ありえない朝 7
触れる唇、指先、名前を囁く吐息さえもが愛おしく感じる。
「好き。ずっと好きだったの」
智大が優しい眼差しで受け止めてくれる。
お互いの気持ちを確かめるように、
2人の唇は少しずつ深く重なっていく。
甘くて溶けてしまいそうな口づけ。
智大のキスは私をワガママにしていく。
もっと、智大を感じたい。
もっと、もっと。
「智大」
「はいタイムアップー」
重なった2人の声のトーンは、かなり違った。
「え…?」
「オレもう店に行く準備しないとなんない」
壁に掛けてある時計を顎でクイっと指した。
間もなく9時になるところ。
今日は土曜日。
私は休みでも智大のお店はお休みではない。
行き場を無くした私のワガママには触れずに、私の頭をクシャっとすると、
シャワーを浴びに行ってしまった。
その智大を見送りながら、乱れた髪の毛を直す。
さっきまでの甘いキスの時間に酔っていたのは私だけだったの?
放心状態でシャワーの音を聞いてると、
段々と恥ずかしさが込み上げてくる。
「はぁぁ…パンツ穿こう…」
よろよろと立ち上がってパンツを探す。
「あれ?また無いの?」
辺りを見渡しても、毛布を持ち上げてもパンツは出てこない。
「もう!パンツ穿きたいだけなのに何なのよ~」
「あー、オレ持ってってた」
バスタオルで頭を拭きながら、
智大がパンツを投げて寄越した。
「何で持ってくのよ⁉︎」
「つい癖で。ンハハハ」
楽しそうに笑う智大のお腹にパンチをしてやろうと思ったのに、
フワリと抱き寄せられて未遂に終わる。
ホカホカの智大の身体から、ボディーソープの香りがした。
「みのりも入ったら?」
「んー、でも着替えも何も準備無いしなぁ」
「そのままだよ、全部」
そう言うと、智大はスルリと身体を離してクローゼットを開けた。
クローゼットの中も2年前のまま。
左側の私用の白いケースも同じ所にあった。
泊まりに来る機会が増えた頃に、
智大が用意してくれたスペース。
蓋を開けると、部屋着も下着や化粧品も、そのまんまだった。
「化粧品はちょっと怖いから取り替えなきゃなぁ」
「いっそのこと、全部持ってきちゃう、とか?」
「全部?何の全部?」
「全部っつったら全部じゃん」
出掛ける準備のためにウロウロしている智大をとらえようと振り返ったとき、
私の箱の中に見慣れないモノが見えた気がした。
もう一度、目を元の位置に戻して確認をする。
「コレ…は?」
「あー…石けん?ふふ」
智大が私から取り上げた白い箱。
少し角が潰れている。
サイズは確かに石けんだけど、
もっと軽くて、シルバーのリボンがかけられていた。
「コレも取り替えた方が良いよ」
「見せて?だって私の箱に入ってたよ?」
智大はバツが悪そうに箱をカタカタさせた。
「んー…、まあ、見たくなるよねぇ、そりゃ…」
視線を上にしたり下にしたり、モゴモゴと話す智大の手から箱を受け取る。
大事にそっとリボンを解いて箱を開けると、
ネックレスが入っていた。
ハートから雫が溢れるようにダイヤが揺れている。
「智大がハートを選んでくれたの?」
「超恥ずかしかった。ふふ」
後ろからフワリと抱き寄せられ、頬と頬をくっ付けた。
「ホントはさ、指輪を買おうと思ったの。
でもサイズちゃんと分かんないし、みのりの指に入んなかったらカッコ悪いしなぁって思ってさ、コレを選んだの」
私の手からネックレスを取ると、ゆらゆらと目の前で揺らして小さく笑い出した。
「そしたら居なくなっちゃったからさ。
1回床に投げ付けちゃったんだよね、コレ」
「ゴメン…」
