59歳「じージ」の癌治療日記

2005年11月、胃がんと診断された3人の孫を持つ59歳男性の治療記録

入院中 9.15

2006-09-21 18:09:37 | Weblog

9月15日(金曜日) 晴れ
今日は久しぶりの秋晴れだ、今日から10回目の抗がん剤投与が始まる。
天気が良いと気分も良くなる。
このところ身体の調子も良いので、このままの調子で治療が進むと良いなと思う。
次の検査で癌が縮小傾向にあることが確認されれば言うことはない。

今、病院で娘が送ってくれた本を読んでいる。
ランス・アームストロングという自転車競技選手のがん体験記だ。
彼は自転車競技では世界的に有名な“ツールドフランス”で優勝し、睾丸癌になったが癌を克服し再度優勝したアメリカの選手だ。ちょうど私がアメリカ滞在中も何度かTVで取り上げられていた。
彼が癌にかかってから化学療法でがんを退治し再度競技に出るまで1年半かかった。
スポーツ選手だから人並みはずれた頑強な肉体と精神力をもっていたが、彼をしても1年間は自転車に乗ろうとも思わなかったそうだ。  
抗がん剤による副作用の辛さや、進行度合いや転移への心配、再発の心配などは読んでいて痛いほど気持ちがわかる。
実際に癌を克服して社会復帰した人の体験記はとても勇気付けられる。
少しぐらいの副作用でへばっていたのではとても癌は逃げていかないと実感する。
とにかく全てを受け入れ、自分や先生を信じて、“頑張らないけど諦めない、”精神で続けよう。


9月16日(土曜日)
今日は良い天気だ。
昨日、1日かけて抗がん剤を投与したが、抗がん剤はさすがだ。
夕食時にはすでに食欲がなくなってきた。朝は調子が良かったのに、夕食は半分も食べられなかった。吐き気が心配で夜を迎えたが、幸いなことに今回は吐くまでには行かなかった、やはりオキシコンチン(痛み止め)の方の副作用が吐き気は強いようだ。
副作用と同じくらいに癌にも薬が効いてくれることを願う。

幸い、今日の朝ごはんは八割くらい食べられた。
今日は体調がよければ午後にでもシャワーを浴びよう。


9月17日(日曜日)
16日(土)は妻が御神酒をもらい千葉県の野田まで行ってくれた。
信者の人たちの話を聞いて随分ためになったと言っていた。
我が家と同じようにご主人が癌で1年半通っている人とも話したそうだ。
自分のためにお願いするのではなく他人、周りの人たちの幸せと平和を願うことが大事だと言われたそうだ。

今日(日)は次男の嫁さんのお母さんの班の人達と横浜支部に行ってくれた。
行くとやはり同じように癌や大病のご主人や家族を抱えた人たちと話が出来る。
色々と体験記を聞いているうちに、だんだんと希望を持てるようになるみたいだ。

その班の人達が皆で私の回復を願ってお祈りをしてくれるそうだ。
本当にありがたいことだと思う。



「食と命」

今回の入院はひどい吐き気に苦しめられた。一時は入院当初から5kgも体重が落ちた。
やせることよりも、毎回の食事時に、食事の匂いで吐き気が来ることの苦しみと、美味しく食べられない悔しさがもっと辛かった。
世の中には痩せたいと思っている人が沢山いると思うが、人間が生きていくうえで食欲ほど大事なものは無いというのが今回入院して一番感じたことだ。
美味しいものを美味しく食べられる幸せを、決して捨ててはいけない。
私は今でもみぞおちに不快感が少し残っており、本当に美味しいと感じて食事を取ることが出来ないが、それでも一時の吐き気がひどかった時から比べれば、食事が出来ることがこんなに身体と心を充実させて、立ちなおさせる力があるものだったかと、思い知らされる。食事が取れるようになると、当然のことながら体力もついてくるし、それにつれて気力も出てくる。こんなに違うものかと自分でもびっくりするほどだ。
私は小さいときから、食に関しての貪欲さにかけていた。皆でバーベキューなどしても、肉がきちんと焼けるまでは箸を出すことは無かった。周りの友達が半生の状態でどんどん肉をつついていて、無くなりかけても・・・・
今から思うと、食に関する貪欲さは、人間が生きていくことの力に通じるものが有る気がする。食欲に貪欲であることが生きることへの執念にも通じるものが有るような気がする。私ももう少し食に関して貪欲であればもっと体力もついただろうし、こんな病気にもならなかったかも知れないと思う。
人間が生きていくうえで食事が大事なことはもちろんだが、人生の楽しみの一つとしても、美味しいものを美味しいと感じて食べられることの幸せをもう一度取り戻したい。
頭の中では美味しそうな食べ物がめぐってくるが、いざ目の前にすると食べられない辛さ、
味わってみないと分からない辛さだと思う。


9月19日(火曜日)
昨日、娘婿のご両親が横浜からお見舞いに来てくださった。
お父さんは結構、健康そうに見えるが、話を聞くと心筋梗塞や、腎臓疾患など一つ間違えば一命を落としかねない病気を今まで経験されているそうで、人は見かけによらないものだとつくづく思う。
自分の経験から、「病気になってもかならず良くなりますよ。私が今までそうだったから」
と元気付けてもらった。
しばらくお互いの孫の話をして、帰って行かれた。

27日には娘が孫を連れて帰ってくる予定だ。
楽しみが一つ増えた。

今日は午前中にシャワーを浴びた。
裸で椅子に坐って見る自分の太ももの細さに愕然とする。
私は健康な時にはテニスやスキーなどスポーツが好きで身体を動かしていた。
特別、身体を鍛える気は無くとも、毎週運動していると、自然と筋力はつくもので、太ももなどは身体全体から見ると意外とがっしりしていた。
それが、いまは当時の3分の2くらいの太さしかない。
筋肉いや筋と筋の間に窪みが見える。
自分の足とは思いたくない。
人間の身体はあっという間に衰えるものだ。

最近は汗もかかなくなった、新陳代謝が衰えているせいだろう。
暑い時に汗びっしょりになり、冷たく冷えたビールをキュート飲み干すあの快感をもう一度味わいたい。

退院の日が決まった。
9月20日(水曜日)だ。


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