負の側面も」と題する論説を掲載し、国費で「ゲーム脳」について「本格的検証」を行うべきだと主張します。以下、引用とツッコミです。
「ゲーム脳」が波紋を広げている。私は7月にこの仮説を記事で紹介した。あれから4カ月たつが、予想外の展開にやや困惑している。「やっぱりゲームは悪い」対「ゲームいじめだ」という、感情論の対立で語られることが多いからだ。ゲームが脳に与える影響について、社会の関心は高いのに、科学的な検証が足りないことを痛感する。国による本格的な研究を提案したい。
「波紋を広げている」「社会の関心は高いのに」など、まるで他人事のような書き方ですが、散々センセーショナルに「ゲーム脳」を煽ったのは他ならぬ毎日新聞です。「科学的な検証が足りない」といっていますが、この記事が書かれた2002年11月28日時点で、「ゲーム脳の恐怖」が間違いだらけであることは既に斉藤環氏らによって反駁の余地なく論証されています。国民の税金をトンデモ理論の検証になど使ってよいのでしょうか。
「前頭前野の機能低下は「キレる子」との関連も指摘される。この知見と結びつき、ゲーム脳は社会問題になった感じがする。私も多数の投書を受け取った。大半は親の世代や高齢者からで、「ゲーム漬けの子どもが心配」「だから子どもは外で遊ぶべきだ」というものだった。
反論もあった。「悪いのはゲームではなく、子どもを管理できない親」という意見や、森さんの手法を「ゲームイコール悪、という前提に立ったゲームいじめだ」という批判だ。全くゲームをしない私は、感情論の応酬に戸惑った。
論点がすり替えられています。ネットを中心に非難の声が上がったのは、責任ある報道機関が、「ゲーム脳」などというトンデモ理論を、よく調べもせずに、センセーショナルに報道したからです。森教授の「研究発表」が議論を呼ぶ内容であることは、記事にする段階で元村記者も分かっていたはずです。そうであるならば、せめて同分野の専門家にコメントを求めるぐらいのことはするべきでした。そうすれば、森教授の理論がトンデモであることはすぐに分かったはずです。
「ゲームはお菓子みたいなものだ。おいしいし、気分転換できる。しかし食べ過ぎれば虫歯になる。歯を磨けば済むのか、それとも栄養が偏って病気になるのか。分量を決めて食べるか、お菓子を甘くなくしてしまうのか。いずれにしても、判断の基準が欲しい。
これは滅茶苦茶です。お菓子を食べ過ぎれば虫歯になることや、栄養が偏って病気になることは、確立された科学的知見です。これに対し、ゲームをすれば大脳の前頭前野の活動が低下するというというのはユダヤ陰謀論と同レベルのトンデモです。両者を同列に扱うのは馬鹿げています。小学生だってこんな論理のすり替えには騙されないでしょう。
「ゲーム脳」は、ゲームというお菓子に対して誰もが漠然と抱く不安を突いた。しかし「不安」のままではまずい。仮説が追試され、反論され、鍛えられることが必要だ。IT化を進め、白書で持ち上げる国にこそ、マイナスの影響を科学的に検証する義務があると、私は思う。
読んでいてだんだん悲しくなってきます。ちょっと考えれば分かることですが、森教授の理論は学会誌にアクセプトされたわけでも何でもありません。自分で勝手に発表して本を出しただけなのです。もし国が今回のようなケースについてまで「影響を科学的に検証する義務」があるのだとすれば、国は歯に重力発電装置としての可能性があるかどうかや、古代クレタ文明と忍者の関係についてまで科学的に検証しなければならなくなります。これではいくら税金があっても足りません。
要するに、元村記者は森教授の「研究発表」を十分な裏付け取材もせずにセンセーショナルに報道し、ひとたび森教授の理論がトンデモであることが明らかになり、自分たちにも責任が及びそうになると、今度は国に責任を擦りつけようとしたわけです。
まさに「ゲーム脳」騒動は、日本のマスコミの救いがたい無責任体質を象徴する事件だったと言ってよいでしょう。
さて、そんな元村有希子記者が書く理系白書blog、果たしてどうなることやら。。。
知らない人もいるかもしれないので、一応解説しておくと、2002年7月、日本大学の森昭雄教授が「テレビゲームをすると、人間らしい感情や創造性をつかさどる大脳の前頭前野の活動が目立って低下する」という内容の「研究結果」を発表、その後、ほぼ同じ内容の新書本をNHK出版から「ゲーム脳の恐怖」と題して発刊しました。これを毎日新聞が大々的に報道し、他のマスコミや、普段からテレビゲームを快く思っていなかったPTA等の各種団体も巻き込んで、少年犯罪の増加等はテレビゲームが原因だとする、テレビゲーム糾弾の大合唱が起こったわけです。
ところが、これに対しネットを中心に反論が展開され、実はこの「ゲーム脳」理論、間違いだらけで科学的にナンセンスな内容であることが判明。精神科医の斉藤環氏からも出鱈目である旨の書評が寄せられ、挙句の果てには「ト学会」から「トンデモ本」認定されることに。風説の流布により業務を妨害された形のテレビゲーム業界は、法的責任追及の構えを見せます。
