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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第2章-3 ヤヌスの鏡と3人の魔王

2018-02-26 05:02:17 | 私が作家・芸術家・芸人

 バキーン!
 巨大な骨が割れたような、銃弾でも発射したような音がしてヤヌスの鏡に禍々しい魔界の扉が映し出された。その文様は、まるで双頭の蛇がとぐろを巻いたようにも、三首の龍がのたうち回るようにも見える。
 中心には、髑髏顔の魔人たちのうごめく姿が映し出されている。
         
     

 怨み、ねたみ、そねみ、憤怒、自惚れ、嫉妬、誰にでもある感情の数々。
 そうした暗い感情は、見るものを虜にする妖しい魅力も持っていた。
 暗い感情は自らにぶつけられれば最悪だが、いったんその闇に取り込まれてしまえば甘美で無限の暗い力を与えた。
 心の闇にとらわれその闇に落ちた、かつては人間だったものたちがうごめく空間。他者に災いを為し、光が進むことを嫌うものたちの住む空間。
 かつての大魔王サタンが支配していた時代の「力がすべて」は終わりを告げ、今や魔界は支配者の地位を狙うものたちの権謀術数うずまく世界となっていた。

 魔界の支配者たちが鏡に映し出された扉の向こうに現れた。
(ユピテルよ。何千年振りか、顔を合わせるのは?)「支配を望むもの」名なき魔王が地底から伝わってくる思念を発する。誰も信用できぬ魔界では、呪いをかけられぬために高位になればなるほど真の名を隠す。漆黒のマントに顔が隠れてその表情はうかがい知れない。
(名なき魔王よ。今、我らが顔を会わすまで六千六百六十六の時が経っておる。)ユピテルは魔界の指導者と対峙しても動揺を示すことはない。
(再び顔を合わせる日が来ようとは、夢にも思わなんだわ)
(今回の事態。神界と魔界の意思疎通無しには、いかなることが起こるか誰にも見通せぬ。いや、いかなることが起こっているかも見えぬと呼ぶべきか?)

(・・・・・・)名なき魔王の側近「怒るもの」声なき魔王は、思念を発することが出来ない。声なき魔王は、天界との闘いでコミュニケーションを取るためのすべての術を失った。
 すべての生きとし生けるものに対する憎しみが、フツフツと伝わって来る。
 声なき魔王のおそろしさは、見当違いの怒りを溜め込んで一気に爆発させるところであった。まるで歩く火薬庫どころか、歩く核弾頭のような存在。
(非常事態に至った責任を、プルートゥ、どう落とし前をつける?)
 もう1人の側近「かくすもの」姿なき魔王の思念が冥主に向けられた。聞くものの精神を逆なでするような思念であり、思念を受けること自体が相手の気力を萎えさせる。
 姿なき魔王が、ここで「責任」という言葉を使ったのには説明がいる。マクミラたちが魔女たちと闘った時、冥界の軍師アストロラーベは「時空変容ミラージュの儀式」を執り行った。
 秘技は、闘いに666の時を与えたが一つ誤算があった。


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