Le Noire 官能。艶めいて。

官能小説。愛、欲望、そして男と女。
Amour et désir, et hommes et femmes.

【大人の映画レビュー】楽しそうなセックスの不倫愛in the bed

2023-11-12 | レビュー

『あるふたりの情事、28の部屋』
2012年 アメリカ映画
出演 クリス・メッシーナ マリン・アイルランド

 お互いにパートナーのいる二人がバーで出会って惹かれあい、仕事の出張先のホテルで逢瀬を重ねる。タイトルの「28の部屋」というのは二人が過ごしたホテルの部屋の数だ。

 いわゆる不倫もの。だから堂々とデートできないので、ほぼ彼ら二人しか出演しない逢瀬のシーンはほぼホテルの部屋の中だけ。

 お互いに求めあっているのだから、ジャケ写真のようにドロドロしたベッドシーンばかりだろうという私の予想は外れた。

 なんだか明るい。不倫なのに悲壮感がない。セックスもとても楽しそう。お互いのプライベートの話を普通にする。どちらかというと男の方がよく喋り、女性の方があまり自分について語りたがらない。それでもちゃんと会話が成立していて楽しそうだ。

 エンディング近くで彼女が妊娠していることがわかる。夫との子どもなのかそれとも彼とのなのか、流れから察するにどうも彼との子どもらしいが、ぜんぜん動揺していない彼女ははっきり言わない。産んで育てるつもりだと言う。

 エンディングは、解釈次第で、彼と一緒になるのかどうなのか、どちらにも受け取れる不思議な、余韻の残る終わり方をする。

 男優は好みじゃないので興味が湧かなかったが、女優さんは特別に美人でもセクシーでもないのにとても気になった。笑顔がいい。マリン・アイルランドの名前で検索したらいくつかの作品がヒット。私が知らなかっただけかもしれない。

 セックスシーンに期待して鑑賞するのはお勧めできないけれど、何も考えずに気楽に見ると、いろいろ小さな発見がある。

 誰かを好きになるって、純粋な気持ちなんだ。そう思った。


イタリア公園の夏

2023-11-12 | Amour

 汐留のイタリア公園に行ってみたいと言ったのはわたしの方だった。八月の、暑い日が続くある日のことだ。

 行きたかった理由は、イタリア公園という名前が洒落ていたのと、東京湾に面した浜離宮庭園横のその周辺には、それまで行ったことがなかったからである。

 ネットで調べたら、イタリアのとある都市から港区に寄贈されたとあった。あちらのデザイナーの手によるイタリア様式の整形庭園で、各所に置かれた石像や壺などもわざわざイタリアから運んできたとある。しかしそんな公園を作ることになった経緯はよくわからない。

 JR新橋でゆりかもめに乗り換えて一つめの汐留駅で降りる。首都高沿いに歩いたらすぐに公園に着いてしまうので、一旦、JRの線路をくぐり、西からぐるっと円を描くようなデートコースにしょうと、二人で何となく決めていた。

 途中にあるイタリア街をぶらぶら散策し、イタリア公園を散歩して浜離宮庭園に入り、水上バスに乗って浅草まで行くというプランだ。

 出会いと呼べるようなイベントもなく、何となく自然に、何となく彼と一緒に過ごす時間が、まるで柔らかな日差しのように優しくゆるやかに、わたしの日常に織り込まれた。

 お互いに頻繁に連絡することもなく、次にいつ会えるかなんて考える必要もなく、相手の気持ちを思い巡らせる必要もなく、だいたいつきあっているかどうかすら曖昧で、でもそんな曖昧な距離感を許せて、許してくれる人…。

 イタリア公園デートは最高に暑い日で最高に楽しかった。期待したイタリア公園は庭園以外は何もないところで、真夏に日陰のない公園を散歩する人などわたしたち以外は誰もいない。ただ、ブーケのような白い花を満開に咲かせたサルスベリが綺麗で強く印象に残った。

 初体験の水上バスでは、わたしはほぼデッキの上に立ち、帽子が飛ばないように手でしっかり押さえ、塩っぱい風に吹かれながら景色を眺めていた。彼は暑すぎると笑って冷房の効いた船内とデッキを行き来していた。

 その、最高に暑くて最高に楽しかったデートの翌日に、わたしが熱中症で寝込んだことを、蛇足であるが付け加えておく。

 


