2008年CMAアワードでは、2年連続2回目の男性ボーカル賞と、ビデオ賞を獲得したブラッド。おめでとう!
ブランコに乗ってペイズリー柄のテレキャスターが「遊んで」いる(リーフレット内の写真では、滑り台を滑っている!)、他愛もないと言えば他愛ない洒落ですが、なかなか気の効いたお茶目なジャケットで登場の、ブラッド・ペイズリーのギター・インスト・アルバム。彼の西海岸~ベイカーズフィールド・サウンドを基調とした、ソリッドでキレとコクの同居した個性的なギターがお腹いっぱいに聴けるイベント・アルバムです。歌入りは15曲(+ボーナスの"Waitin' On A Woman"ビデオのサウンドトラック)中、たった4曲なので、通して聴くのはもしかしたらキツイかな?なんて思ってましたが、その杞憂もすぐに吹っ飛びましたね。一曲一曲のスタイルが見事にバラエティに富んでいて、どの曲も心に残るイカしたリックを持っているので、一気に楽しめてしまいます。コレまでの彼の音楽から自然に期待されるカントリー・スタイルはもちろん、チョッと趣の違うロックなナンバーも聴かれ、コレまであまり表に出なかった彼のルーツ、ベースの幅広さが確認出来たりして、実に貴重な、そして21世紀のアメリカ音楽シーンで、なぜブラッドの音楽がマジョリティの心を掴めているのかが、なんとなく伝わってくるような気がする、そんなアルバムです。
オープニングは、強烈な早弾きカントリー・ギターが炸裂のスピード・チューン"Huckleberry Jam"でスタート。文字どうりブラッドらしい、ベスト・トラックの一つと言えるナンバーです。そして、同じくカントリー・ギターが堪能できるもう1曲のコア・ナンバーが、噂の"Cluster Pluck"。そうです、James Burton、Vince Gill、John Jorgensen(Desert Rose Band)、Albert Lee、Brent Mason、Redd Volkaert(マール・ハガードのギタリスト) そしてSteve Warinerらと豪華カントリー・ジャムを繰り広げたナンバーです。リーフレットにはおのおのとブラッドの2ショットが。Albert Leeって、すっかり白髪のおじ様になってるのね。イントロとして、"Pre-Cluster Cluster Pluck Prequel (Prelude)"と題したシークエンスで、おなじみのLittle Jimmy Dickens御大が”ブラッドのお爺さん”として登場。そうそうたるギタリストを一人ひとり紹介して、おのおの個性的なフレーズを爪弾いていく心憎い演出の後、ハッピーこの上ないカントリー・ギター・バトルが展開します。ここはギタリストの方々に各々のスタイルの違いを解説して欲しいモノです。どこかのギター雑誌で取り上げてくれないかなぁ・・・ブレイクのところのバックで聴かれる、ブラッドによると思われるコード・リフが、ジワッとカッコイイ。コレだけのメンツをまとめた彼の成長を感じました。
これら2曲を軸として、サーフィン~ベンチャーズ調ながらカントリー・ギターのキレとブラッドならではのコクが加わった"Turf's Up"、レス・ポールへのオマージュのジャジーな"Les Is More"あたりでは、なるほどお約束的なレトロ志向の部分を見せたりしながら、"Cliffs of Rock City"では、ガラッと印象が変わり、80年代ポップ・ロック風に。奥さんの名を冠した"Kim"や"Departure"あたりのスムースさも同じイメージです。貴重なカントリーのトラディショナリストとして、リビング・レジェント達(先のLittle Jimmy Dickensら)にも大切にされているブラッドだけど、80年代に多感なティーンエイジャー期を過ごした人なのだから、ホントの根っこの芯にはこういうスタイルがあるのだろうと思います。アメリカ本国のレビューではここらの作品に、元再結成ディープ・パープルのギタリスト Joe Satriani(悪名高い、気まぐれな天才リッチー・ブラックモアの代わりに入った人)の影響を見る向きもあります。なるほど!1980年に大ヒットしたディープ・パープルのベスト盤「Deepest Purple」で高まったパープルへの再結成へのニーズ。当時少年ブラッドもパープルを聴いてたに違いない・・・
左に写っているのがLittle Jimmy Dickens御大