ハムっと耳を甘噛みされて、顎に手が添えられ、
フワッと優しさでいっぱいになるようなキスをされた。
「床に投げちゃったんだけどさ。
なんかねぇ、みのりもだけど、その内にコレも可愛く見えてきちゃったんだよね。ふふ。
だから何か捨てらんなくて、みのりの所に入れてたんだけど。
賞味期限もう切れてるよ。ンフフフ」
私は智大の腕の中で身体の向きを変え、
思いっきり抱き付いた。
智大も答えてくれるように、ピッタリと抱き締めてくれる。
「付けて?」
「コレ?違うの一緒に買いに行っても良いんじゃない?」
「コレが良いの。
可愛い彼女がコレが良いって言ってるのに、
智大は叶えてくれないの?」
智大を見上げながら言うと、
おでこにキスをひとつくれた。
正面から首を伸ばしながら留め金をとめると、
そっとハートのチャームに触れてきた。
「うん、似合う」
囁くように言うと、唇が徐々に近付いてきた。
智大の熱い吐息を感じ、何度目かの甘いキスの予想をして静かに目を閉じる。
「ふふ」
キスされる筈のタイミングで聞こえた智大の小さな笑い声。
「え…?」
薄っすら目を開けると、まつ毛が触れそうな程の距離の智大が囁く。
「可愛い」
「もう!ともっ」
「今日の夜、楽しみだな」
私の文句も消し去るように、熱いキスに唇が塞がれた。
そしてハートのチャームに触れ、
服の上から腕の赤い痣の場所に口づける。
「あーもう、チェーだなーもー」
智大は頭を掻きながら悔しそうに大きな声を出して、
「みのり!待ってろよ!」
私をビシっと指差しながら告げると、
バタバタと玄関に向かった。
「ダッシュで帰ってくるから」
もどかし気に靴を履く智大を見送る。
「うん、待ってる」
手のひらと手のひらを合わせて、
触れるだけのキスを交わす。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます。
あぁ、みのりの靴、冷蔵庫に隠してたんだった。戻しといてぇ」
カギを開けながら、サラリと言われ足元を見れば、
確かに私のパンプスが無い。
「ちゃんと袋に入れてから入れたから。ンハハ」
「え?冷蔵庫?えぇ?」
智大は、驚く私にクシャっとした笑顔を残して出掛けて行った。
「んもぅ…。ふふふ」
こうして私の幸せな朝は始まった。
おしまい
******************
終わったーー
大した山も谷も無く。。。
起承転結で言うところの、転結はなし崩し的な?な?
そして加奈子ちゃん、漢字も合ってたか確かめる事もしないくらい、
彼女は今何処。。。
でも、楽しく書けましたー
だから、コレで良しにしちゃう
触れる唇、指先、名前を囁く吐息さえもが愛おしく感じる。
「好き。ずっと好きだったの」
智大が優しい眼差しで受け止めてくれる。
お互いの気持ちを確かめるように、
2人の唇は少しずつ深く重なっていく。
甘くて溶けてしまいそうな口づけ。
智大のキスは私をワガママにしていく。
もっと、智大を感じたい。
もっと、もっと。
「智大」
「はいタイムアップー」
重なった2人の声のトーンは、かなり違った。
「え…?」
「オレもう店に行く準備しないとなんない」
壁に掛けてある時計を顎でクイっと指した。
間もなく9時になるところ。
今日は土曜日。
私は休みでも智大のお店はお休みではない。
行き場を無くした私のワガママには触れずに、私の頭をクシャっとすると、
シャワーを浴びに行ってしまった。
その智大を見送りながら、乱れた髪の毛を直す。
さっきまでの甘いキスの時間に酔っていたのは私だけだったの?