これに慌てたのが火付け役の毎日新聞。「国は科学的検証すべきだ--ITには負の側面も」と題する論説を掲載し、国費で「ゲーム脳」について「本格的検証」を行うべきだと主張します。以下、引用とツッコミです。
「ゲーム脳」が波紋を広げている。私は7月にこの仮説を記事で紹介した。あれから4カ月たつが、予想外の展開にやや困惑している。「やっぱりゲームは悪い」対「ゲームいじめだ」という、感情論の対立で語られることが多いからだ。ゲームが脳に与える影響について、社会の関心は高いのに、科学的な検証が足りないことを痛感する。国による本格的な研究を提案したい。
「波紋を広げている」「社会の関心は高いのに」など、まるで他人事のような書き方ですが、散々センセーショナルに「ゲーム脳」を煽ったのは他ならぬ毎日新聞です。「科学的な検証が足りない」といっていますが、この記事が書かれた2002年11月28日時点で、「ゲーム脳の恐怖」が間違いだらけであることは既に斉藤環氏らによって反駁の余地なく論証されています。国民の税金をトンデモ理論の検証になど使ってよいのでしょうか。
「前頭前野の機能低下は「キレる子」との関連も指摘される。この知見と結びつき、ゲーム脳は社会問題になった感じがする。私も多数の投書を受け取った。大半は親の世代や高齢者からで、「ゲーム漬けの子どもが心配」「だから子どもは外で遊ぶべきだ」というものだった。
反論もあった。「悪いのはゲームではなく、子どもを管理できない親」という意見や、森さんの手法を「ゲームイコール悪、という前提に立ったゲームいじめだ」という批判だ。全くゲームをしない私は、感情論の応酬に戸惑った。
論点がすり替えられています。ネットを中心に非難の声が上がったのは、責任ある報道機関が、「ゲーム脳」などというトンデモ理論を、よく調べもせずに、センセーショナルに報道したからです。森教授の「研究発表」が議論を呼ぶ内容であることは、記事にする段階で元村記者も分かっていたはずです。そうであるならば、せめて同分野の専門家にコメントを求めるぐらいのことはするべきでした。そうすれば、森教授の理論がトンデモであることはすぐに分かったはずです。
「ゲームはお菓子みたいなものだ。おいしいし、気分転換できる。しかし食べ過ぎれば虫歯になる。歯を磨けば済むのか、それとも栄養が偏って病気になるのか。分量を決めて食べるか、お菓子を甘くなくしてしまうのか。いずれにしても、判断の基準が欲しい。
これは滅茶苦茶です。お菓子を食べ過ぎれば虫歯になることや、栄養が偏って病気になることは、確立された科学的知見です。これに対し、ゲームをすれば大脳の前頭前野の活動が低下するというというのはユダヤ陰謀論と同レベルのトンデモです。両者を同列に扱うのは馬鹿げています。小学生だってこんな論理のすり替えには騙されないでしょう。
「ゲーム脳」は、ゲームというお菓子に対して誰もが漠然と抱く不安を突いた。しかし「不安」のままではまずい。仮説が追試され、反論され、鍛えられることが必要だ。IT化を進め、白書で持ち上げる国にこそ、マイナスの影響を科学的に検証する義務があると、私は思う。
読んでいてだんだん悲しくなってきます。ちょっと考えれば分かることですが、森教授の理論は学会誌にアクセプトされたわけでも何でもありません。自分で勝手に発表して本を出しただけなのです。もし国が今回のようなケースについてまで「影響を科学的に検証する義務」があるのだとすれば、国は歯に重力発電装置としての可能性があるかどうかや、古代クレタ文明と忍者の関係についてまで科学的に検証しなければならなくなります。これではいくら税金があっても足りません。
要するに、元村記者は森教授の「研究発表」を十分な裏付け取材もせずにセンセーショナルに報道し、ひとたび森教授の理論がトンデモであることが明らかになり、自分たちにも責任が及びそうになると、今度は国に責任を擦りつけようとしたわけです。
まさに「ゲーム脳」騒動は、日本のマスコミの救いがたい無責任体質を象徴する事件だったと言ってよいでしょう。
さて、そんな元村有希子記者が書く理系白書blog、果たしてどうなることやら。。。
「果たしてどうなることやら」って、ブーメランを投げてみたわけですか?
ま、どんなに長文を書いて分析批評してみたところで貴方の方には社会的インパクト等は無いわけですから、良いのかも知れませんが。
嫌味な事を書いてしまいましたが、もしかすると、あなたはいたってマジメにこのブログを続けようとしていたのかもしれませんね。
もしかすると、それが何かの急激な異変で続けられなくなった可能性もあるわけで…
そういう事も汲まずに一方的に書き込んだ点は謝りたいです。ごめんなさい。
お元気で居られる事を、望みます。
ところで、数年前のコメントにおかしなことが書き込まれていますねw
>ま、どんなに長文を書いて分析批評してみたところで貴方の方には社会的インパクト等は無いわけですから、良いのかも知れませんが。
誤っていても支持し続けるって事なんでしょうか?w
声がでかいほうが言論の正しさを担保するってことは無いのに・・・
社会的インパクトさえあれば、元村記者ですら疑問を投げかけていた「水の伝言」も受け入れざるを得なくなるw