一方、数少ない歌入りチューン4曲は、全て豪華なゲストが参加で質的にも極上。シングル・ヒットはこれらでまかなおうって作戦?最大の話題は、カントリー・フィールドのもう一人のギター・ヒーロー、キース・アーバン(Keith Urban)とのデュエットであるリード・シングル"Start a Band"。先日のCMAアワードでも二人によってプレイされたようで、アワード・ショーの演出まで計算しての収録?ミディアムのキャッチーなナンバーで、ブラッドのクリアーな声とキースのシャガレ声の対比はもちろん、二人のギター・スタイルの違いが堪能できます。このアルバムらしくギター・ソロがたっぷりフィーチャーされてて、5分を超える熱演。リーフレットの写真は以前のもののようで、二人とも(特にキース)チョッと若い。ロック・ファンへの話題性としては、モダン・ブルースの巨人B.B.キングとのデュエット"Let the Good Times Roll"。ブルース・クラシックをブラッドならではのブギウギ・ギター・サウンドで難なくモノにして、チョッと老体に鞭打って頑張るキング御大(まだまだお元気そうでス)をサポートしています。長年ニュー・カントリーを聴いてこらえた方には、スティーブ・ウォリナー(Steve Wariner)との共作曲"More Than Just This Song"が嬉しいのでは?スティーブ様、だいぶお顔が丸くなられたみたいですが、和み系のジェントルなミディアム・チューンで、マイルドな変わらない良い声を聴かせてくれて、楽しめます。ここでのギターは、カントリー・ギター・レジェンドで、60年代は世界で最も影響力のあった(ジョージ・ハリソンは影響受けすぎ)と言われる、チェット・アトキンス調です。そしてもう1曲は、トラディショナリストとしての面目躍如、ベイカーズフィールド・サウンドの立役者バック・オゥエンズ(Buck Owens)の生前の未完成作品に、ブラッドがボーカルを付けて完成させた"Come On In"。彼の伝統を大切にする強い姿勢がこの作品を完成させたのでしょう。イントロでは、バック・オゥエンズの片腕だったドン・リッチの名フレーズが思い入れタップリに奏でられ、ベイカーズフィールド・サウンドへの愛情が感じられ感動させてくれます。
(ボーナスを除く)ラストは、アコースティック・ギターによる、ゴスペル"What a Friend We Have In Jesus"。コレ聴くと、The Nitty Gritty Dirt Bandの「Will the Circle Be Unbroken, Vol. 2」のラスト、Randy Scruggsのギターによる"Amazing Grace"を思い出しませんか?物静かなトーンでしっとりと締めくくられるイメージがダブりました。
Bradのギター
このアルバムに触れて、あらためてカントリー・ミュージックはギターを基本にその魅力が構築されている音楽なのだと再認識しました。そういえば自分もいろんな音楽を聴いてきましたが、常に優れたギタリストを追ってきたような・・・今や、ビビッドなギター・サウンドが聴けるのは、やっぱりカントリー・ミュージックが一番なんじゃないか、と思います。なお、本国では、CD+ステッカー付きの「Begginer」、さらに1年間のファンクラブ会員権付きの「Intermediate」、そしてさらにTシャツも付いた「Advanced」の3種が用意されています。最近、こういうオマケ付きで売るのが多いですね。
ブラッドはカントリー・ゴールドで2度も来日、出演しています。1回目は2000年で私も見ました。まだ新人でヘッドライナーだったのです。その帰り際、「チャーリー(永谷さん)、15回目のメモリアル・イヤーには是非僕を呼んで欲しい」を言い残して帰ったそうです。もちろん、社交辞令だろうと思って誰も真に受けませんでした。しかし、その2003年の準備をしている頃、ブラッドから電話がかかってきたと言うのです。「僕は行くよ。呼んでくれるよね!」こうして不動のスーパー・スターとなったブラッドの2回目の来日となったというのです。1日のためにわざわざアメリカから来るのだから、儲かるわけがありません。純粋に日本そしてカントリー・ゴールドへの愛情からです。
●BradのMySpaceサイトはコチラ●
ブランコに乗ってペイズリー柄のテレキャスターが「遊んで」いる(リーフレット内の写真では、滑り台を滑っている!)、他愛もないと言えば他愛ない洒落ですが、なかなか気の効いたお茶目なジャケットで登場の、ブラッド・ペイズリーのギター・インスト・アルバム。彼の西海岸~ベイカーズフィールド・サウンドを基調とした、ソリッドでキレとコクの同居した個性的なギターがお腹いっぱいに聴けるイベント・アルバムです。歌入りは15曲(+ボーナスの"Waitin' On A Woman"ビデオのサウンドトラック)中、たった4曲なので、通して聴くのはもしかしたらキツイかな?なんて思ってましたが、その杞憂もすぐに吹っ飛びましたね。一曲一曲のスタイルが見事にバラエティに富んでいて、どの曲も心に残るイカしたリックを持っているので、一気に楽しめてしまいます。コレまでの彼の音楽から自然に期待されるカントリー・スタイルはもちろん、チョッと趣の違うロックなナンバーも聴かれ、コレまであまり表に出なかった彼のルーツ、ベースの幅広さが確認出来たりして、実に貴重な、そして21世紀のアメリカ音楽シーンで、なぜブラッドの音楽がマジョリティの心を掴めているのかが、なんとなく伝わってくるような気がする、そんなアルバムです。