【大人の読書】苦痛の向こう側の快楽世界

2023-11-11 | レビュー

ペインクリニック/佐伯香也子著

 いわゆる普遍的な「官能小説」を期待すると裏切られる。

 この作品でのペインクリニックは、痛みを緩和してくれるのではなく、患者の求めに応じた痛みを与えてくれるのだ。

 育ちの良い大人しい大学生ヒロインは秘めた被虐願望があった。その願望を叶えてくれることを期待し、このペインクリニックへ、あらかじめ予約したうえで訪れる。

 Kindle unlimitedで無料だったので読んでみた。私の感想は…痛い。とにかく痛い。すごく痛い。

 可愛らしいヒロインは自らの希望により、施術ベッドへ丸裸で拘束され、二十本の針で恥ずかしい部分を刺し貫かれ、さらに鞭を振るわれて絶叫する。そんな描写が、官能小説に必須の喘ぎ声の表現に頼らない冷静な文章で綴られ、それがリアリティを感じさせてくれ、もしも自分がこんな目に遭ったら…などと妄想してしまう。

 ああ。痛い。

 でも…エロティックだ。

 この著者の作品は、どれも、SMというよりも拷問と表現したほうがよい扱いをヒロインが受ける。だからたとえば↓の作品の"甘美"という謳い文句に男性諸氏は騙されてはいけない。ひたすら"痛い"拷問が続く。

 

美人秘書監禁!甘美な拷問 

 女性に比べ男性は痛みに対する耐性が弱いらしいから、Mの男性でも、佐伯氏の作品のヒロインのような拷問プレイに、痛みを超えた向こう側の快感を見出せるだろうか。

 

 


AIイラストつれずれ

2023-11-11 | つれづれ

 小説を飾るイラストを描かせるために、AIイラストアプリを使っている。書いている作品の内容が内容だけに、色っぽい絵が欲しい。これがなかなか難しい。


 

 そのものずばりの裸体絵はむしろ使えない。欲しいのは「色っぽい絵」であって"丸裸"ではないからだ。

 AIに絵を描かせるには、こちらが欲しい絵柄をテキストで打ち込む。でも「色っぽい」とか「セクシー」などの抽象的な表現はAIは理解しないから、色っぽい絵になるように具体的に命じるのだけれど、人間ならわかってくれるはずのニュアンスがさっぱり通じないので、もどかしい思いを強いられることになる。

 しかしでも、色っぽいとか色気ってなんだろう…色っぽい(つもりの)小説を書いていても「色気」は奥が深い。


マッチングアプリは既婚者だらけ その1

2023-11-10 | つれづれ

 大学の頃からの友人と一緒にカレーランチをしたときのエピソード。

「璃世は甘口だったっけ?」
「うん。当然」
「せっかくインド料理なのに甘口ってさ。なんだかもったいないよね」
「だってエスニックは好きだけど辛いの苦手なんだもん。エミ(仮名)だって知ってるでしょ」
「でもここ美味しいのに。ねえ、ランチと別にとタンドリーチキン頼んでもいい?」
「好きにしていいよ。辛いのは苦手だけどお腹は減ってるから」

 飲み物はマンゴーラッシーをチョイス。友人も同じものをオーダーすした。

 その日は暑かったけれど、冷房の効いた店内は快適だった。お客の入りは八割ほどだろうか。

「璃世のそのワンピいいね」
「ありがとう」
「肩がちょっと見えてるのと鎖骨がエロカッコよくてたまらんって感じ」
「それはどうも」

 スケベなおっさんの感想かよと思いつつ、友人のファッションチェックははたして喜んでいいのか、そうでないのか?

「それでね。さっきの話の続きなんだけど、旦那のスマホをこっそり覗いたらさ」
「うんうん」
「見つけちゃったんだよね。マッチングアプリがあったんだよ」
「へえ。それはそれは」
「璃世ってやってたよね。マッチングアプリ」
「マッチングアプリって言うより…」

 ランチどきに大きな声で話すのにふさわしい内容じゃないのは確かだ。だから周囲に聞こえないような小声で続ける。

「…というより出会い系だよ。マッチングアプリなんて気取った言い方しても中身はまんまの出会い系だしさ」
「そうなの?」
「そうだよ」

 ご主人のスマホにマッチングアプリがインストールされていたのでこっそり活用してるのではと友人は疑っているらしい。

「まあ、でも、ちょっと遊びたくなったぐらいなら許容範囲かな」
「ちょっとってどれぐらい?」
「一緒にご飯食べに行くぐらい」
「それはどうかな。男ってさ。下半身には理性が無いって言うし、サイトは既婚者だらけだしさ。ご飯食べに行く程度の関係のために出会い系始めるとは思えないけど」
「うっ。そう…だよね。なんだか不安になってきた」

 脅すつもりはない。でも本当のことだから。

「それでどうなの」
「なにが」
「だからマッチングアプリだよ。璃世もお年頃じゃん」
「エミと同い年だけど」
「それでいい人見つかったの?」
「それは…」

 友人のご主人のスマホにあったという疑惑のマッチングアプリ。

 もしかして…もしかすると、友人の配偶者さんとマッチングアプリでニアミスしてたりして。