放心状態でシャワーの音を聞いてると、
段々と恥ずかしさが込み上げてくる。
「はぁぁ…パンツ穿こう…」
よろよろと立ち上がってパンツを探す。
「あれ?また無いの?」
辺りを見渡しても、毛布を持ち上げてもパンツは出てこない。
「もう!パンツ穿きたいだけなのに何なのよ~」
「あー、オレ持ってってた」
バスタオルで頭を拭きながら、
智大がパンツを投げて寄越した。
「何で持ってくのよ⁉︎」
「つい癖で。ンハハハ」
楽しそうに笑う智大のお腹にパンチをしてやろうと思ったのに、
フワリと抱き寄せられて未遂に終わる。
ホカホカの智大の身体から、ボディーソープの香りがした。
「みのりも入ったら?」
「んー、でも着替えも何も準備無いしなぁ」
「そのままだよ、全部」
そう言うと、智大はスルリと身体を離してクローゼットを開けた。
クローゼットの中も2年前のまま。
左側の私用の白いケースも同じ所にあった。
泊まりに来る機会が増えた頃に、
智大が用意してくれたスペース。
蓋を開けると、部屋着も下着や化粧品も、そのまんまだった。
「化粧品はちょっと怖いから取り替えなきゃなぁ」
「いっそのこと、全部持ってきちゃう、とか?」
「全部?何の全部?」
「全部っつったら全部じゃん」
出掛ける準備のためにウロウロしている智大をとらえようと振り返ったとき、
私の箱の中に見慣れないモノが見えた気がした。
もう一度、目を元の位置に戻して確認をする。
「コレ…は?」
「あー…石けん?ふふ」
智大が私から取り上げた白い箱。
少し角が潰れている。
サイズは確かに石けんだけど、
もっと軽くて、シルバーのリボンがかけられていた。
「コレも取り替えた方が良いよ」
「見せて?だって私の箱に入ってたよ?」
智大はバツが悪そうに箱をカタカタさせた。
「んー…、まあ、見たくなるよねぇ、そりゃ…」
視線を上にしたり下にしたり、モゴモゴと話す智大の手から箱を受け取る。
大事にそっとリボンを解いて箱を開けると、
ネックレスが入っていた。
ハートから雫が溢れるようにダイヤが揺れている。
「智大がハートを選んでくれたの?」
「超恥ずかしかった。ふふ」
後ろからフワリと抱き寄せられ、頬と頬をくっ付けた。
「ホントはさ、指輪を買おうと思ったの。
でもサイズちゃんと分かんないし、みのりの指に入んなかったらカッコ悪いしなぁって思ってさ、コレを選んだの」
私の手からネックレスを取ると、ゆらゆらと目の前で揺らして小さく笑い出した。
「そしたら居なくなっちゃったからさ。
1回床に投げ付けちゃったんだよね、コレ」
「ゴメン…」
ハムっと耳を甘噛みされて、顎に手が添えられ、
フワッと優しさでいっぱいになるようなキスをされた。
「床に投げちゃったんだけどさ。
なんかねぇ、みのりもだけど、その内にコレも可愛く見えてきちゃったんだよね。ふふ。
だから何か捨てらんなくて、みのりの所に入れてたんだけど。
賞味期限もう切れてるよ。ンフフフ」
私は智大の腕の中で身体の向きを変え、
思いっきり抱き付いた。
智大も答えてくれるように、ピッタリと抱き締めてくれる。
「付けて?」
「コレ?違うの一緒に買いに行っても良いんじゃない?」
「コレが良いの。
可愛い彼女がコレが良いって言ってるのに、
智大は叶えてくれないの?」
智大を見上げながら言うと、
おでこにキスをひとつくれた。
正面から首を伸ばしながら留め金をとめると、
そっとハートのチャームに触れてきた。
「うん、似合う」
囁くように言うと、唇が徐々に近付いてきた。
智大の熱い吐息を感じ、何度目かの甘いキスの予想をして静かに目を閉じる。
「ふふ」
キスされる筈のタイミングで聞こえた智大の小さな笑い声。
「え…?」
薄っすら目を開けると、まつ毛が触れそうな程の距離の智大が囁く。
「可愛い」
「もう!ともっ」
「今日の夜、楽しみだな」
私の文句も消し去るように、熱いキスに唇が塞がれた。
そしてハートのチャームに触れ、
服の上から腕の赤い痣の場所に口づける。
「あーもう、チェーだなーもー」
智大は頭を掻きながら悔しそうに大きな声を出して、
「みのり!待ってろよ!」
私をビシっと指差しながら告げると、
バタバタと玄関に向かった。
「ダッシュで帰ってくるから」
もどかし気に靴を履く智大を見送る。
「うん、待ってる」
手のひらと手のひらを合わせて、
触れるだけのキスを交わす。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます。
あぁ、みのりの靴、冷蔵庫に隠してたんだった。戻しといてぇ」
カギを開けながら、サラリと言われ足元を見れば、
確かに私のパンプスが無い。
「ちゃんと袋に入れてから入れたから。ンハハ」
「え?冷蔵庫?えぇ?」
智大は、驚く私にクシャっとした笑顔を残して出掛けて行った。
「んもぅ…。ふふふ」
こうして私の幸せな朝は始まった。
おしまい
******************
終わったーー
大した山も谷も無く。。。
起承転結で言うところの、転結はなし崩し的な?な?
そして加奈子ちゃん、漢字も合ってたか確かめる事もしないくらい、
彼女は今何処。。。
でも、楽しく書けましたー
だから、コレで良しにしちゃう