オープニングは、強烈な早弾きカントリー・ギターが炸裂のスピード・チューン"Huckleberry Jam"でスタート。文字どうりブラッドらしい、ベスト・トラックの一つと言えるナンバーです。そして、同じくカントリー・ギターが堪能できるもう1曲のコア・ナンバーが、噂の"Cluster Pluck"。そうです、James Burton、Vince Gill、John Jorgensen(Desert Rose Band)、Albert Lee、Brent Mason、Redd Volkaert(マール・ハガードのギタリスト) そしてSteve Warinerらと豪華カントリー・ジャムを繰り広げたナンバーです。リーフレットにはおのおのとブラッドの2ショットが。Albert Leeって、すっかり白髪のおじ様になってるのね。イントロとして、"Pre-Cluster Cluster Pluck Prequel (Prelude)"と題したシークエンスで、おなじみのLittle Jimmy Dickens御大が”ブラッドのお爺さん”として登場。そうそうたるギタリストを一人ひとり紹介して、おのおの個性的なフレーズを爪弾いていく心憎い演出の後、ハッピーこの上ないカントリー・ギター・バトルが展開します。ここはギタリストの方々に各々のスタイルの違いを解説して欲しいモノです。どこかのギター雑誌で取り上げてくれないかなぁ・・・ブレイクのところのバックで聴かれる、ブラッドによると思われるコード・リフが、ジワッとカッコイイ。コレだけのメンツをまとめた彼の成長を感じました。
これら2曲を軸として、サーフィン~ベンチャーズ調ながらカントリー・ギターのキレとブラッドならではのコクが加わった"Turf's Up"、レス・ポールへのオマージュのジャジーな"Les Is More"あたりでは、なるほどお約束的なレトロ志向の部分を見せたりしながら、"Cliffs of Rock City"では、ガラッと印象が変わり、80年代ポップ・ロック風に。奥さんの名を冠した"Kim"や"Departure"あたりのスムースさも同じイメージです。貴重なカントリーのトラディショナリストとして、リビング・レジェント達(先のLittle Jimmy Dickensら)にも大切にされているブラッドだけど、80年代に多感なティーンエイジャー期を過ごした人なのだから、ホントの根っこの芯にはこういうスタイルがあるのだろうと思います。アメリカ本国のレビューではここらの作品に、元再結成ディープ・パープルのギタリスト Joe Satriani(悪名高い、気まぐれな天才リッチー・ブラックモアの代わりに入った人)の影響を見る向きもあります。なるほど!1980年に大ヒットしたディープ・パープルのベスト盤「Deepest Purple」で高まったパープルへの再結成へのニーズ。当時少年ブラッドもパープルを聴いてたに違いない・・・
左に写っているのがLittle Jimmy Dickens御大
一方、数少ない歌入りチューン4曲は、全て豪華なゲストが参加で質的にも極上。シングル・ヒットはこれらでまかなおうって作戦?最大の話題は、カントリー・フィールドのもう一人のギター・ヒーロー、キース・アーバン(Keith Urban)とのデュエットであるリード・シングル"Start a Band"。先日のCMAアワードでも二人によってプレイされたようで、アワード・ショーの演出まで計算しての収録?ミディアムのキャッチーなナンバーで、ブラッドのクリアーな声とキースのシャガレ声の対比はもちろん、二人のギター・スタイルの違いが堪能できます。このアルバムらしくギター・ソロがたっぷりフィーチャーされてて、5分を超える熱演。リーフレットの写真は以前のもののようで、二人とも(特にキース)チョッと若い。ロック・ファンへの話題性としては、モダン・ブルースの巨人B.B.キングとのデュエット"Let the Good Times Roll"。ブルース・クラシックをブラッドならではのブギウギ・ギター・サウンドで難なくモノにして、チョッと老体に鞭打って頑張るキング御大(まだまだお元気そうでス)をサポートしています。長年ニュー・カントリーを聴いてこらえた方には、スティーブ・ウォリナー(Steve Wariner)との共作曲"More Than Just This Song"が嬉しいのでは?スティーブ様、だいぶお顔が丸くなられたみたいですが、和み系のジェントルなミディアム・チューンで、マイルドな変わらない良い声を聴かせてくれて、楽しめます。ここでのギターは、カントリー・ギター・レジェンドで、60年代は世界で最も影響力のあった(ジョージ・ハリソンは影響受けすぎ)と言われる、チェット・アトキンス調です。そしてもう1曲は、トラディショナリストとしての面目躍如、ベイカーズフィールド・サウンドの立役者バック・オゥエンズ(Buck Owens)の生前の未完成作品に、ブラッドがボーカルを付けて完成させた"Come On In"。彼の伝統を大切にする強い姿勢がこの作品を完成させたのでしょう。イントロでは、バック・オゥエンズの片腕だったドン・リッチの名フレーズが思い入れタップリに奏でられ、ベイカーズフィールド・サウンドへの愛情が感じられ感動させてくれます。
(ボーナスを除く)ラストは、アコースティック・ギターによる、ゴスペル"What a Friend We Have In Jesus"。コレ聴くと、The Nitty Gritty Dirt Bandの「Will the Circle Be Unbroken, Vol. 2」のラスト、Randy Scruggsのギターによる"Amazing Grace"を思い出しませんか?物静かなトーンでしっとりと締めくくられるイメージがダブりました。
Bradのギター
このアルバムに触れて、あらためてカントリー・ミュージックはギターを基本にその魅力が構築されている音楽なのだと再認識しました。そういえば自分もいろんな音楽を聴いてきましたが、常に優れたギタリストを追ってきたような・・・今や、ビビッドなギター・サウンドが聴けるのは、やっぱりカントリー・ミュージックが一番なんじゃないか、と思います。なお、本国では、CD+ステッカー付きの「Begginer」、さらに1年間のファンクラブ会員権付きの「Intermediate」、そしてさらにTシャツも付いた「Advanced」の3種が用意されています。最近、こういうオマケ付きで売るのが多いですね。
ブラッドはカントリー・ゴールドで2度も来日、出演しています。1回目は2000年で私も見ました。まだ新人でヘッドライナーだったのです。その帰り際、「チャーリー(永谷さん)、15回目のメモリアル・イヤーには是非僕を呼んで欲しい」を言い残して帰ったそうです。もちろん、社交辞令だろうと思って誰も真に受けませんでした。しかし、その2003年の準備をしている頃、ブラッドから電話がかかってきたと言うのです。「僕は行くよ。呼んでくれるよね!」こうして不動のスーパー・スターとなったブラッドの2回目の来日となったというのです。1日のためにわざわざアメリカから来るのだから、儲かるわけがありません。純粋に日本そしてカントリー・ゴールドへの愛情からです。
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このアルバムどれを聴いても正にギター小僧の面目躍如ですよね。大御所はともかく Tommy Emmanuel や Mark Knopfler なんかのフレーズさえ聞こえてしまいます。この人歌詞はリフレインが少なくって(そのくせ韻踏むの好き)日本人が覚えるのは至難の業ですが、曲はすごく馴染みやすいんで、ひょっとしたら日本人に一番合う人かも、、、、
Mark Knopflerはなるほどですね。この人も80年代にメガヒットを飛ばしていますし。Bradのサウンドには、もちろんカントリー・ギターの王道を継承しているのですが、どこかメタリックで、ブリティッシュ?という雰囲気がチラホラ。時々聴かれるラジカルなフレーズは、リッチー・ブラックモア的。キース・アーバンの方がオーガニックでアメリカンなのと、やはり対照的に感じます。チョッと大胆なたとえかもしれません。
早速10数枚のCDを衝動買いして、アメリカ発送なので、それが順次届き始めています。最初に届いたのがこの「Play」。最高だなぁ。1時間以上ある車での通勤で鳴らしまくっています。長ったらしくてすいません。素敵な時間をありがとう。カントリー、やっぱりいいです。46歳。
質的にはともかく、カントリー・ミュージックが知られる為には、なかなか得にくいカントリーについてのまとまったテキスト・情報が、いつでもアクセスできる形で存在するべき・・・という思いでやっております。私の時間の許す範囲でですが。
色々と書いておりますが、教えるなんておこがましい事ではなくて、「それは違うんじゃねぇ~」って思われる事も含めて、読んでいただいている方と対話させてもらっているのだろうと思います。そういう中で、読み手の方々の心の中でも、カントリーに対する思いがさらに固まってくるのではないかなと。音楽ジャーナリズムの意義ってのはそういうところのあるのではないかと。
ブラッドのギター・アルバム、カーステで聴くと最高ですよね!今後とも宜しくお願いいたします。
それから、・・・上の、先に記した文章中、バンジョーの名手は、・・・ベラ・フレックでしたね。(^^ゞアフレックは映画俳優です。僕は毎回間違えます。
ベラ氏は天才として敬愛する人物なのに。罰が当たります。